◆今日の一言
No.441(07/5/25)

『手続きの消化は、就活ではなく、就活ごっこにすぎない』





僕は昨今の「~する人、しない人」、「~できる人、できない人」という安易な区分があまり好きではありませんが、今月作家デビューしたこともあって新しい人に会う機会も増え、以前よりそういう質問を受けることが多くなりました。


「社会人になって成功する人としない人の差は?」
「就活でうまくいく学生とうまくいかない学生の差は?」
「いい内定がもらえる人ともらえない人の差は?」


今では部員以外の学生さんと会う機会も増え、そういう質問をされることがあります。





誰しも、余分な資源の浪費は避けたいものです。だから、できるだけ成果に直結する作業だけを夢まで敷き詰めて、事前にしなくてよいと分かっていることは避けたいと思うのも自然なことでしょう。



目に見える成果だけを安直に欲しがるのは現代人の傾向なのか分かりませんが、僕はそういう学生さんの期待に応えて、恐ろしくシンプルな基礎の反復が重要だと説明しています。


エントリーシート対策、面接対策、筆記対策などの重要性は、就活で1割にも満たないものだからです。



学生さんが就職活動を「シューカツ」と呼ぶことは、FUNのお手伝いをするようになって初めて知りました。


もちろん、それが「就職活動」の略語であることは、どの学生さんも知っています。


しかし、口で「シューカツ」と言っている割には、全く「活動」をやっていない学生さんが多いのも事実です。



多くの学生が、あまりに表面的で安直な将来設計のまま社会に突入しようとするのを見て、4年前、僕は本当にびっくりしました。


「シューカツって、何を準備したらいいんですか?」
「シューカツって、やっぱり面接が一番大事なんですか?」
「シューカツって、筆記の結果はどれくらい重視されますか?」


…この若者たちは、一体何をしゃべっているんだろうか?
自分の言っていることの意味を分かっているんだろうか?
そう思わずにはいられませんでした。



書類選考、面接試験、筆記試験は、確かに大事です。なぜなら、そこに過去、現在、未来の自分を表現するチャンスが凝縮されているからです。


エントリーシートや面接、筆記は、「頑張ってきた自分」、「価値ある目標を達成したいという情熱」を記入し、表現するための「手続き」です。


それがなければ機会損失を招くという点で、とてもとても大事な手続きです。この手続きを逃しては、成長した自分を伝えるチャンスを失います。



しかし、手続きはあくまでも手続きでしかありません。そして、人は手続きをいくらやったって、これっぽっちも成長することはありません。


手続きは自分の成長を伝えるためであっても、それで成長するような性質の作業ではありません。


手続きで得られるのは所詮「熟練」程度のことで、そういうのは何度か繰り返せば誰でも得られる表面的な成果に過ぎません。よって、手続きの反復は「経験」などではなく、ただの慣れでしかありません。



ということで、エントリーシート作成&提出、筆記試験対策、面接対策などは、「就活」などではなく、「手続きの羅列」に過ぎません。


ところが、受からない学生に限って、ただの手続きの連続体でしかない時間のパッケージを「シューカツ」と呼び、必死にエントリーシート対策や面接対策をやっているではありませんか。


4年前に初めて学生の就活を見た時は、「これはよくできたパロディじゃないか」と驚きました。



「活動」とは何でしょうか。活動は明らかに手続きとは異なります。活動と手続きは…



①活動では成長できるが、手続きでは成長できない
②活動はエントリー前からできるが、手続きはエントリー後にしかできない
③活動は終えて達成感があるが、手続きには解放感しかない
④活動は自信をくれるが、手続きは不安をくれる

という点で、全く異なった性質の行動です。



だからFUNでは、4年前から…


「手続きは後回しでいいから、先に活動をしよう。活動をして成長しないと、どれだけ字がきれいで笑顔がさわやかでも、何の意味もない」

と言っているわけです。

アルバイトやサークル、ゼミを通じて徹底的に自分の可能性を発掘し、時間、お金、エネルギーという自分の流動資産を実績、評価、自信、知識といった固定資産に変換し、自己表現の素材にしようじゃないか、というのが発足以来の方針です。



学生でも社会人でも、受からない人に限って、「やる気だけは誰にも負けません!」などと真顔で言うものです。


数値化できず、比べようもない要素を持ち出して「誰にも負けない」とか言われたって、誰がまともに聞き、信じるというのでしょうか。


そもそも、焦りや不安から抽象的な志望動機を繰り出すこと自体、他人に負けている自分を自分で認めているようなものです。



そんなに「誰にも負けないやる気」があるというなら、じゃあ、そのやる気をどう形にしたか、証明してもらおうではありませんか。


あなたの「活動」の成果を、とくと見せてもらおうではありませんか。

「手続き」で。



手続きと活動を混同した学生、社会人の成果は悲劇的です。自分がやってきたことが単なる手続きの集合体に過ぎないと知った時、全ての選考は終わっています。


もう、活動も手続きもできない時期になって、自分が置かれた現実の意味を知り、恐怖と嫉妬と後悔で精神に異常を来たす若者も大勢います。


自分の時間を虐待し、その虐待した時間が過去となって自分を圧迫し、「過去からの難民」となった若者たちを「フリーター」と呼んでいます。



僕はそういうフリーターを専門に見てきたので、彼らの不安や恐怖をいかに解き、いかに自信と希望を持たせるかは、よく経験してきました。


学生証を失って「ただのプー」となった若者たちの過去を取材すると、誰もがみな、「活動」と「手続き」を混同し、「書類で落ちて悔しかった」、「筆記の量がハンパじゃなかった」、「面接でありえない質問をされた」などと真顔で失敗を語ります。


確かに、書類も筆記も面接も散々な成果だったのかもしれませんが、それ以前に、そういう手続きでしかない作業を失敗の原因だと勘違いしているところが、最大の失敗だと言わずにはいられません。



ということでFUNでは、「手続きの羅列」を「活動」と思い込み、自分の成長が期待できるような作業を「忙しい」と軽視して、目先の対策ばかりを重視して未来に突入するような作業を…

「就活ごっこ」

と言ってきました。

いえ、FUNではというより、僕がそう言ってきただけのことです。



就活が始まる秋くらいに3年生を対象に「就活」と「就活ごっこ」の差を話すと、それはそれは、嫌な顔をされました。


就活が本格化する1月くらいに3年生に話すと、青ざめて「今知れてよかった」という学生がたくさんいました。


就活の大事な作業がほとんど終わる3月くらいに3年生に話すと、泣き崩れそうになる学生もいました。


もはや就活が終わった5月に4年生となった学生たちに話すと、「おまえの言うことは絶対に認めない!」と、結果も出せないくせに強がる学生もいました。



そういうのは顧問をやって一年目のことで、僕も学生と接することに慣れていなかったので、少々ストレートな表現が多かったためですが、やはり、手続きと活動を混同しているのは「ごっこ」でしかないとの意見は、今も全く変わりません。


あまりに業界知識がないので、その業界が誕生した時の創業物語を紹介したら、ごっこ学生は…


「そんな対策、聞いたことがありません。それより、手っ取り早い受かり方を教えて下さい」と真顔でいいます。



人間的な基礎力を磨くのに、読書は有益な「活動」です。僕は相手が「活動」を求めているのだと思って嬉しかったので、とっておきの創業物語を紹介したのに…


「そんなものより」と一蹴されて驚き、しかもそれより「対策」を欲しがる学生を見て、改めてその「ごっこぶり」に興味を持ったのでした。


成長しないままの自分でいくら選考に臨んでも、絶対に受かるわけがないし、万が一、内定未遂事件を起こしても、絶対に通用するわけがないのに…。



「大学生って、不思議な人たちだ」と感じたのが、一年目の素朴な実感です。



もちろん、中には安田君や大月さん、牛尾さんのように、就活真っ最中でありながら、歴史書や経済思想の本、創業者の伝記を読み、就活中も取材活動に熱中し、自己の信念や理想を納得いく言葉で表現するのに妥協しない、骨太な学生もいました。


そういう学生は、面接が不安だとか、筆記がやばいなんてことは、一言も言いません。



活動に熱中している学生にとっては、手続きなど当たり前の通過点に過ぎず、そういうものが精神に影響を与えることはないのです。



だいたい、うまくいく学生は、就活中でもサークル活動やバイトに熱中し、いつも本気の自分で生きている学生です。つまり、全生活が自分の成長を導く「活動」の性質を持っている学生です。


うまくいかない人はこれと逆で、「シューカツだから」と友達との関わり合いを減らし、目先の手続きに膨大な時間を割き、疲れて忙しいという「プロセス」に過ぎない状態を味わっている自分を「頑張っているんだ」と錯覚する学生です。


…疲れて忙しいのは、能力が足りず、学習していないから、という原因もあるのに、疲れているだけで「頑張ってるね、私」なんて言っていては、忙しくなれば逃げ、友達が受かれば嫉妬し、最後は余計疲れるに決まっているではありませんか。



手続きにいくら熱中しても、自信なんて育ちません。そもそも、小手先の選考が不安だなんていう心理状態こそ、何も価値ある活動をしていない、という証拠です。


PCに向かって30社エントリーして、いい汗をかきますか?

ネットで会社概要を見て、感動の涙を流しますか?

筆記対策に熱中して、人生の奥深さを悟れますか?


そういう作業は確かに大事ですが、やはり、根本的な成長とは無縁というほかありません。


不安が完全に消えることはないでしょうが、それでもやっぱり希望の方が大きい。頑張ってきた学生さんなら、そういう実感で選考を迎えるものです。



ということで、3年生の皆さんは、


「活動」→自分を成長させるため、目標を持って行う継続的行動
「手続き」→自分の成長の結果を知らせるための集中的作業


と分け、どちらをいつからどの程度やるか、今からしっかり計画しておきましょうね。



「就活ごっこ」に陥らないように。

今日は4年ぶりの懐かしい話題をご紹介しました。



今日もお読みいただき、ありがとうございます。

ただ今、教育・学校部門96位、就職・アルバイト部門65位です。

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