「明け方のインターホン」 




呼び出し音と共に 
モニターに映し出された 
まぎれもない 
きみの姿 

グッと押さえつけた
様々な感情のなか  

急いで扉を開け 
何か言おうとした 
きみを制して 招き入れる 

きみのカップと 
ぼくのカップに 
インスタントのコーヒーを注ぎ 

顔を伏せたまま 座っている 
きみの前に置く 
 
沈黙の中で 固まったままの 
よそよそしい距離は 
「おかえり」とだけ告げて 
抱き締めた瞬間に消え失せた 
 
幸せな気持ちいっぱいのなか 
カーテン越しに 
朝の光が 薄っすらと 
透けてきていた 

そこで 
情景は一瞬で消え 
真っ暗な中に 
天井の輪郭が浮かび 

夢だと。気づき 

感情の塊が押し寄せ 
噴き出した 
 


 
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問うこともなく 
迎え入れてくれた人は  
ただ ただ 
きみが居てくれたら 
それだけでいいと
優しく包んでいることだろう 
 
陽が明け出した部屋は 
早く目を覚ませと 
つぶやいているようだった 

 
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「忘れな草」   tomo   

 
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