The Movie 83話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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だけど私達の心配をよそに、すみれちゃんは翌朝目を覚まし、

最初の言葉が、

「お腹すいた。お父さんのシーフードサラダかパエリアが食べたい。」

それを聞いた関根さんは呆然とし、お母さんは豪快に笑ったらしい。

何回かお見舞いに行ったけど、行く度に大歓迎される。

よっぽど病院の生活がつまらないのだるう。

「明日ね、退院するのは。」

「先生に何回も言ってようやく許可が出たの。ホントだったらあと一週間はいないとダメらしいけど。」

昨日の晩に私が作ったクッキーを頬張りながら面白くもなさそうに言っていた。

高校生だからやりたい事がいっぱいあるんだろうな。

私とすみれちゃんとでトランプをしてるとこへ、

今日私が持ってきた薔薇を花瓶に入れてきた奥さんがやってきた。

「まったく、主人が心配し過ぎなんですよ。

一人っ子だからどうしても甘やかしてしまうんだけど。」

確かにさっきからクッキーを食べては腹筋運動なんてしてる。

これなら大丈夫かな?

「今日はご主人は?」

「なんだか書類を書いてましたけど…。今日は遅くなるから先に寝てろなんて言われました。」

花瓶に入れた薔薇の位置が気にいらなかったみたいで、花瓶の花を出しては

アレンジをしていた奥さんが聡の事を聞いて来た。

でもなぁ…。確かに最近残業が多いな。

「そう。まぁ仕事があるって事はある意味幸せな事かもしれないわね。

仕事をしたくて出来ない人は何万もいるんだから。」

「そうですね。特に私は派遣会社から今の会社で働いてますけど

いつ切られるかわかりませんから。」

そう言うと三つの輪っかで出来たみたいに目をびっくりマークにして

口も大きくあけた。

「何いってるの、美加ちゃんレベルだったらすぐにでも就職出来るでしょ?

今の条件で派遣先に行くのはそれなりの意味もあるし、

美加ちゃんが色んな国を言葉が話せるのは美加ちゃんの努力だもの。」

「そうですか?そう言ってもらえると頑張り甲斐があります。

会社では私の時給が高いのを冷たい目で見る人もいますから。」

退院後何がしたいかとかすみれちゃんと奥さんと話してると、

インターフォンで、

「本日の面会時間は終了しました。お見舞いに来ていらっしゃるご家族の方などは

すみやかにお帰り下さい。」

私は腕時計を見るとも8時を過ぎていた。

「もうこんな時間?聡に夕飯作らないと。」

奥さんが出してくれた脚立式椅子から立ち上がると、

「とにかく退院の日が決まって良かったね。うちに帰ったらお父さんにいっぱいリクエストしたら?

今からリクエスト帳を書いているといいかもしれないよ。」

「美加ちゃん、ナイスアイディア。でもそれをすればするほど、ここの食事がマズく感じそう。」

私はすみれちゃんの頭を抱撫でると

「今日で終わりよ。じゃ、私帰りますね。」

「また来てね。」

その言葉に私も奥さんも拭き出してしまった。

だって退院が明日って決まってるんだから午前中にこ病院を出てるはずだから。

「何よ~、何か私変な事言った?」

「すみれちゃん明日退院でしょ?私が仕事を終わらせてから来ても、

もうすみれちゃんはいないもの。」

すみれちゃんは枕を抱えてベットに座りこみながら、

「あ、そっか。」

「今度はお父さんのお店で会おうね。」

奥さんとすみれちゃんにお辞儀をして病院から出て行った。

帰りはスーパーに寄って夕食に聡が好きなパエリアを作る為の材料を買いに行った。

今日接待って言ってたからあんまり重くない料理がいいだろう。

コンソメの顆粒をいつもより少なくして超弱火で蓋をして出来上がるのを待った。

パエリアを私用、聡用にわけて聡のは少し冷ましてラップをしてから冷蔵庫に入れといた。

そして部屋に置いてある家電の横に置いてあるメモに、

『接待ご苦労さま 夕飯は冷蔵庫に入ってます。5~8分レンジにかければ美味しくなります

美加』

お風呂に入る為にお湯を入れて、タイマーセットしてから私は自分の使ったお皿とかを

洗った。ホントだったらタイマーセットなんてしなくてもお風呂場からお湯がたまった事を

教えてくれるんだけど。大家さん、こんなに立派にリフォームしてくれて大変だっただろうな。

私がセットしたタイマーとお風呂にお湯がたまった事を知らせる案内のコールが

ほぼ同時になって私は結婚してから伸ばし始めたた髪を頭の上でまとめると

お風呂に入った。

…。何時になるんだろうな。聡が帰ってくるのって。

その時、玄関を開ける音がした。

(あれ?今日は接待で遅くなるんじゃなかったっけ?)

私は急いでお風呂から上がり、パジャマ替わりのTシャツと短パンになり

最初は明日する洗濯する洗濯籠の中にタオルとか入れてリビングに向かった。

「お帰りなさい。今日は遅くなるって言ってなかった?」

「それがぁ聞いてくれよ。」

…。珍しい。聡がムッとした顔をしている。

私は化粧水とかを顔に塗りながら、

「どうしたの?契約がうまくできなかった?」

聡はネクタイを外しながら、

「それならまだいいよ。ドタキャンされたんだぜ。」

「ドタキャン?!」

私はおもわず振り向いてしまった。

「1時間してもこないから部長が相手先に電話をしたら、今日が会食って事すら忘れたそうなんだ。」

あ~あ…。これであの会社とのやり取りも難しくなってくるな。

部長ってその辺厳しいとこがあるし。今回の事は私だって「何それ?」って怒りそう

「今日、パエリアを作ったの。寒くなってきたからいいでしょ?」

「魚嫌いの俺でも食えるんだからなぁ。やっぱり美加の料理は抜群だよ。」

「今のうちかもしれないわよ。私って気が短いかつキツイから聡がうんざりするかもしれない。」

普段着に着替えてきた聡は笑いながら、

「そんな事ないって。」