「皆、慌ただしく帰っちゃったわね。」
「三人共お父さんが苦手なのよ。」
「せっかく三人分の夕食も作ったのに…。」
「タッパに入れて保存しとけば?」
「そうね。」
皆が帰ったあと、本当にお父さんが早く帰ってきた。
しかもなんだか機嫌悪そう。まぁ愛想がいい人じゃないけど。
「お父さん、私今度の月曜から違う高校に通うの。」
スーツを脱ぎかけてるお父さんに濟々黌に通い始める事を言ったけど、関心がないみたい。
「そうか。」
「偏差値も高いから、大学も結構イケてる学校に行けると思うよ。」
「お前の人生だ。好きにすればいい。」
娘の進路とかに興味ないのかな。自分は浮気してるくせして。
「言っとくが、大学の費用は出さないからな。」
「じゃぁどうやって大学行けばいいのよ。」
「だから言っただろう。お前の人生だから好きにすればいいって。
大学の費用は自分でなんとかするんだな。」
…。大学行くの辞めようかな。だって大学の費用ってすっごい高いもん。
でも今の就職難の時に高卒で就職なんて出来るかなぁ。
「あなた、大学までは琴音の教育費は出してあげられないの?」
「金は水みたいにわいてこないんだよ。いちいち大学費用なんて出せない。」
「でも就職する時に高卒じゃ難しいと思うんですけど。」
「高卒でも就職してる人間はいる。あとは琴音の努力次第だ。」
お父さんの言葉にピンとくるものがあった。
「お父さん、もしかして付き合ってる人には食事代とかでお金使ってるんじゃないの?」
「お前には関係ない事だ。」
「関係あるよ。その人にどれだけお金を使ってるかは知らないけど、
私が大学に行けるか行けないかはそれにかかってるんだから。」
私がちょっと強気で言うとお父さんは黙っちゃった。
やっぱりこの事、守に相談しようかな。
出来れば同じ大学に行きたいし。
「とにかく私は大学には行きたい。その費用を出してくれるのは考えてくれない?」
「親のすねをかじってられるのは高校までだ。
だいたい、学校が始まったばかりなのに転校するなんて、いくらかかってると思ってるんだ。」
それを言われると痛い。でも私が大学に行くのと、この事は違うと思うけどな。
お母さんはため息をつくと、夕食をテーブルに並べ始めた。
こんなお父さんと一緒にご飯なんて食べたくないんだけどなぁ。
こういうのって仮面家族って言うのかな。
ヤダなぁ。こんな家族。