そして、あっという間にマンションは決まり、
私達は夜逃げするかの様に引越しをした。
いつ、どこかで芸能記者が見てるかわからないから。
新しい新居は、クリーム色の壁で色々いらついた時に落ち着く。
エントランスもさり気なく観葉植物が植えてあって、
やっぱりグリーンはいいなって思わせた。
でも、エントランスの前に立つ事に心の底では身分不相応だと思った。
これはいつかは慣れるんだろうか…。
私がマンションの前で立ち尽くしていると、紗由理が車で帰って来た。
相変わらずジャージに帽子姿だったけど、このマンションだと、
やっぱり紗由理は女優だと認識してしまう。そんな私を思いを分かってか、
「友梨香ちゃん、まだこのマンションに住むの慣れない?」
抱きつきながら笑った。その笑いには少し無理があり、恐らく、
仕事先で何か言われたのだろうと、私も紗由理を気づかった。
私達は腕を組みながらエントランスをくぐり、自分達の部屋に戻った。
なんだか、淋しい2人だなって内心思ったけど、私達はこれでいいんだ。