それから、橋本さんの視線を感じる様になった。
(何か仕事の事で悩んでるのかな)
私は能天気にそんな事を考えてた。
いつものファミレスで彰君と話していると、
「橋本さんって新人、入ってきたじゃない。」
「そうね。橋本さんを見てると私が入社してた頃を思い出すわ。」
「田口に言われたんだけどさ、彼女俺に気があるらしんだ。」
「へぇ、彰君モテ期だね。でも浮気はしないでね。」
「する訳なねぇじゃんか。」
そう言って私の頭を撫でた。
「彰君って私の髪を撫でるの好きだね。」
「髪が綺麗な人を見ると触りたくなるんだ。」
私は肩程まで髪を伸ばしていて、お風呂に入ったら必ずトリートメントをしていた。
「橋本さんは私達が付き合ってるの気が付てるのかしら。」
「みたいだよ。」
そこへ橋本さんがファミレスに入ってきた。
二人で同時に、
「あっ。」
と声をあげてしまった。
橋本さんは喫煙席に座り、私達の席のすぐそばだった。
何かを注文すると煙草を取り出し、考え込んでいた。
「話しかけた方がいいかな。」
「いいんじゃねぇの?橋本さんは俺達に気づいてないみたいだし。」
そんな事を話していたら、橋本さんの方が私達に気づいて私達に近づいてきた。
「お疲れ様です。」
「お疲れ。橋本さんもここに来るの?」
「たまに…。あの…。田口さんに聞いたんですけど柳沢さんと大久保さんって付き合ってるんですか?」
「まぁね。」
ここはしゃべるのを彰君に任せた。
「私、あのホテル辞めようと思ってるんです。」
「何で?まだ入って2週間過ぎた位じゃない。」
「高杉マネージャーの指導もキツイし。」
「あぁ、あの人ね。最初は優しくて、1週間もすれば怖くなるからね。でも辞める事ないんじゃないの?
一緒の喫煙席だから同席する?」
「いえ、いいです。考えたい事があるんで。」
そう言うと自分のテーブルに戻ってしまった。