うちに入るとお母さんと妙子さんがキッチンで夕食を作っていた。
お母さんは笑ってるけど、ホント大丈夫なのかなぁ。
妙子さんがいるから無理して笑ってるんじゃないかな。
「ただいま。」
「おかえり。」
「話、盛り上がってるね。」
さっき守と誰にも気づかれない様にキスしたのに、
「琴音、守と付き合うのはいいけどキスまで皆が見えるとこでするんじゃないわよ。」
妙子さんが笑って目撃した事を言った。
「見てたの?」
「ちょうど、キッチンの窓からね。」
私の顔は真っ赤になったと思う。耳まで熱くなったんだもん。
「まぁ琴音も守と付き合う様になってから女の子らしくなったけどね。」
「ホント?!」
「だって髪伸ばしてるんでしょ?」
「うん。でもねぇ…。真吾や正也は私の事女の子って思ってないみたい。」
「正也は違うと思うけど?」
「そう?いっつも本ばっかり読んでるよ。」
「照れてるだけよ。」
私にはそうは思えなかった。最近、ろくに口もきいてくれないし。
元々、口数が多いタイプじゃないけど今はさらに増してる様な気がする。
「ねぇ、今日の夕飯何?」
「かぼちゃの煮物と、アサリのお吸い物、あとは青椒肉絲。」
「色んな国の料理だね。楽しみ。」
お母さんは妙子さんの方を見て、
「私の方が主婦だから料理が上手じゃないといけないのに、
仕事をしてる妙子さんの方が料理が上手なのよ。見習わないとねぇ。」
「あのね、妙子さんが作るビーフシチューってすっごく美味しいんだよ。」
「そうなの?じゃぁ今度教えてもらおうかしら。」
「対したもんじゃないのよ。ただ、圧力なべに任せてるだけよ。ちょっとスパイスは入れるけど。」
「ね、今度妙子さんのお宅に伺って教えてもらえる?」
「いいわよ。琴音、着替えてきなさい。もうすぐご飯よ。」
「は~い。」
でも良かった。お母さん、元気なふりかもしれないけど少し明るくなってくれて。
…。妙子さんも一緒にご飯食べて行くのかな?
私一人だったらお母さんをどうなぐさめたらいいのかわかんないし。
普段着に着替えてリビングに行ったらもう夕飯の準備はしてあった。
お茶碗が3つあったから妙子さんも食べて行くんだ。
「妙子さん、今日はうちでご飯食べてくの?」
「食べたら帰るけどね。」
「よかった。」
三人でご飯を食べて食後に妙子さんが買ってきてくれてたケーキを食べてたら、
お父さんが帰ってきた。
お父さんは妙子さんを一瞥しただけで何も言わなく書斎に閉じこもっちゃった。
…。ご飯、あの女の人と食べてきたのかなぁ。