今日、二人共食事をしていなかったのでどこか食事が出来る所を探した。
以前行った店は麻子も優人も苦手なマスターがいたのでパスした。
砂浜をしばらく歩いて、オープンカフェになっている店を見つけた。
「優人さん、あそこに良さそうなお店がある。」
「じゃぁ、そこにしようか。」
二人で店に入ると、もうそろそろ海水浴シーズンという事もあり若い年代の客が多かった。
店全体が若者向けなのだろう。店員も若かった。
「いらっしゃいませ。こちらメニューになります。」
今日のパスタとピザの説明をして店員は水を置いて去っていった。
麻子がペラペラとメニューを見ていると優人がボソリとつぶやいた。
「ありがとう。僕を許してくれて。」
メニューを見ていた麻子の手が止まる。そして優人の手に自分の手を重ねた。
「もういいの。優人さんは中島さんの事から私を助けてくれた。それだけでも十分よ。」
「でも僕は中島さんと同じ様な事をしてしまった。許される事じゃないよ。」
「…。でも私はあなたと別れるつもりはないわ。一緒に人生を共にしたいと思ってる。
式はともかく、入籍は早めにしましょう。そして私達の家庭を築いていくの。
あなた、前に私に言ったわよね。希望は捨てちゃいけないって。
だから希望を持って将来の事を考えましょう。」
こんな不祥事を起こした時、何故女性の方が強いのか優人にはわからなかった。
でも、少なくとも麻子は中島との間で辛い事があった。それが彼女を強くしてるのかもしれない。
再び店員がやってきて注文を聞いてきた。
「ここのオススメって何かしら。」
「期間限定で、シーフードのサラダとパスタのセットを出してます。
パスタは選べますので、お二人で別々のパスタにされてはどうですか?」
「じゃぁ、パスタはあなたにお任せするわ。そのセットを2つお願い。」
「いいんですか?私が決めっちゃって。」
「お店の方が一番美味しいのを知ってるでしょ?任せるわ。」
「はい。ありがとうございます。」
「優人さんもそれでいいかしら?」
「うん。」
今日は完全に麻子に主導権を握られそうだった。