「おはよ~ございま~す。」
「おはよう。」
静は携帯をポケットにしまいながら、真亜子の顔を見た。
「あれ?店長休みですか?」
真亜子はすぐに山下の所在を確認する。それで静も真亜子の気持ちに気付いたのだ。
肝心の山下は気づいてない様だが。
「さっき連絡があったわ。有給だそうよ。」
「えぇ~。せっかくクッキー焼いてきたのに。」
こんな状態だと静じゃなくても気付く。
「ここの所、徹夜が続いたからね。店長だって休みを取るわ。それに…。」
「それに?」
「大事な人も出来たみたいだしね。」
静のいい点は何事もすぐに見抜く事。悪い点は人を観察しすぎる事…かもしれない。
真亜子はその言葉に沈んだ様子になり、それでもクッキーが入っているであろう
袋をぎゅっと握りしめて、
「…私もなんとなくそうなのかなぁって思ってました。」
その言葉は静にとって意外だった。山下一筋で何も見えていない様に見えたから。
だが、仕事にそれ以上、上司のプライベートの話をするつもりはなく、
真亜子の言葉を無視する様に今日のスケジュールを確認した。
今日は平日でもあるし、そう客は来ないだろう。
とりあえず、ディスプレイを変えるか…。そんな事を考えていた。
横目に沈んだ様子で自分のデスクに座る真亜子を見ながら。