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次の水曜、聡は平日に休める事にしたから、ちょっといつもより遅寝をしてしまった。
しっかしあの睡眠薬、よく効くなぁ。
「病院5時半だろ?たまには恋人っていうか夫婦らしい事をしようよ。」
「するのは構わないでど、何をするの?」
聡はバックの中から映画びチケットを取り出して私に見せてくれた、
「こうやって童心に帰るのもいいかもしれないよ。何より関根さんに会える。
それに昼からのビールは格別だ。」
「菱田先生と会う時酔っぱらないでね。」
「わかってるって。」
…。ホント大丈夫かな。
関根さんの店に行ったんだど、関根さんはいなかった。
働き者過ぎるんじゃないかと思う関根さんがいないのは何だか嫌な予感がして、
「ねぇ、他のスタッフに聞いてみようよ。関根さんがいない理由。」
「単なる休憩じゃないか?」
「でもこの忙しい時間帯に関根さんがいないってありうる?」
ここまで説明して聡は店内を見渡した。
「そう言えば席がほぼ満席なのに関根さん、いないな。」
私はもう一度、
「やっぱりスタッフに聞いてみない?」
「そうだな。だけどここのスタッフが俺達の事を覚えていてくれて簡単に教えてくれるかが問題だぞ。」
そうだよね。店主のプライベートな事なんて簡単には教えないだろうな。
ここに来たらほとんど関根さんと話してたからここのスタッフの名前まで覚えてない。
ダメ元で私の席を通りすがろうとした若いスタッフに聞いてみた。
「すみません。私、尾山といいますけど、今日は店長お休みなんですか?」
その子は多分高校生か大学生だろうな。言うべきか悩んで、
「少々お待ちください。副店長に聞いてきます。」
あの子オーダーも聞かないで店の奥に行ってしまった。
10分は待ったけどせめて飲み物が欲しかったから女の子のスタッフに注文を頼んだ。
私はもちろんアイスカフェモカ。聡はやっぱりビールとチーズの盛り合わせを注文した。
飲み物が来る前に副店長が来て、
「尾山さん方の事は店長から良くお話を伺ってます。」
席が1つだけ空いてたから私は聡の隣の席に移動して、彼を座ってもらうと気になっていた事を聞いた。
「今日、関根さんお休みみたいだけど、どうかしたんですか?」
副店長も言うべきか悩んだらしくしばらくお互い黙ったままだけど
私は服店長の言葉を辛抱強く待った。
待ってる間に私のカフェモカと聡のビールが運ばれてきた。
私は服店長の為にコーヒーを追加オーダーしたけど、スタッフと私の声も聞こえてなかったみたい。
「ごめんなさい。私、あなたの名前しらないの。私の隣に座ってるのが主人の尾山 聡。
私は美加。あなたは?」
今度ははっきりと私達の目を見て、
「飯島 一成って言います。」
「今日、関根さん来てないみたいだけど、どうしたんですか?」
私はさっき飯島さんに言った事を繰り返し聞いてみた。
「本来でしたら店長のプライベートな事なんで、お客様にお話しするべきじゃないんですが…。
尾山さんご夫婦には結婚披露パーティーをここでして下さったのでお二人の事は覚えてます。
だからお教えする訳じゃないですけど、店長がお二人の話をする時いつも以上の笑顔なんです。
昨日の番、店長の娘さんが救急車で運ばれたそうなんです。
僕も簡単な事しか知りません。すみません。ご心配をおかけしてしまって。」
「今、娘さんは?」
私はストールをグッと握ると今の娘さんの事を聞いた。飯島さんも知らないって言ってるのに。
「今朝受けた電話ではICUに入ってるらしんですが…。店長、仕込みも最初から自分でやって
帰りは12時過ぎになるのに、寝ないですみれちゃんに寄り添ってるそうです。
すみれちゃんも心配ですけど店長の体調も心配です。」
関根さんはいっつも私達に優しくしてくれる。今がその恩返しをする時かもしれない。
「お嬢さんが入院しているのはどこの病院ですか?」
飯島さんは絞り出す様な声で、
「上野病院です。」
それだけ言って黙ってしまった。
彼がそこまですみれちゃんの事を心配してるのなら付き合ってるのかもしれない。
これは私が深読みしただけかもしれないけど