うちが見えてきた頃、ようやく守が口を開いた。
「今日の真吾が先に帰ったのホント気にしない方がいいよ。」
「うん。ありがと。ごめんね、昨日も送ってくれたのに。」
「いいよ。近所なんだし。じゃな。」
段々遠くなっていく守の後ろ姿を見ながら、今日の事を考えた。
いつまでも諦めてくれない井上君。
きっと私が将来の事なんて言っちゃったから、帰っちゃった真吾。
あのいたずら手紙の差出人。
私の机に入ってたって事はクラスメートの誰かだよね。
この事先生に相談した方がいいかな。
でも言いにくいな。あの手紙捨てちゃったし、私の口からあんな事言えないし。
…。あの手紙の事はしばらくほっとこう
「ただいま~。」
私が玄関を開けて家に入ろうとしたら、お父さんとお母さんが言い争ってる声が聞こえた。
「家庭の事はお前に任せるって言ってるだろう!」
「ですけど、琴音の病気の事はちゃんとあなたも先生からお話聞いて下さい。」
私はゆっくりをリビングに行くとまだ、言い争ってる。
リビングのドアにあるガラス張りの所から覗いていると、
かなりヒートアップしてるみたい。
…。私見なかった事にした方がいいかな?
そ~っと玄関に戻りわざとらしく大きく扉を閉めながら、大声で
「ただいま~。」
と、二人にわかる様にした。
そうしたらちょっと驚いたみたいだったけど、お母さんがエプロンのしないで、
「おっ、お帰りなさい。今日は早かったのね。」
「うん。」
私はわざとお父さんの靴を見て、
「お父さん、帰ってるんだ。早いのはお父さんの方が珍しいよ。」
「そうね。ごめんね。ご飯まだなの。ちょっと待ってて。」
守達には言っていないけど、うちももうそろそろ危ないんだよね。
お父さんもお母さんも、私にはバレない様にしてるみたいだけど、
こういう光景はたまに見てた。
うちも真吾ん家みたくなるのかな…。
お父さんは庭で煙草を吸ってた。基本うちの中は禁煙だから。
でもお正月とかお父さんの部下の人達が来たら、お母さんはしょうがなく許可する。
お母さんも考え事位したいだろうから、
「いいよ。私の分は私が作るから。二人とも食べちゃったんでしょ?」
洗い物をおくかごには二人分の食器があった。
「でも…。」
「いいの、いいの。私もたまに料理位しないと正也達にまたバカにされるから。」
そう言って私用のエプロンをして冷蔵庫の中を見た。
冷蔵庫から適当に食材を取り出して、一人分の食事を作った。
ご飯は炊飯器にあったから、それで済ませて、お味噌汁もあったし、
私が作ったのはちょっとした料理だけだった。
こうやってたまに料理をするのもいい気分転換になるかもしれない。