しばらく、光の携帯番号を見つめて何度も深呼吸をする。
(今、電話したら絶対コンサートは遅れるよね…。
でもあの人の言い方はないと思うし。)
何度も同じ考えが頭をめぐる。
考えがぐるぐる回っているうちにも時間は流れる。
意を決して光に電話をする。
「光?今いい?」
「どうだった?病院?」
やっぱり病院に行く事は気にしてくれてたみたい。
「ホントは電話で言う事じゃないんだけど…。」
「何か病気だったのか?」
光の心配気な声が胸に刺さる。でも、これは言わなきゃいけない。
「私、子供出来たみたい。」
「…。」
電話先で光が呆然としているのがわかる。そうよね。いきなり父親になるって
言われてもびっくりするし、困るよね。
「光?」
「…。マジで?」
「こんな事、冗談で言えると思う?」
「…。よっしゃ~!これで事務所の許可も降りるだろ!
健の時だってそうだったんだし。」
私は事務所の社長に『堕ろせ』なんて言われたなんて言うべきか
この後になって悩んだ。
こんなに光が喜んでるのに社長がそんな事言ってるのを
知ったら、絶対社長ともめる。
下手したらBLUE MOONを辞めるなんて言いかねない。