光は私を引きづる様にタクシーに乗せると、そのままコンサート会場に向かった。
タクシーの中ではしばらく考え込んでいたみたいだけど、
携帯電話を取り出して何やら話し始めた。
「あ、俺だけど。今日のコンサートの構成で一部変えて欲しいんだ。
…わかってるよ!今さら構成を変えるなんて無茶なのは。
でも、俺にとって人生がかかってるんだ。頼む。」
相手は誰か判らなかったけど、多分コンサートスタッフなんだろうな。
何をするんだろう…。
「詳しい事は会場についてから話す。…あぁ。悪いな。」
電話を切ると私の手をギュッと握りしめて
「女史の言う通りにさせてたまるもんか。俺には俺の人生があるんだ。」
「何をするつもりなのよ。」
「友梨香には秘密。でもこれで絶対、俺達の結婚には邪魔させない。
そして俺達の子供を守るんだ。」
その言葉には光の決意が込められている様な気がした。
コンサートは結局1時間遅れで開催された。
光もブルムンのメンバーともスタッフとも話し合っていたみたいだった。
ブルムンのメンバーは、光の突然の構成変更に戸惑っていたみたいだけど
最終的には賛成してくれてたみたいだった。
だけど、上杉さんをはじめ、他のスタッフは頑として反対していた。
(何するつもりなんだろう…)
いつもだったら関係者席でコンサートを観ているけど
今日は光がどうしても袖で観ていて欲しいと言ったから、
今日は袖で観る事になった。