幼馴染み 第2章 92話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

「幼馴染み」を最初から読まれる方はこちらから


「幼馴染み 第2章」を最初から読まれる方はこちらから


京都旅行の日程はあっさりと決まった。


その前の守は徹夜の日が続いたけど。大学に泊まり込む事もあった。


その度に宮川さんとの事が気になったけど守は大学に泊まる時は必ず夜には電話をくれてたし


朝も一回はうちに帰ってきてた。まぁ徹夜だったからただ寝に帰ってきただけかもしれないけど。


京都に行く日は紅葉が綺麗な秋も深まった時だった。


だからちょっと旅費が高くなっていたけど、


今回が最後だしこれに行かなかったらきっと後悔すると思ったから


なんとか旅費をねん出した。


「琴音、楽しみだな。久しぶりに正也にも会える。」


「うん。守も頑張ったね、レポート。」


「今度の京都はどこに行きたいんだ?」


「んっとねぇ…。祇王寺と二尊院と皆も知ってる天竜寺と…。」


「ストップ!分かった。聞いた俺がバカだった。今回は琴音が行きたいとこでいいよ。」


「ホント?」


「今回は琴音にとことん付き合うよ。その代り、正也と飲むときは最後まで付き合えよ。」


「うん。」


京都へ行く。それだけであのモヤモヤした気持ちはどこかへ飛んで行きそうだった。



京都行の新幹線に乗る時、いわゆる駅弁をたくさん買った。


皆で少しづつ食べて新幹線の中は楽しかった。


特に真吾はカメラマンの学校を出ているからたくさん写真を撮った。


きっと真吾が撮った写真は綺麗なはずだ。


京都駅には正也が待っていてくれた。きっとこれが最後の旅行ってわかってたから


来てくれたんだろうな。


「久しぶり。」


「おう。」


私達はそんなに言葉を交わさなくてもなんとなく意思が通じ合っていたと思う。


「取りあえずホテルだろ?どこにしたんだ?」


「八坂神社の近くの長楽館。」


「よくこの時期にあのホテルが取れたな。」


「偶然キャンセルが出たの。いいホテルに決まって良かった。


昔は女性専用のホテルだったんだけど、今は改築されて男性も泊まれるの。」


私達は歩きながらそんな話をして改札口まで行った。


「荷物も多くないからバスで行こうよ。」


バスで八坂神社前まで行って歩いて長楽館へ向かった。


長楽館は歴史があるホテルだけど作られた当時にしては珍しく洋館の様なたたずまいをしていた。


「ここって紅茶も美味しんだよ。」


「そうなの?じゃぁ後でラウンジに行こうよ。」


「女子チームはいっつも紅茶の話をしてるな。」


「私は大原さんに勧められて好きになったんだもん。大原さんは私の紅茶の先生だよ。」


「そんな事ないよ。三浦さんだって詳しくなったじゃない。」


「これも大原さんに教えてもらったおかげです。」


「いえいえ。」


私達はふざけてお辞儀をした。


「で?最初はどこに行く?」


「祇園寺。祇園寺は平 清盛の愛人だった祇王と妹の祇女が晩年過ごした所なの。


平 清盛が仏御前の方に心変わりしちゃったんだけど、結局仏御前も17歳の若さで


仏門に入ってここで過ごしたんだよ。」


「なんだか悲しい所ね。」


私は祇園寺に向かいながら説明した。これじゃぁ本当にガイドだ。


「だから女性の味方になる様なお寺でもあるの。紅葉が綺麗でね。高校生の時来た時は


散りかけてたけど綺麗だった。今年は紅葉が綺麗ね。いい時期に来れて良かった。」


「前に来た時も言ったけど琴音は京都限定のガイドになれるよ。」


「それって褒めてるの?けなしてるの?京都『限定』って。」


「そのままの言葉だよ。お前も京都の大学に来ればよかったのに。」


「そんな事したら講義どころじゃなくなっちゃう。色んなとこ見たいから。」


祇園寺に始まり、最後はさすがに男子チームがつまんなそうにしてたから錦市場に行った。


そしてその晩は『棲家』の2号店に行った。最近人気の居酒屋で正也がロフトの個室を予約しててくれた。


『紅茶梅酒』って言う紅茶で作った梅酒もあって実は私も目をつけてたとこなんだよね。


男子チームは京都の日本酒、ひやおろしを飲んでた。


お酒がかなり進んで真吾がカメラを片手に、


「俺はピューリッツァ賞を取るぞ!」


なんて言っていた。ピューリッツァ賞って確か教科書に載ってた沢田 教一さんの『安全への逃避』が


有名だよね。そう簡単に取れないと思うけど…。でも夢を持つのはいい事だと思う。、


私の夢は守と家庭を築く事かもしれない。


高校生の時に行ってた灯台跡で誕生日の日に見た夢。


あの時は子供は2人位で私は歴史学者、守はお医者さんだったけど


今は私は山田先生みたいな先生になれたらいいな。


閉店時間まで飲んでタクシーで長楽館に戻った。


前の教訓もあるからウコンのドリンクを6本買っておいた。


守に3本、真吾に3本。これで足りるといいんだけど。


そして守と私が同じ部屋。真吾と三浦さんが同じ部屋になった。


部屋に入る時三浦さんと、


「明日の朝は紅茶飲もうね」って約束して。


その前にそれぞれの彼氏を起こさなきゃ。今日は前よりずっと多く飲んだから


前みたいにあっさりと起きるとは思えなかった。


…。前も起こすの大変だったけど。