他にする事がなくなっちゃたから、私は下いる妙子さんの所に行こうとした。
けどリビングの中を見る小窓を覗くと、皆真剣な顔をしてる。
お母さんは泣いてるみたいだし。
リビングから微かに聞こえる妙子さんの声は、
「悟さんだってばかじゃないから今離婚を切り出しても応じないと思うわよ。
琴音の養育費を払わなくちゃいけなくなるんだから。」
その言葉だけを聞いてそっとその場から離れた。
「あれ?下に行ったんじゃなかったのか?」
「大人は大人で難しい話してるみたいだから。」
「ふ~ん。何だろな。」
「知らない。」
…。本当は知ってるけど。たぶんお父さんの事だろうな。
「守、私も守達の学校に行くかもしれないから教科書貸して。」
「いいよ。何の教科がいい?」
「取りあえず苦手な数学から。」
守はバックの中を見たけれど、
「わりぃ。学校に置いて来たみたい。」
「俺、持ってるぜ。」
真吾が数学の教科書を貸してくれた。
だけど数学の教科書にはペラペラ漫画を描いてあったり、変な落書きがしてあったり
数学は勉強してないんだなぁって思った。
「真吾の教科書落書きばっかりじゃん。」
「だってつまんねぇんだもん。」
ま、いっか。落書きの跡でどこまで進んでるのはわかるから。
私もバックから数学用のノートを取り出して、問題に取り組んだ。
進み具合はうちの学校と変わらないみたい。でもさっぱりわからない。
守の方を見て教えてもらおうかなって思ったけど、守も勉強してるみたいだし…。
しょうがない。自分でやるか。
一人で奮闘してると正也が私のノートを見て、間違ってるとこを指摘してくれた。
「琴音、そこ違う。二次関数はy=2(x-3)の2乗+4だったらy=2(x-2)の2乗+4じゃなくて2乗の5.。
同じ+4にしたら一致しない。」
正也に説明をしてもらったけど、私にはちんぷんかんぷん。
むしろ疑問が増えただけだった。
私達を見ていた守が、
「琴音。今の物理の勉強が終わったら教えてやるから待ってろよ。」
「そうする。」
数学や物理は答えが出るけど、日本史は本当の答えが出ない。
色んな人の説があるから。
なのにどうして、私は日本史の方が好きんだんだろう。