The Movie 45話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

「The Movie」を最初から読まれる方はこちらから


その日は私は聡のマンションに泊まった。


一緒のベットにくっつくように寝て朝になるまでいろんな話をした。


イラクであった事。


私が聡を探し続けた事。


そして将来の事。


その話はとても楽しく、かけがえのない時間だった。


同じ服でまた出社するとバカ社員に何か言われるから始発で自宅に戻り


シャワーをして着替えてから出社した。


私が先に出社して仕事をしてるとギリギリセーフで出勤してきた秀美ちゃんが寄ってきた。


「み~か先輩。何かいい事でもあったんですか?」


「なんで?」


秀美ちゃんは私の顔を突くと、


「なんだかニヤついてる。」


私は自分の頬に手をやると、


「そっ、そう?」


「否定しないって事は係長と何かあったんですか?」


「べっつに~。」


多分、私の顔は赤くなってたと思う。


聡に書類を持っていく時なんて菜々はニヤニヤ笑ってるし。


やっぱりバレてるのかなぁ。


私って嘘つくのが下手だから。


ちょっとした仕草でわかっちゃうのかもしれない。


聡もやたらと嬉しそうに仕事してるし。聡もちょっとは気を使って欲しい。


付き合い始めたのはいい事だけど、バカ社員に何言われるかわかんないんだから。


私がパソコンに向き合っていると笹原さんが面白くもなさそうな顔をして


データが入っているメモリカードを持ってきた。


「近藤さんさ、係長となんかあったの?」


「別に何もないですよ。」


「な~んだか昨日と雰囲気が違うんだけど。」


(鬱陶しいな)


「気のせいじゃないですか?」


「ふ~ん。」


納得しない表情で笹原さんは自分のデスクに戻っていった。


しばらく仕事を続けていたけどまた笹原さんが私のデスクに来た。


(今度は何よ)


手には映画のチケットがある。


「近藤さんって映画好きだったよね。試写会のチケットもらったんだ。行かない?」


「それ、観ましたから。」


(本当は観てないけど。公開前だから)


「面白い映画って何回も観たくない?」


「私は1回で十分です。」


「でもさ~…。」


まだ話しかけてる笹原さんにさっき渡されたデータのメモリーカードを、


「データ処理終わりました。」


無表情でそのメモリーカードを返した。


それでようやく笹原さんは引き下がってくれた。


あ~ゆ~粘着質な人って苦手。これからも何か言われるのかなぁ。


この際、聡と付き合ってるの笹原さんにだけには言っといた方がいいかな。


でもそうしたら絶対、部署全体に聡と私が付き合ってるのが広がるだろうしな。


笹原さん、口軽そうだし。こう言っちゃ悪いけど。


だってこないだ1回だけ一緒に映画を観て、食事をしたのを皆に嬉しそうに話してたもんな。


…。やめとこ。