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CASE1 小柳 潤
CASE2 岡田 康子
CASE3 佐藤 愛
CASE4 柳田 瞬
僕は車窓から外を見つめながら、今までの依頼人の事を考えた
何人の依頼人と会ってきた事だろう
パイロットに憧れていた小柳さん
ご主人の死をずっと誤解していた岡田さん
弁護士になるのを夢みて実現させた佐藤さん
歌手になったけれど、現実と夢の間に苦しんだ柳田さん
無事弁護士になった佐藤さんの勤め先の上司で実はお父さんだった氷室さん
そして僕の最後の依頼人、渡辺さん
他にも沢山の依頼人の人達と出会って別れてきた
僕は、依頼人の人たちと接して色んな事を学ばせてもらった気がする
みんな生きる事に精一杯だった
それは輝いて見えた
10年後の自分へ手紙を書く事は10年後の自分へのエールだったのかもしれない
だけど、僕の妻の10年後の手紙は違った
僕への願いの手紙だった
僕はそれに答えなければならない
それが、24年前いきなり家を飛び出し「10年配達人」になった僕の妻への
罪滅ぼしかもしれない
『罪』?
いいや『罪』ではないな…
24年分の依頼人からもらった、大切な事を妻に報告し分かち合う事だろう
妻はいきなり帰って、僕を受け入れてくれるだろうか?
それだけが、僕は心配だった
だけど、正直なところずうずうしいかもしれないが、僕は妻に会えるのを
少し楽しみにしていた
今までの依頼人の事を妻に話すのを、楽しみにしている自分がいた
ずっと1人で粛々とやってきたから、誰かに聞いてもらいたいだけかも
しれない
そして、電車は僕の家のある駅に着いた