貴美子さんが言ってた友達用って言うのは正也ん家に行った時に私が飲む分。
今日はオーナーがいたから、オーナーに
「これ、私の紅茶です。いつもの場所に置いといてもらえますか?」
って50gの紅茶を渡した。
オーナーはそれを受け取ると笑うながら
「こういう所は琴音は女の子らしいね。」
って言った。たかが紅茶でイコール女の子ってなんでつながるのかな。
「だって紅茶ですよ。そこで女の子らしいってなるんですか?」
「男性でも紅茶が好きな人はいるけど、琴音ちゃんの紅茶の知識は日本史と同じくらい半端ないからね。」
「はぁ。」
「もう正也達帰ってきてるよ。上に上がったら?」
「これ、初めて飲む紅茶なんです。だから自分で作ってもいいですか?」
「構わないよ。」
美味しい紅茶を入れるにはお湯の温度、蒸してる時間とかが重要になってくる。
オーナーのうちに置いてある私用の紅茶のポットで慎重に紅茶を入れた。
貴美子さんが言う通り香りが良くてグラム900円とは思えなかった。
これも私の紅茶リストに入れとこう。
守は私が紅茶を入れてるのをリビングに座って顎をテーブルに乗っけて見てた。
「やっぱり日本史の仕事もいいかもしれないけど、紅茶の仕事も考えてみたら?」
「私の入れ方なんて素人だもん。紅茶コーディネーターになるにはまだまだだよ。」
「紅茶のコーディネーターなんてあるんだ。」
「うん。その紅茶に合ったお菓子の勉強もしなきゃいけないし。」
「へぇ。」
タイマーが紅茶を蒸してる時間を知らせて、私はティカップに紅茶を入れた。
「じゃ、行こうか。」
守はオーナーが出してくれたアイスコーヒーを、私は自分で入れた紅茶を持って
正也の部屋に行った。一応、礼儀としてノックはする。
「早かったな。」
真吾が参考書を読みながら私達に言った。
「せっかく俺達が気を使って二人にしてやったんだから、デートでもしてくれば良かったのに。」
「だって早くも後期テストがあるんだもん。勉強しなきゃ。」
どうやら転校先の学校はテストが他の学校より早いみたい。
その分空いた時間で自主勉強をしなきゃいけない。さすが進学校って言われるだけあるな。
「そうそう、紅茶のお店で意外な人に会ったの。」
「芸能人か?」
「それは違うけど、井上君に会ったの。」
「なんだ、あいつまだ琴音にストーカーしてるのか。」
真吾と話していても正也は黙ってる。
守と正也の話を聞いちゃったから、話しかけづらい。
「ううん、偶然。私がいつも紅茶の事を教えてくれてる店員さんの弟が井上君だったの。」
「へぇ、世間って広い様で狭いな。」
「あっさり帰っちゃったけどね。」
「守と付き合い始めたから諦めたんだろ。」
「でも、井上君。どこ経由で私と守が付き合い始めたの知ったんだろう。」
「桜だろ。共通点と言えば桜しかいない。」
「あぁそうかもね。」
「どうだった?琴音のお気に入りの店は?」
「思った以上に紅茶の種類があって驚いた。中には万単位のもあったんだぜ。」
「それを買う奴はよっぽどの紅茶が好きなんだろな。俺だったらそんな金出さない。」
「私も紅茶は好きだけどそれを買おうとは思わないな。飲んではみたいけど。」
私と守、真吾が話していても正也は一言も口をきかなかった。
…。このまんまじゃ嫌な雰囲気になっちゃうよ。
私が正也を選べばよかったの?でも私は自分の気持ちに嘘はつきたくなかった。