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その日から麻子はパソコンとの格闘だった。
どの部品を見ても同じに見えるし、どのコードをどこに刺せばいいのかもさっぱりわからなかった。
「ダメ!全然わかんない…。」
そこへ中島と呼ばれていた男が煙草を口にしたまま近寄ってきた。
「もうお手上げか?」
「そうじゃないですけど…。みんな同じ部品に見えて。」
「どれ?どこまで進んでいるんだ?」
麻子が組み立て途中のパソコンを覗き込んだ。
すると、麻子の頭をポンポンと叩くと笑いながら
「こりゃ、最初からやり直しだな。基盤がめちゃくちゃだ。」
「えぇ~。そんなぁ。」
思わず座り込んでしまう。今までの時間はなんだったんだ。
「まぁ、気にするな。初心者にパソコン作れって言うのが無理な話なんだ。」
すると中島は周りをキョロキョロと見ると、小声になり
「渡部さんや江崎には内緒だぞ。ちょっとだけ手伝ってやる。」
そういうと手際よく、麻子が組み立てたパソコンをバラバラにしていった。
そのバラバラになっていくパソコンを見ながら
(今までの努力はなんだったのよ)
と思ってしまった。それと気になったのが中島が言った『江崎』という名前。
「えっと、中島さんでしたっけ?」
「そうだけど?」
煙草をくわえたまま、楽しそうに部品を分解している中島に質問をした。
「『江崎』さんってどなたですか?」
「さっき、お前にキッツ~い事を言ってた男。俺の隣の席だよ。」
(『江崎』って言うんだ…。)
視線を江崎に向けると煙草を吸いながら、パソコンに何かを打ち込んでいた。
その差は麻子がその場しのぎで勉強した、ブラインドタッチとは程遠く
ちゃんと、画面を確認しながら打っているのだろうかと思うぐらい早かった。
(私もあれぐらいできる様にならなきゃいけないのよねぇ)
嫌な男だったが仕事はできるらしい。なぜかパソコンのモニターの上にらくだのぬいぐるみがあった。
それは江崎のイメージからかけ離れていた。
(変な人)
そんな事を考えていると、中島が麻子の袖を引っ張った。
「ほれ、基盤は少しだけ手伝ってやったから、あとは頑張れ。」
「ありがとうございます。」
そういうと、再びパソコンに向き合おうとした麻子に中島が声をかけた。
「小林って言うんだっけ?」
「あっ、はい。」
「今日、お前の歓迎会だと。酒は強いか?」
「嫌いじゃないです。」
「ふ~ん。7時からだって言ってたぞ。店はわからないだろうから一緒に行ってやるよ。」
「ありがとうございます。」