正也ん家に着くと早速、真吾は煙草を正也の机の下から取り出して吸い始めた。
何故持ち歩かないかというと、持ち物検査が突然行われるから。
でも…。匂いでわかる気がするんだけど。
真吾が一生懸命、消臭スプレーをしてる姿は想像できない。
「琴音から聞いてたより、案外そうでもない奴じゃないか。」
「でも、毎日だよ。」
「それはうっとうしいな。」
「守もそう思うでしょ?」
「でも、あっさり引き下がったって事は琴音にマジかもしれない。」
「冗談でしょ。」
「『マジ』って言えば、守の奴もう彼女出来たみたいだよ。」
相変わらず中国史の本を読んでる正也が本から目を離さずに私に告げた。
「それこそ『マジ』で?だよ。まぁ守は女子にモテるから。」
「別に彼女って訳じゃない。時々、図書室で一緒になるだけだ。」
「お前はそのつもりでも相手は違うじゃないか。」
「で?どんな子?」
「お前と違って物静か~な、いかにも病気持ってそうな子。」
真吾がその子の印象を面白くもなさそうに教えてくれた。
でも元気だからって病気を持ってない訳じゃないんだど。
私だって病気持ってるし。だからって今言ったら争ってるみたいだから言わない。
だけどいつかは言うだろうと思う。
「お前もあの井上って奴とくっついっちゃったら?」
「『くっつく』って磁石じゃないんだから。」
私は真吾の安易な考えに呆れた。
あっ。例のピアス井上君がいたから捨てるの忘れてた。
正也ん家の帰りにでも捨てよう。
「そう言えばこれ。先生に書いてもらったのと、私なりのデータ。」
私は山田先生に渡された紙を守に渡した。その途端に守の眉間に皺が寄った。
「こんなとこまで模試に出ないよ。」
「どれどれ?」
真吾もその紙を見ると、
「お前クラスだったら出るだろうけど、平均的に日本史を知ってる奴には出ない問題だな。」
「だって、あの千利休が実は再婚してたって気にならない?」
「ならない。」
一刀両断だ。私はこれを渡されて初めて知った。
最初の妻は宝心妙樹(ほうしんみょうじゅ)って人だったらしいけど、あんまり仲は良くなかったみたい。
でもそれで5人も子供作るかなぁ。
次が宗恩(そうおん)って女の人なんだけど、その人は男の子だけしかいない。
私は最初の奥さんの方が実は仲が良かった気がする。
「面白いのに…。」
その言葉を聞いて、守は笑った。
「俺達が日本史の事で不満を言うと琴音は必ず『面白いのに』って言うな。」
「だって本当に面白い事じゃない。」
「琴音の歴史フェチもいい加減にしとかないと、男が引くぞ。」
「いいもん。別に彼氏とかが今は欲しい訳じゃないし。」
「『今は』って事はいずれは欲しいんだ。」
「まぁ…。元男子高だからね。男子は一杯いるし。」
「お前学校に何しに行ってるんだよ。勉強か?彼氏探しか?」
正也が本を閉じで私の言った事に文句を言った。
そう言うのを重箱の隅をつつくって言うんだよ。