「転校するかって事はどうするんだよ。」
正也はようやく中国史の本を置くと参加する様になった。
「担任の先生が日本史の先生でね。授業がすっごく面白いの。私が知らない事沢山知ってそうだし。」
「そりゃそうだ。生きてる年数が違う。」
「それもそうだけど。妙子さんが言ってたんだけど、もしかしたら恩師になるかもしれない人なんだって。
恩師ってなかなか巡り合えないでしょ?もったいない気もしてきた。」
「お前、正也の中国好きにも呆れるけど、日本史好きも凄いもんな。今、歴女が流行ってるけどさ。」
真吾は『歴史物』が好きじゃない。過去の事を知ってどうするんだって言ってるけど
過去から学ぶ事も多いと私は思う。
例えば…。戦争は二度としちゃいけないとか。その事を話すと、
「お前は固い。」
って必ず言う。柔軟な考えも必要だろうけど、こういう事は大事だと思う。
「まぁ、その井上の事もあるし、担任の先生が気に入ったんだったら、様子見たら?」
守っていつも妥当な意見を言うんだよね。
それが私達にとって潤滑油になってる事も多いけど。
私の話ばっかりも嫌だから私は三人が通ってる学校の事を聞く事にした。
「私の話はもういいからさ、遠藤さん…。だっけ?どうなったの?」
「すでにわが校のマドンナ的存在だよ。でも、だからこそ誰も声はかけてないみたいだけど。」
「ふ~ん。私とは立場が全然違うね。」
「お前にあの雰囲気が出せるか?無理だろ?」
「…。出来るかもしれないじゃん。」
「お前には無理だね。小学生の時、先生を落とし穴に落とそうなんて提案したの、どこの誰だ?」
「私です。」
私は静かに手を挙げた。
真吾を同じクラスになった4年生の時、いっつも怒ってばっかりいた先生をなんとかしたくて
クラスのみんなに私が言いだしたんだよね。でもその後皆だってノリノリでやったじゃん。
私一人に責任を押し付けないで欲しい。
『責任』
さっき妙子さんが言ってた言葉だ。最終的に選択するのは自分なんだから責任は自分で取れって。
私達も何でも親がかばってくれる歳じゃなくなってきたんだな。
守なんてもう将来はお医者さんになるって決めてるし。私が先の事考えなさ過ぎなのかな。
きっと正也は中国の歴史に関係する仕事に就くと思う。
私には何が面白いのかはわからないけど、それは他の三人にも言える事らしい。
日本史が好きな私の事を呆れてみてる所があるから。
この成績だけは毎年学年トップだった。
授業で先生が少しでも間違った事を教えたら、手を挙げて指摘する位生意気だったし。
そう言う意味では中学の日本史の先生には嫌われてたと思う。
好意的に教えてくれてた先生もいたけど。
そういえば真吾は将来どうするんだろう?
一番、考えてる事が分からないのは真吾かもしれない。いつもへらへらしてるから
誤魔化されてるけど、あんまり自分の意見とか言わない。
何でだろ。