The Movie 87話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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次の日から聡を探すのに奔走した。

もちろん部長も会社を休む事を許してくれて、部長が知ってる限りの中南東の

会社とかに聡の消息を探すのを手伝ってくれた。

何にも手がかりがないまま、傷心してうちに帰ると

ポストに2通の手紙が入っていた。

1通は聡と二人で取った記念写真の写真館からで

私達が笑顔で笑っている写真が同封されていた。

それを見ると涙がこぼれてきた。

この写真を撮った時から聡はシラクに行く事を決めてたんだ…。

もう1通は聡からだった。

消印は日本になっていた。きっと空港から出したんだろう。

『美加へ

黙ってシラクに行く事を決めてごめん

また前の様にイランに行った事を繰り返してしまったけど

やっぱりシラクの状況を見ているといても経ってもいられなかったんだ

でも今回は1年じゃなくて1ヶ月だからすぐ帰ってくるよ

俺には美加っていう大事な人がいるから

大丈夫。前線じゃなくて後方支援だから無事に帰ってくるよ

帰ってきたら美加のリゾットが食べたいな

二人でまた関根さんの店に行こう

その日まで待っててくれ

聡』

私はその手紙を読み終わると座り込んでしまった。

そして手紙を握りしめると号泣してしまった。

どうして…。どうしてまた私を置いて行っちゃたの。

一通り泣き終わると私は私もシラクに聡を探しに行く事を決めた。

大口さんにまず電話をしてどうやったらシラクに行けるかを聞いた。

「今、帰ってきたら聡から手紙が来てました。

今度は前みたいに1年じゃなくて1ヶ月で帰ってくるって書いてありましたけど

私もシラクに聡を探しに行きます。どうやったらシラクに行けますか?」

大口さんは電話越しでも沈痛な顔をしてるのがなんとなくわかった。

「美加さん。落ち着いて聞いて下さい。

シラクに女性一人で行くのは危険です。

男性が行くのでさえ行くのは今は危険なところなんですから。

女性の場合、下手したら乱暴されたうえに殺される事もあるんですから。

だから聡が無事に帰ってくるのを日本で待ってる事をお勧めします。」

ニュースでは毎日の様にシラクのテロの事が流れているけど

そんなに危険なところとは思ってもいなかった。

私の考えが甘かったんだ。

私が黙り込んでしまうと、大口さんが思いもよらなかったことを提案してくれた。

「シラクには入る事は反対ですが近くの空港まででしたら

僕も一緒に行きます。やっぱりシラク周辺の空港でも女性一人は危険ですからね。

明日、事務局に行って打ち合わせをしましょう。」

「でも…。」

私が行くのは危険を覚悟だったけど、大口さんまで危険にさらすのは躊躇した。

「大丈夫です。現地でのガイドも知ってますし、ガイドがいた方が安全です。」

「…。考えさせて下さい。」

聡を探す為に色んな人が助けてくれる。

それは海外派遣隊の仕事を少ししか知らない私にとって助かるけど

その事によって誰かが被害に合うのはためらってしまう。

私はどうしたらいいんだろう。