光に大きなつばの帽子を被せ、私達は外出の準備をした。
この際、紗由理がここに住んでいる事がバレるのはしょうがない。
これから多少不便になるけど、芸能人同士のカップルの紗由理と、
一般人と芸能人のカップルの私達だったら、
一旦紗由理達が交際を認めてしまえば、好機の目で見られるのは私達だから。
「じゃぁ、行くわよ。光は絶対声を出さないでね。」
光はうちの中ですでに声を出さずに、こくこく頷くだけだった。
「紗由理も光のフォローお願い。」
「まかせて。でも、なんだかどきどきしちゃうね。」
「遊びじゃないんだから、しっかりお願いよ。」
「その辺りは判ってま~す。ね、光君。」
その紗由理の問いにも光は笑いながら首を縦に振るだけだった。
本当に判ってるのかしら。私は覚悟を決めて玄関のドアを開けた。
そこにはまだあの田中がうろついていて、
いきなり玄関から出てきた私達に驚いた様だった。
「これは、これは。こんな夜遅くにどこへお出かけですか?」
「久しぶりに休みが取れたので深夜バスで実家に帰ろうかと思ってます。
何か?」
「後ろにいらっしゃるのは、女優の佐々倉 紗由理さんじゃないですか。
どういうご関係ですか?」
「プライベートな問題です。ご自分で調べたら?」
「チッ」