「それで?あんた達の高校の気になってる女の子。…。名前なんだっけ?」
「遠藤 亜里沙。」
「そうそう。その子とはどうなったのよ。」
真吾がバックから携帯を出して、多分隠し撮りでもしたんだろう。彼女の写真を見せた。
髪が腰ぐらいまであって、本当に高校1年生かと思う程大人っぽい子だった。
「これってさ、けだるいって言うより、単に疲れてるんじゃないの?」
「お前はわかってないなぁ。こういう所が男心をそそるんだよ。」
「そんなもんかなぁ。」
「お前もさ、髪伸ばしてみたらちょっとはイメージ変わると思うよ。
だってほとんど男と変わらない髪型じゃないか。」
私は髪を伸ばしていた時期もあったけど、汗をかいた時にべったりとくっつく感触が嫌いで
中学生の時に思いっきり切った。
「髪が長かった時は少しは女に見えたもんな。」
真吾は私に対して散々な事を言う。それをフォローするのがいつも正也か、守だった。
でも今回は違った。二人共真吾の言葉にうなずいてる。
私は短い髪を触って、
「男の子の目から見て、やっぱり髪が長い方がいいの?」
「そりゃそうだ。綺麗な髪の女子に惹かれない男はいない。」
真吾が変に真剣に力説した。
「そんなもんかなぁ。たかが髪だよ。」
「されど髪だよ。」
…。髪、伸ばしてみようかな。でも私が髪を伸ばしたところでこの三人は私の事を女って見ないと思う。
「髪が短いとしょっちゅう髪切りに行かないといけないだろ?」
「まぁね。」
「伸ばしてみろよ。俺はあの時の方が好きだったな。」
正也が思い出す様に呟いた。
「なんだよ。お前、琴音に気があったのかよ。」
唯一髪が長かった頃を知ってる真吾が正也をからかった。
「ちげ~よ。どっちがいいかって聞かれたら髪が長かった時の方が良かったってだけだよ。」
「ふ~ん。」
「琴音って髪が長かった事があったんだ。俺は今の琴音しか知らないからイメージがわかないな。」
そうすると正也がどっかから持っていたのだろう。アルバムを持ってきた。
そして何ページかめくると、
「これ。琴音が髪が長かった時の写真。」
多分、体育祭の時の写真だと思う。真吾と正也と三人で写ってる写真を守に見せた。
「へぇ。確かにイメージ変わるな。また、伸ばしてみろよ。俺もこっちがいいな。」
「ここまで伸ばすのには2年は必要よ。」
肩よりちょっと下まで伸ばしていた髪を、今から伸ばすとなるとその位はかかると思う。
でも男の子の言う事も一理あるのかもしれない。
髪を切った途端になぜか女子の後輩からバレンタインなのにチョコレートとかもらう様になったから。
そういえば、下駄箱に手紙が入ってた事もあったなぁ。
…。だからか。同級生が受験の時女子高には行くなって説得したのは。
「髪…。伸ばそっかなぁ。」
短い髪をポンポンと叩きながら、呟いた。
「俺は琴音が髪を伸ばす事に賛成を一票。」
「同じく。」
「俺も。」
三人とも私が髪を伸ばす事に賛成みたい。でもなぁ…。なんとなく面倒くさい。
「ほら、えっと…。井上だっけ?そいつもお前を見る目が違ってくると思うぜ。」
「井上君は今関係ないじゃない。」
「高校で彼氏が出来ないなんて悲惨だぜ。」
真吾の言葉はいつも私の胸をえぐる。
「うっ…。それを言われると痛い。そうよねぇ。彼氏かぁ。」
「お前でも彼氏なんて欲しいんだ。」
正也がなぜか面白くなさそうに言った。いいじゃん。私が彼氏を作ろうが作るまいが。
正也には関係ないんだから。でも正也とが一番付き合いが長いし
家族ぐるみの付き合いだからなぁ。
お母さんと妙子さんは私達が付き合ったらいいのになんて無責任な事を言ってる。
だけど私は正也の事、幼馴染みとしか見てないからなぁ。
あり得ないって。