「柳沢さんはいつくなんですか?」
「俺?24。」
(うそ…。3つも年下なの)
制服姿の柳沢さんは年上に見えたけど、カジュアルな普段着に着替えると歳相当に見えるかもしれない。
「柳沢さんはこの仕事して何年なんですか?」
「高校卒業してからだから…。6年目?」
「あの…。私やっていけるでしょうか。」
「大丈夫だと思うよ。まぁまだ初日だからわかんないけど。
でもうちのホテル、求人広告が多いの知ってるだろ?皆長続きしないんだよ。」
毎週の様に見ていた無料の求人誌にはいつもここの求人が載っていた。
「理想と現実違うんだよ。」
柳沢さんは煙草をふかしながら答えた。
「さてと、うちの状況も話したし、これからの指導のプランもなんとなくわかったから帰るか。」
柳沢さんは煙草をもみ消すと伝票をもってレジに行った。
私は自分の分は払おうと財布を出したら、
「今日はいいよ。まだ給料も入ってないし、俺から誘ったんだから。」
そう言って私の頭を撫でた。
「柳沢さん、その頭を撫でるの辞めてくれません?」
「あぁ、つい。」
「大久保さんの自宅ってどこ?」
「隣の駅です。」
「俺は5つ先。大丈夫?送ってやれなくても。」
「大丈夫です。」
それでも柳沢さんは私の沿線のホームまで送ってくれた。
「今日はありがとうございました。」
柳沢さんの返事を聞く前に扉は閉まってしまった。