光は深夜近くにやってきた。
どうやらプロモーションムービーの撮影が長引いたらしい。
これは光のせいじゃないから光を責められない。
でも、待っていた私は光が来るのが遅かったので少し苛立っていた。
光のせいじゃないって理性では判っていたけれど。
「遅かったのね。」
少し刺のある言い方で光に言うと、光も疲れた様に、
「まいったよ。撮り直しに、撮り直しの繰り返しでさ。
まぁ、10周年記念のDVDだから監督も熱が入ったんだろうけどさ。
明日も何曲か撮るんだ。」
「そう…。忙しいのね。じゃぁ、私の話はいいわ。
貴方の負担になりたくないし。」
「そうはいかないよ。例の友梨香に告った奴、
やっぱり男同士の話はつけなきゃな。俺の方が友梨香に相応しいって」
「…。」
「どうしたんだよ。黙り込んで。」
「私が貴方に相応しいが疑問に思ったのよ。芸能界には綺麗な女優さんも、
ミュージシャンの人もいるでしょ。私なんて何も取り柄がないし。」
「何、言ってんだ。前にも話たろ。
俺に面と向かってダメなものはダメだって言えるのは友梨香だけだって。
見た目じゃないんだ。そりゃ、友梨香も綺麗さ。
芸能人で友梨香と違った綺麗な所を持ってる人もいる。
元に紗由理ちゃんには悪いけど、女優の紗由理ちゃんには魅力を感じないんだ。
一般人でも、俺は友梨香がいい。いや、友梨香じゃないとダメなんだ。」
そう言うと私を強く抱きしめた。
私は彼の腕の中で高田君が光を睨む顔を思い出していた。
このまま高田君に光と結婚する事を話ても大丈夫だろうか。
私は一抹の不安を覚えた。