Tomorrow is another day 第2章 77話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

最初から読む方はこちらから


Tomorrow is another day 第2章 始めからの方はこちらから


麻子が中島のマンションを出た時、千夏が煙草を吸いながらいたのでぎょっとしてしまった。


「おかえりになったんじゃないんですか?」


「別に。あの人とあなたが本当に切れてないか見てただけ。」


「中島さんとは本当にもう何もないんです。これ以上つきまとうと警察に相談しますよ。」


「すれば?元妻が元夫のところに来て何が悪いの?」


「私と優人さんの実家に色んなもの送りつけたじゃないですか。」


千夏は足で煙草をもみ消すと、冷笑した。


麻子はこの人はこんな笑い方しか出来ないのだろうか、と思ってしまった。


「あぁ、あれね。ちょっとしたゲームよ。」


「ゲーム?」


「そうよ。ゲーム。あんな事で結婚が破談になったら、


あなた達もそれだけの信頼関係だったって事でしょ?」


「そんな事して虚しくないですか?」


「別に。暇つぶしには丁度良かったわ。」


これ以上、低レベルな会話をしてもしょうがないと思い、千夏の横をすり抜けて麻子は帰ろうとした。


すると後ろから声がかけられた。


「ゲームはこれからも続くわよ。」


麻子はその言葉を無視して振り向きもせず、自分のマンションに帰った。



その晩、優人が帰ってきた時に今日あった事を話した。


中島の様子、千夏から言われた言葉。


「中島さん、本当に大丈夫かな?それに奧さん、まだ何かするつもりなのかな?」


「判らないわ。でも一応警察に届けた方がいいかもしれない。」


「そうだね。事前に報告しておいた方がこっちも動きやすいし。」


「それでね、今日中島さんの家で食事の準備をしてた時、昔中島さんが会社の人のジャケットと


自分のジャケットを間違えて帰ってきて、夜の1時過ぎに大家さんに合鍵を持ってきてもらった事を


思い出して、話したの。」


「そんな事あったんだ。意外とそそっかしいね。」


「でも、こんな話を中島さんの前で笑いながら話せる様になって良かったと思ってる。」


「うん。嫌な思い出だけじゃなくて、少しづつでいいから良い思い出になっていくといいね。」


麻子の中では中島の事は、セピア色の写真の様に変わりつつあった。


写真は見るけれど、セピア色。それは美しい思い出になってきた証拠かもしrない。