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旅行も決まり、最初の週に麻子は中島の部屋にエプロンとマスクを持参して行った。
「さぁ、今日は綺麗にするわよ。」
「俺的にはいいんだけど。」
「ダメよ、不衛生過ぎるわ。」
「まず、処分しちゃいけない物って何?」
「パソコンの横にある専門誌。」
「じゃぁ、あとはいいのね。」
「あと、漫画の単行本。」
「分かった。」
そう言うと麻子は携帯でどこかに連絡をしていた。
「先日お電話した小林です。ごみの処理をしたいので、今日来て頂けますか?」
「おい、誰を呼ぶんだよ。」
電話をふさぐと、
「私一人じゃこの雑誌の山は片づけられないもの。業者さんに頼んで手伝ってもらうの。」
「ったく、そこまでしなくていいのに。俺、業者に払らう金ね~ぞ。」
「私が呼んだんだもの。私が出すわ。」
再び風呂場の掃除を始め、中島がパソコンで何かしているうちに30分程で業者は来た。
男性の二人組だった。
麻子はエプロン姿で業者の人間に挨拶すると、
「奥の部屋に男性がいます。彼が使っているパソコンの横にある雑誌と
漫画以外は処分して下さい。」
「分かりました。」
玄関から入った業者の二人組は中島の部屋にびっくりしていた様だった。
それでも依頼人のプライベートに関して話をするつもりはないらしく
手際よく雑誌類などをまとめて、乗ってきたトラックにどんどんを持ち込んでいった。
業者が来たのは昼過ぎだったが、部屋がきれいになるまで夕方近くまでかかった
その間に麻子は風呂場を洗い、ベットの蒲団を外に干した。
業者が、
「終わりました。」
と告げ、今日の代金を請求書で渡した。その金額は麻子が思っていたより高く
どれだけ中島の部屋が散らかっていたのかを表していた。
「お世話になりました。」
麻子はエプロンを取ると業者にインスタントだがコーヒーを入れ、今日の仕事をねぎらった。
業者が帰ってから中島に声をかけた。
「巧さん、終わったわよ。こっちの部屋も見てみたら?」
中島はパソコンで作業していた手を止め、綺麗になった部屋を見渡した。
「すっげ~。あの雑誌の山が全くない。こうやって見ると俺の部屋て広かったんだな。」
「これからも出来るだけ、この状態を維持してね。私も時々掃除に来るから。」
「今まで付き合った女はいたけど、ここまでしてくれた女はいなかったな。
大体がこの部屋を見ると離れて行った。」
「そりゃそうよ。あれだけ汚かったんだから。」
「サンキュー。」
「どういたしまして。でね、もうこの時間だ食材もないから、今日は外食にしない?」
「そうだな。うちの近所に24時間営業の居酒屋があるんだ。味はいまいちだけど
そこでいいか?」
「いいわよ。」
最初に中島の部屋に来た時とは全く違う部屋から出て二人は居酒屋に入った。
「そういえばお前、社員旅行の幹事やってるんだって?」
「うん、皆の条件が多かったから高くつくと思ってたけど江崎さんに教えられて
安いところを見つけられた。」
「一人、いくらぐらいの参加費になるんだ?」
「社長が会社から少し出してくれるって言ってたから6000円で収まると思う。」
「箱根だって?」
「そう。車を3台レンタカーで借りて別れて移動するつもり。」
「お前ってこういうの得意だな。」
「そう?」
「話は違うけど、今日はコンタクトじゃないんだな。」
「そうなの。掃除でごみが目に入ったら困るから。」
「麻子は眼鏡の方がいいよ。出来る女っぱくて。」
「どうせ江崎さんに『知的でもないのに知的に見えるだけだ』って言われるのがオチよ。」
つついていた、アジの叩きの箸を止め、中島が真面目な顔をして麻子が思ってもいなかった事を言った。
「なぁ、俺思うんだけど、江崎もお前に気があるんじゃね~の?」
「ありえないよ。あれだけ私の事をバカにして。あっすみません、ジントニック2つ。」
「だって子供でいるだろ?好きな子にはちょっかいを出す奴。」
「そうだけど…。だけどこないだの合コンで南とどっかに行っちゃったのよ。それは考えにくいと思うけど。」
店主からジントニックを受け取りながら答えた。