30分経っても彰君は帰ってこなかった。
契約手続きが長引いてるのかな。
私は今度はちゃんと映画のタイトルが出てるDVDを観ていた。
泣ける話の映画で一人でポロポロ泣いてしまった。
映画が半分位になった頃、彰君は帰ってきた。
「ごめん、ごめん。遅くなっちゃって。」
彰君の肩には雨に濡れた後があった。
「雨降ってるの?」
「いや、ちょっと降っただけ。佳那は何してた?」
「彰君のDVD借りてみてた。」
「どれ観てたの?」
「これ。」
私はさっきまで泣きながら観ていた映画のパッケージを見せた。
「あぁ、それね。結構泣けるだろ。」
「うん、一人でぐすぐす泣いちゃった。」
「…。他のは観てない?」
きっとあのアダルトビデオの事だろうな。
「観てないよ。」
一応知らんぷりをしておいた。彰君だってこんなの見てるのがバレたら嫌だもんね。
彰君は煙草を出して満足気に吸っていた。
「ホテルの契約、うまくいった?」
「うん。ずっと煙草我慢してたんだ。でも収入も今の所より全然いいし、
スタッフも紹介されたけど、いい人だったよ。まぁ入ってみないとわかんないけどね。」