珍しく、江崎に励まされたのかその日から麻子は積極的に素材作りに専念する様になった。
ホームページ1枚分の素材が出来る度に江崎に確認はしていたが、
秋口が言った様に確かに上手かった。
「いいんじゃねぇの?」
「ありがとうございます。」
段々と麻子は笑顔で仕事をする様になった。
その麻子の姿が今まで見ていた、『仕事が出来ない女』とイメージから少しづつ江崎には変わっていった。
(ふ~ん。笑うといい女じゃねぇか)
女性関係では派手な江崎だったが、麻子には今まで見向きもしなかった。
それは仕事が出来ない女と見ていたからであって、女としてまったく見ていなかったからだ。
そんな事を考えながら仕事をしていたら、江崎の携帯が鳴った。
相手は付き合っている数々の女性の一人だった。
江崎は会社を出ると携帯に出た。
「仕事中に電話してくんなって言っただろ。」
「だって、隆弘さん最近相手にしてくれないんだもん。」
電話先の美千代が不満気に言った。
「俺だって仕事があるんだよ。いちいちお前に構ってられない。」
「…。冷たい。」
「それが分かってて俺と付き合ってるんだろ。」
「今日、どうしても話したい事があるの。時間作って。」
江崎は時計を見ると、
「30分だけだぞ。」
「それだけあれば十分。仕事が終わったら電話頂戴。」
そう言って美千代は一方的に電話を切ってしまった。
(あいつとも終わりかな)
今までの経験上そんな事を考えながら仕事に戻った。
女性一人と別れても、江崎には付き合っている女性が他にもいる。
中島には、
「いい加減にしろよ。いつか誰かに刺されるぞ。」
と、忠告されていたが江崎は無視していた。