学生さんがよく使う言葉なのに、その意味は人によってマチマチ…。
◆今日の一言
No.438(07/5/14)
『コミュニケーションとは、相手が言ったことより、言おうとしたことを理解することだ』
「私、コミュニケーション能力がないんです」
「社会人って、やっぱりコミュニケーションが大事なんですか?」
「コミュニケーションって、どうやったらうまくなれますか?」
…学生さんの質問を受け続けて5年目、その質問の変幻自在ぶりと前後関係のユニークさには、いつも驚かされるばかりです。
「この人は、自分が何を聞き、何を分かろうとしているか、理解できているのだろうか」と思うことさえあります。
こと、就活になると多くの学生さんが「コミュニケーション」という言葉に取り付かれたようにその有無や程度を気にし始め、この群集心理は一体何なんだろうか、という思いに駆られることもあります。
「コミュニケーション」とは?
「読み、書き、話し、聞くこと」。
…冗談じゃない。そんなのは、表面的な手段に過ぎません。
この、いかにも社会主義的な、目に見える動作だけを抽出して「コミュニケーション」と名付ける唯物論めいた発想には、正直嫌気が差します。
この国は、一体どこまで社会主義国なのかとため息がもれそうです。
ならば、うまく読み、書き、話し、聞くことができれば、全ての人間関係はうまくいくのか。誰もそうだとは答えないでしょう。
ならば、「読み、書き、話し、聞くことだ」という定義は間違っているわけです。
ということで、その4つの能力をいくら鍛えても、就活や仕事、学生生活におけるコミュニケーションの問題は解決されないわけです。
僕が記者時代から一番お世話になり、絶対にこれから恩返ししようと誓っている大阪出身のO谷さん(パイオニアマーケティング)は、先月のトップセールス研究会(毎週月曜夜開催)で、「コミュニケーション能力向上の秘訣」と題したミニプレゼンをして下さいました。
http://maiplacehp.web.fc2.com/sels.html
そのプレゼンの冒頭で、「コミュニケーションとは、目的ではなく手段です」という言葉がありました。参加された皆さんはよく覚えているでしょう。
つまり、「コミュニケーションを行うこと」が最終目標なのではなく、コミュニケーションによって目指すものこそが、本当に価値あることだ、ということです。
ならば、その「目指すもの」とは何なんでしょうか。
それは、「感じること」だと言えるでしょう。
言葉にならない相手の思い、言葉によって伝達、共有したい考え、言葉の奥底に窺える相手の悩みや夢を敏感、謙虚に察し、それを分かち合うこと、これこそが本当のコミュニケーションではないでしょうか。
つまり、本当のコミュニケーションとは、「相手が言ったこと」以上に、「言おうとしたこと」を共感・理解することだと言えます。
だからこそFUNでは、スピーチ塾でもリーダー塾でもビジネス塾でもマネー塾でも、表面的現象に幻惑されず、その奥底にある人間心理を洞察するため、会計や歴史、古典を学んでいるわけです。
普遍的で一貫した人間の悩みと喜びのルールを知り、少しでも自分を忘れて相手の心に迫ること。それが仕事の基本だからです。
そういう思いを僕が新たにしたのは、創業で苦労した時期に明治期の創業者の伝記を読んだこともさることながら、『観音経入門』(松原泰道/祥伝社NONブック)などを読んだことも大きなきっかけです。
「観音さま」と聞くと、田舎の道端のお地蔵さんや歴史教科書の史料集を思い出す方もいるかもしれません。
微笑をたたえた静かな表情でたたずんでいる、あの観音様です。
「観音」。
不思議な言葉です。
音とは通常「聞くもの」であって、「観る(みる)」ものではないからです。なのになぜ、「音を観る」のでしょうか。
例えば、生後間もない赤ちゃんは、1~2年は言葉を話すことができず、泣き声や笑い声、表情、動作によって無意識のうちに意思表示を行います。
それを見るお母さんは、「ちょっと、あんた!何が欲しいのよ!ちゃんと言葉で言いなさい!」とは言わないでしょう。そんな親がいれば、虐待マザーです。
お母さんは赤ちゃんの泣き声や表情を見て、「ああ、ミルクが欲しいのね」、「おむつを替えてほしいんだ」、「快適で気持ちいいのね」と赤ちゃんの心を察し、必要な処置を行うものです。
つまり、これが「音を観る」という行為です。
言葉にならない気持ちを察し、優しい心で真意を受け止め、相手が望む行動を取ってあげること、これこそ、コミュニケーションの大前提とはいえないでしょうか。
観音さまは、愚かで自分の位置が分からず、何でも自分の尺度で割り切ろうとして現実と理想の落差にもがき苦しむ人間のうめき声を察し、温かく救って下さるのだ…というのが、「観音経入門」の教えです。
僕はこれが、言語感覚が未成熟でコミュニケーションが苦手な若年フリーターと接する時に大事な心構えだな、と感じました。
「就職できるか、自信がないんです」
「私、何も長所がなくて、コンプレックスばかりなんです」
「僕はどうせダメなんです。商社なんて、目指さないほうがよかった」
そういう言葉の裏側にある気持ちを見抜き、相手がそうありたいと望む自分を見極めて、少しでも要望に叶う行動に移す…。再就職支援や採用コンサルティングとは、そういう仕事だと思ってやってきました。
僕は面接テクニックや筆記対策、四季報を用いた業種研究などは一切やらず、そんなものには何の価値も感じません。それよりも、経営者やお客様の悩みを察し、心を優しく見つめられる感性こそ、新卒や若手社員の大切な能力だと思います。
会計センスも営業テクニックも財務や広告の知識も、「感じる」というコミュニケーションの究極目標に対する理解と同意がなければ、冷たく表面的なサービスしか生み出せないでしょう。
だからこそFUNでも、考え方や感じ方を大事にしているわけです。テクニックや専門知識など、そういう感性と比べれば、ほとんど二次的、三次的な価値しかありません。
相手が言ったこと、書いたことを正確に理解することも大事です。
しかし、相手が本当に言おうとしたこと、他にも書きたかったこと、言い、書かずにはおれなかった深い部分の思いを汲み取ってあげてこそ、本当のコミュニケーションが成立するのではないでしょうか。
読み、書き、話し、聞くことに達者でも、優しい思いやりや深い配慮をなくしては、そういうのは上手なコミュニケーションとは言えません。
逆に、言葉がたどたどしくても、上がり症でも、緊張しやすくても、実務面で未熟でも、そんなのは経験を積めば解消されることであって、それよりも優しさや共感力のほうが大事です。
相手が言ったこと以上に、言おうとしたことを理解し、分かち合う。
これからは、「そうそう、それが言いたかったんです」と相手が喜ぶような、一歩先をゆくレベルの高いコミュニケーションを目指してはいかがでしょうか。
大月さんや前迫さんは、そういう接し方ができるからこそ、mai placeを起業して間もないのに、若者や企業の支持を集めるサービスができているのでしょう。
「就活、自信がないんです」という方は、『3日で差が付く就活講座』を体験されてみてはいかがでしょうか。
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深く優しく、知的で本質的な相談を経験してみると、今まで悩んできたことに秘められた価値が分かり、きっと静かな自信が生まれてきますよ。
今日もお読みいただき、ありがとうございます。
ただ今、教育・学校部門91位、就職・アルバイト部門55位です。
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