私がお風呂を掃除してる時、携帯が鳴った。
着メロで綾香ってわかる。私って人によって着メロ変えてるんだよね。
そうしたら、すぐに誰からかかってきたのか分かるし。
濡れた手をそばにあったタオルで拭いてから、携帯に出る。
「もしもし?」
「私。」
すでに私達は名乗らなくてもいい間柄だ。
「準備オッケー。どこで会う?」
「じゃぁさ、こないだ雑誌で見たケーキ屋さんが美味しそうだったからそこ行かない?」
「どこ?」
「原宿。」
「え~っ、遠いじゃん。」
綾香は遠出するのが好きじゃない。出かけるとしても2駅隣のショッピングモールぐらい。
「じゃぁね…。」
私が考えていると、
「ねぇ、佳那の彼氏って何してる人?」
会ってから話すって言ったのに…。
「ホテルでウェイターしてる。私もこないだ転職してホテルで働いててそこで会ったの。」
「あんたがホテルのウェイトレス!似合わない気もするけど。」
「ウェイトレスというより受付かな?フレンチで受付してる。」
「ますます似合わない。で、その彼は今日は休みじゃないの?」
「今日は早番だからもう出かけちゃったよ。」
「どこのホテル?」
私は彰君が勤めているホテル名を言った。
「なによ、すっごい一流ホテルじゃない。」
「ウェイターとしての腕は一流だからね。」
「あんたの彼氏を拝みに行きたいからそこでランチしない?」
「え~っ、すっごく高いんだよ。一回ランチに行ったけど二人で二万近くしたんだから。
それに綾香、遠出するの嫌いじゃない。」
「私が見たいんだから、私が出すよ。
佳那の彼氏を見れるんだったらそれぐらい行くわ。」
「…。その執念には負けるわ。でも、主婦のあんたにそんなお金あるの?」
「主婦だからこそ、へそくりっていうのが出来るのよ。」
私はあんまり…。と言うかかなり乗り気じゃなかったけど、綾香がしつこいので
彰君のいるとこでランチをする事にした。
「服装とか気を付けてね。ドレスコードが一応あるから。」
「分かってるって。私も結婚前の結納の時それなりの服装したんだから。」
「だからって着物で来ないでね。」
「そこまで大袈裟にしませ~ん。じゃぁ、ホテルの最寄駅に着いたらまた電話するね。」
「ハイハイ。」
って事は私も着替えないと。ジーパンじゃマズいもんね。