久しぶりに麻子は清々しい気持ちで出勤した。
優人という大事にしなくてはいけない男性が出来たのもあったし
毎朝の様に涙を流さす事なく起きる事が出来たからだったかもしれない。
「編集長。昨日はお休みを頂いて申し訳ありませんでした。」
「ちゃんと病院は行ったの?」
「はい。ちょっとした風邪でした。もうお薬も頂きましたし、大丈夫です。」
本当はサボり休みで病院など行ってない事など言えない。
今まで憂鬱だった結婚の特集記事も、前と比べて楽な気持ちで取り組む事も出来た。
それでも、以前彼と見たウェディングドレスのデザイナーの資料は
あまり見たくなかった。
やっぱり優人と彼を比べてしまうのだろうか…。
それだけはしたくなかった。あんなに麻子の事を想ってくれて
過去の彼の事も承知で交際を申し込んでくれた優人の気持ちには答えたかった。
資料をまとめていた麻子の元へ真里がニヤニヤしながら近づいてきた。
「あ~さこ先輩。なんかいい事あったんですか?」
「え?何で?」
「なんだかブライダル特集を組むって決まった時より元気そう。」
「ちょっとね。」
「なんだか気になる~。」
「秘密。」
まだ、優人と付き合い始めた事は誰にも言いたくなかった。
本当に優人とこのまま付き合い続ける自信が持てなかったからだ。