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麻子の部屋に着くと中島はスーパーで買ってきたチュウハイをさっそく開け一人で飲み始めた。
つまみの準備をしていた麻子はキッチンから声をかけた。
「中島さんだけずるい。せめて乾杯ぐらいしようよ。」
「ハイハイ。」
そう言うと麻子の分の缶を持ってきたが、
いきなり麻子の顎をつかみ口移しでチュウハイを飲ませた。
「はい、乾杯終了。」
そうして何事もなかった様に麻子のパソコンを動かしている。
まさか口移しで乾杯なんて思ってもいなかったので、麻子は顔を真っ赤にしてしまった。
「もう!いきなり何するかと思えば。」
「気にする仲じゃないだろう。」
「ったく…。ねぇ、おつまみ。お豆腐と枝豆でいい?」
「俺はお前の作ったドリアが食べたい。」
「えぇ~。この時間から?結構手間がかかってるんだよ。」
「朝飯にすればいいじゃね~か。」
「朝からドリア…。重くない?」
「とにかくドリア。」
麻子の自宅で初めて麻子が作ったドリアを気に入ったらしく、
麻子の自宅に来ると必ず、ドリアが食べたいと言い出す。
まるで好物のドリアが毎回食べられないと、ふてくされる子供の様だった。
しょうがないので、簡単なドリアを作る事にした。
本来だったら米の時点から準備しなくてはいけないのだが、
中島が来る度ドリアを作っていたので冷凍にリゾットは保存していた。
それを解凍して手間を何段回も省略した。
とにかくドリアが焼けるまでは20分は必要だったので
簡単なサラダと枝豆は出した。
「ドリアが出来るまでちょっと待ってね。」
「あいよ~。」
それでもパソコンから目を離さない。
何をしているのだろうと、後ろからパソコン画面を見ると音楽サイトだった。
「麻子ってミスチルとか聴く?」
「うん、たまに。」
「じゃぁ、尾崎豊は?」
「大好き!」
「オッケー。」
そう言うと勝手にパソコンを操作し、どんどん音楽をダウンロードしていった。
「ねぇ、それって違法なんじゃないの?」
「ここのサイトを見た形跡は全部消したから大丈夫。」
「そういう問題じゃないと思うんだけど…。」
「まぁ、小手調べだよ。」
「小手調べって?」
「こういうサイトて大体はロックがかかって、簡単にダウンロード出来ないんだよ。
で、ロックを解除してダウンロードしてる訳。」
「巧さんの知識には感服するけど、やってもいい事と悪い事があると思うんだけど。」
「お前は真面目に考え過ぎ。」
「そうかしら。」
そんな話をしているとオーブントースターが音を立てて、ドリアが焼けた事を告げた。
「巧さん、ドリア出来たわよ。」
「サンキュ。これって癖になるな。1週間に1回は食べないと落ち着かない。」
「そう?どこにでもあるドリアだと思うけど。」
「お前は俺がこんな高等な食事が作れると思ってんのか?」
「思ってない。」
「はっきり言い過ぎ。」
笑いながら、ドリアを食べる手は休めなかった。
でも麻子にとってこの時間がとても幸せな時間だった。