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内山からの招待状のイラストは1週間程で届いた。
ピンクのはがきで上の方にエンゼルの羽が描いてあった。
それを見た桜子は、
「素敵。やっぱり山内さんの絵は優しいわね。」
と喜んだ。
「桜子、お母さんは呼ばなくてもいいののか?」
その質問に桜子の答えは冷たかった。
「父さんが亡くなった時の態度を雄二さんも見たしょ?
あの人に結婚の祝いなんてして欲しくにわ。」
確かにあの時の桜子の母の態度は元夫とはいえ冷たいものだった。
桜子がそう思ってもしょうがないかもしれない。
だからこそ、雄二も以上は以上その話題に触れなかった。
結局、招待するのは北村、大森、村木、梓、それと雄二の両親だけだった。
その人数で店はいっぱいになってしまう。
招待客に内山に描いてもらったイラストを印刷所に持っていき
大森、、村木、北村には直接渡した時は祝福の言葉をもらった。
梓には店が終わってから梓の店に持っていった。
「喜んで行かせてもらうわ。うちの旦那なんて家でゴロゴロしてるだけなんだから。」
「梓さん、結婚されてたんですか?」
「もう10年になるけどね。ほら私、こんな商売してるでしょ?だから誰にも言ってなかったの。」
「知りませんでした。」
梓が主婦とは言えないが、結婚しているとは桜子は想像もしていなかった。
結婚報告の日、店は臨時休業してささやかながら招待客に雄二を紹介した。
美由紀は報告会の1時間前に来て桜子達の為に料理を振る舞った。
「叔母様、ありがとうございます。招待しときながら料理を作って下さって。」
「いいのよ。今日は桜子にとって再出発の日なんだから。堺君、桜子をよろしくね。」
「はい、絶対に桜子を幸せにします。」
少し緊張した面持ちで雄二は宣言した。
招待客がそろってみんなで桜子達を祝福していた時、店の鈴が乱暴に鳴った。
入って生きたのは康之だった。それもかなり酒が入ってる。
「お~。俺の元妻よ。再婚出来て良かったな。俺を差し置いて。」
その康之に意義を唱えたのは美由紀だった。
「あなたは招待されてないでしょ。それもそんなに酔っぱらって。帰って頂戴。」
「俺は桜子と雄二を祝福しに来てやったんだぜ。そんな事言うなよ。」
「とにかく帰って。せっかくの場がしらけてしまうわ。」
そんな言葉を言われても康之は帰ろうとしなかった。それどころか、雄二の肩に手をやって
「桜子を幸せにしてやれよ。俺みたいになるな。」
と絡んできた。
その風景を見て招待された人々は呆れてしまっていた。