今日もいつもの朝がきた。
自分の涙が頬を濡らしている感覚で目が覚める。
ベッドサイドに置いてある時計は、まだ朝の5時前だった。
麻子は枕に顔を押し付け、枕カバーで涙を拭き取った。
何回、あの夢を見ればいいのだろう。
もう10年以上前の思い出を夢見ては、毎朝涙をこぼしながら目が覚める。
一度でいいから彼に会いたかった。そんな事は無理だと分かっていても。
頭を振り、重苦しい気分でカーテンを開ける。
麻子の気持ちとは裏腹に今日は晴天になりそうだ。
のろのろと洗面所に行って顔を冷たい水で洗う。
鏡を見たら、今日も目が腫れていた。
夜中の何時頃から涙を流していたのだろう…。
いっその事涙腺がなくなってしまえばいいのに。
でも、彼との思い出はなくしたくはなかった。
人は人生で一人は忘れられない人がいるらしい。
麻子にとって彼がそうなのかもしれない。
もし10年前に戻れるなら、今なら違う選択をしていたかもしれない。
でも、過去には当然戻れない。
今さら後悔してもしょうがない。何故あの時違う選択をしなかったのだろう。
きっと今と違う人生を歩んでいたかもしれないのに。