Tomorrow is another day 番外編 6話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

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その日から麻子はパソコンとの格闘だった。


どの部品を見ても同じに見えるし、どのコードをどこに刺せばいいのかもさっぱりわからなかった。


「ダメ!全然わかんない…。」


そこへ中島と呼ばれていた男が煙草を口にしたまま近寄ってきた。


「もうお手上げか?」


「そうじゃないですけど…。みんな同じ部品に見えて。」


「どれ?どこまで進んでいるんだ?」


麻子が組み立て途中のパソコンを覗き込んだ。


すると、麻子の頭をポンポンと叩くと笑いながら


「こりゃ、最初からやり直しだな。基盤がめちゃくちゃだ。」


「えぇ~。そんなぁ。」


思わず座り込んでしまう。今までの時間はなんだったんだ。


「まぁ、気にするな。初心者にパソコン作れって言うのが無理な話なんだ。」


すると中島は周りをキョロキョロと見ると、小声になり


「渡部さんや江崎には内緒だぞ。ちょっとだけ手伝ってやる。」


そういうと手際よく、麻子が組み立てたパソコンをバラバラにしていった。


そのバラバラになっていくパソコンを見ながら


(今までの努力はなんだったのよ)


と思ってしまった。それと気になったのが中島が言った『江崎』という名前。


「えっと、中島さんでしたっけ?」


「そうだけど?」


煙草をくわえたまま、楽しそうに部品を分解している中島に質問をした。


「『江崎』さんってどなたですか?」


「さっき、お前にキッツ~い事を言ってた男。俺の隣の席だよ。」


(『江崎』って言うんだ…。)


視線を江崎に向けると煙草を吸いながら、パソコンに何かを打ち込んでいた。


その差は麻子がその場しのぎで勉強した、ブラインドタッチとは程遠く


ちゃんと、画面を確認しながら打っているのだろうかと思うぐらい早かった。


(私もあれぐらいできる様にならなきゃいけないのよねぇ)


嫌な男だったが仕事はできるらしい。なぜかパソコンのモニターの上にらくだのぬいぐるみがあった。


それは江崎のイメージからかけ離れていた。


(変な人)


そんな事を考えていると、中島が麻子の袖を引っ張った。


「ほれ、基盤は少しだけ手伝ってやったから、あとは頑張れ。」


「ありがとうございます。」


そういうと、再びパソコンに向き合おうとした麻子に中島が声をかけた。


「小林って言うんだっけ?」


「あっ、はい。」


「今日、お前の歓迎会だと。酒は強いか?」


「嫌いじゃないです。」


「ふ~ん。7時からだって言ってたぞ。店はわからないだろうから一緒に行ってやるよ。」


「ありがとうございます。」