そんな事を外を見ながら考えてたら、
私が気分が悪いと勘違いした上島さんが心配そうに声をかけてきた。
「部長、やっぱり体調がすぐれないなら早退した方がいいですよ。」
「エッ?」
すっかり考え込んでた私は、振り返り聞きそこねた表情をした。
「ほら、やっぱり。ぼんやりしてるし。
顔色も少し悪いですし。早退して下さい。」
勘違いをさせてしまったが、
なんとなく仕事をする気分じゃなかったので、
皆の言葉に甘えて早退させてもらうことにした。
マンションに帰るとコンサートツアー中なんのにも関わらず光がいた。
ソファで雑誌を読んでいる途中で寝てしまった様だった。
顔の上に雑誌が乗っている。
そっと雑誌を持ち上げて、毛布を持って来てふわりとかける。
そして光の頭を起こさない様に持ち上げて、自分の膝に乗せた。
起こさない様にしたとはいえ、こんな行動をしても全く起きない。
疲れきっているのだろう。
今、思うと高田君に襲われた日以来、光は毎日来てくれてた。
それが深夜でも早朝でも。
コンサートツアー中だから、そんな事したら体が持たないだろう。
思わず私は、光の顔をそっと両手で包み込んだ。
そうすると、なぜだか涙が零れてきた。
ここまで私を守ってくれてる光。
私にはもったいない男性ではないのではと思ってしまう。
…私は光に何も返してあげてない。
そう思うとなおさら、涙が零れる。
「ごめんね。光。」
その声に目を覚ました光は私が泣いているのを見ると、
「どうした?なんかあったのか?」
優しく抱きしめてくれた。
このまま私は光に甘えてていいのだろうか。
以前はもっと自立した女じゃなかった?
「光、ごめんね。私、貴方に何も返してあげてない。
貴方はこんなにも私に優しくしてくれてるのに。
こんなに心配してくれてるのに。ごめんね、ごめんね。」
私は光の腕の中で何度も謝った。