Tomorrow is another day 番外編 97話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

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千夏と結婚した中島は千夏のお腹がなかなか大きくならない事が気になっていた。


「なぁ、病院行ったか?」


「まだ。」


「今度、一緒に行こうぜ。」


「うん。」


千夏は結婚さえしてしまえばこっちのものだと思っていた。


あの麻子という女も結婚パーティの幹事をしたぐらいだから諦めたと思っていたし、


最近では一度しか会っていないが江崎という男の元へいると聞いていたので安心していた。



中島は有給を取って、千夏と産婦人科に行った。


結果は中島を驚かせるのに十分だった。


「妊娠してないって。検査薬で陽性が出たのはホルモンバランスが崩れてたって。」


千夏はそれらしい事を言った。


(じゃぁ、何の為に麻子を諦めて、千夏と結婚したんだ…)


一瞬、騙された気がした。


だが、まだ猫をかぶっていた千夏は申し訳なさそうに、


「ごめんなさい。結婚を迫るみんたいな事して。」


だが中島は千夏を責めなかった。すでに麻子の気持ちは江崎に向かっていると思ったからだ。


「いいよ。子供は出来る時に出来るから。」



そして翌日、江崎も中島も会社のメンバー全員が驚く事があった。


麻子はリビングに少しのお金と江崎宛ての手紙を置いて、


江崎の部屋にあった荷物を持ち部屋を出た。


『江崎さんへ


今日までありがとうございました。私のマンションの清掃に使ったお金を置いて行きます。


私は江崎さんに助けられました。江崎さんの事は一生忘れません。


黙って出ていく事を許してください。そして探さないで下さい


小林 麻子』


朝、目を覚ましリビングでこの手紙を読んで江崎は急いで着替え、


会社へ向かった。


会社では秋口達が話し込んでいた。


「秋口さん!」


「江崎…。」


麻子のデスクを見ると綺麗に整理されていた。残っていたのは麻子が作ったパソコンだけだった。


「小林は?」


「僕のデスクの上にこれが置いてあったよ。」


それは辞表届だった。


辞表届と一緒に1通の手紙も添えられていた。


『P&Tカンパニーの皆様


今日まで良くして下さってありがとうございました。


何も言わず辞める無礼をお許し下さい。私にとってこの会社はとても素敵な会社であり


とても良い同僚の皆様でした。本来でしたら退社するのは1か月前に辞表届を出さないと


いけないのですが、別れが辛くなるので本日付で辞めさせて下さい。


社員旅行などはとても楽しかったです。


本当に今日までありがとうございました。


小林 麻子』


江崎は昨日の麻子の態度で何故気が付かなかったのか後悔した。


「俺、探してきます。」


「江崎!」


秋口からの呼び止めで振り返る。


秋口は黙って首を振った。


「…。そんな。」


「きっとあっちゃんは探す事を望んでないよ。」


江崎は自宅にあった手紙を握り占めた。