◆今日の一言
No.435(07/5/7)
『最も優れた学校は、達人のそばである』(ドイツのことわざ)





寝坊でFUNゼミを休んでしまったのは、FUN発足以来、初めてのことでした。


心配してくれた学生の皆さんに「大丈夫ですか?」と言われ、「そんなに驚くようなことじゃないんだけど…」と本当の理由を話すと、「ぷぷっ!」と笑われてしまいました。


それは、金曜に長崎から遊びに来た甥っ子たち3人と仮面ライダーショーに行き、一番上の子供(6歳・22kg)を肩車していた時に起こりました。



肩車は毎年の恒例行事で、この5年近く、毎年「砂場遊び」、「サッカー」、「虫取り」、「ブランコ」と併せていつもやっていますが、こと、肩車だけは、するたびに子供の成長に驚くばかり。


先週も「こんな重かったっけ?」と思いながら、足だけを持って子供をぶんぶん振り回して遊んでいると、いきなりバランスを崩して右後方に倒れかけ、その瞬間…


グキッ!


こともあろうに、僕の目に両手を突っ込まんばかりの力で頭にしがみつき、思いっきり首で支えたら、それから首筋が痛いのなんの。



二番目の子供(4歳)は、そんな僕の苦しみも知らず、「おじちゃーん、僕も、僕も!」とはしゃぐので、30分くらい肩車をし、2歳の姪っこは「だっこ、だっこ」としがみついてくるので抱っこしながら、クタクタになりました。


まさに、「動く米袋」。帰ったら余計首が痛くなり、3回風呂に入ってマッサージしましたが、翌朝はついに起きられませんでした。


まさか、こんなことでFUNゼミを休むとは思っていませんでしたが、とにかく、8時には間に合いませんでした。部員の皆さん、すみませんでした。新入部員や見学者がたくさん来たそうで、次回を楽しみにしています。



さて、弟が来るといつものように経営や人生論について語り合うのですが、最近は子育てについての話題も増えました。もっとも、独身の僕は聞き役に徹してばかりで、未経験の分野だけに新鮮な発見が面白いです。


弟夫婦が子育てで大事にしているのは、


①子供の頃から本物だけを見せ、我を忘れるほどの感動を与えること
②何かの達人のそばに置き、作業をじっくり観察させること
③感想を精一杯の笑顔でほめまくること


だそうです。



これは、FUNではよく話している「ドイツの靴職人」の育て方と同じです。


徒弟制度が発達したドイツでは、小さい子供を職人の工房に連れて行き、終日、その技を見学させるそうです。


そうして達人の妙技を体感した子供は、10歳を超えた頃には、靴を見るとどれが本物であるか、どこがどうすごいかが分かるようになるといいます。


達人の側で本物に触れることで、作品の真贋や職人の心意気の程度を判定できるようになる、というわけです。



子供は成長するにつれて、俗悪なものや低レベルな遊びにも惹かれていくものですが、幼い頃に本物のすごさを味わっておけば、言葉では説明できなくても、退屈なもの、つまらないものを自ら拒否、断絶するセンスが身に付くし、これは良い教育だと思います。


一人の時間を一人で楽しめず、暇になるとカネを使わないと時間を消費できない青年も多くいますが、こういう人たちは幼い頃に本物に触れる機会を持たなかったのかもしれません。


人は孤独の中で集中せねば、何事もまともに身に付けることはできないので、「放っておいても、まだやってる」と親が呆れるほど夢中になれることを提示してあげるのは、幼児教育では大切なことだと思います。



「良い教育とは、幸せな子供を育てることではなく、どんな境遇に置かれても自らの力で幸せになれる子供を育てることです」という言葉もあります。


素晴らしい考え方だとは思いませんか?これは、美智子皇后陛下のお言葉です。


孤独に強くなり、人を思いやれる優しさを手に入れれば、子供はいつどこで何を経験しても、人を恨まず、強く逞しく育っていくのだと感じます。


うぅ…結婚したい。




この「達人の側で受ける人生最高の教育」を大学で実現できないだろうかと、2003年が始まった頃に、当時法学部3年生だった安田君と練り上げた案が、「企業取材」と「雑誌編集」でした。


内定も決まり、あとは自分の作業をやって卒業するだけ…


なんて平凡な終わり方は嫌だ。俺は自分が得た以上の知識と感動を得られる学習環境を大学に残して去りたい。そのために、新しいサークルを作りたい!



そういう安田君の情熱に打たれ、ならばこれはどうかと、僕が前職で経験してきた企業取材と雑誌発刊を中核的活動とするサークルを作ろう、ということになったわけでした。


感動を茶化し、借り物の話題で空しく時間を消化する多くの学生たち。チャンスを否定し、「ありえねぇ~」とひやかしながら、本当は堕落した自分を認め切れなくて悔しいはずの学生たち。


頑張ってレポートを仕上げても教授からは何のコメントもなく、いつしか流れ作業で勉強を進めることが「学問」だと錯覚した学生たち。



そういう大学に、本気で感動を発信し、受け止め、心の底から発する言葉で語り合い、過去や未来ではなく「夢で自己表現」ができるサークルを作ろう!


安田君はたった一人で3,000枚のビラを配り、23人も集めて、2003年5月16日、「企業取材サークルFUN」が誕生しました。もうすぐ、あれから4年がたちます。


取材数は500社に迫り、雑誌は通巻43号、投じた印刷代は4年で400万円を超えました。たった一人の熱意が全国数百人の学生に感動を届けるサークルになったのですから、本当に偉大な達成だと感動します。



「本気になれば、どうでもいいことは気にならなくなる」というのは本当で、企業取材で現場の最前線で活躍する経営者や社会人の話を聞いてきた学生たちは、目の色が変わりました。


なにせ、実際に自分で挑戦して結果を出している人生の大先輩から、「君ならできる!今なら間に合う!」とオーダーメードの言葉を授かるわけですから、燃えないわけがありません。


それまでは「バイトが…」とか「習い事が…」としぶっていた学生が、意を決して本を買い、誰に強制されなくても、単位が出なくても、就職に役立つかどうか分からなくても、「この感動を裏切りたくない」と努力し始めるのですから、「達人のそば」の効果は絶大でした。



偉大な成果は、みみっちい功利主義を排した時に生まれます。


取材記事を収録した掲載号に色紙を添えて届け、「ありがとう!社長室に飾っておくよ!何かあったら、すぐ私のところに来なさい」と言われた学生は、それこそ天下を取ったような自信満々の表情になります。


同時に、「今まで私は、何をしていたのか」と感じます。



「こんな自分が、人を感動させてしまうなんて」。


それまでは、自分が得をしたい、自分が幸せになりたい、自分が感動したいと器の小さいエゴの塊だった若者が、人のために尽くし、人を応援し、人に感動を届けることを将来設計の基盤に据えるようになっていきます。


未来に対する根本的な見方が変わり、働くことの意義や楽しさが一変すると、就職や就職活動に対する意欲や位置付けも一変します。



FUNでは小手先の就職対策は一切行わず、経営者や創業者の発想を学び、働く楽しさ、仕事の素晴らしさ、儲ける楽しさ、人を応援する素晴らしさだけを徹底反復して体験できるようにしています。


そういう心構えにならなければ、書類対策や面接対策をいくらやっても何の意味もないからです。


ひとたび触れた達人の心意気は、そうして、何ヶ月も若者の心の底に残り、いつも背中を押してくれる心強い同伴者になるわけです。



大事なことは、いつも後からじわじわとその意味が分かってくることが多いものです。



就活を迎え、選考が進むたびに「私の大学生活は、一体何だったのか」と悔やむのは二重に疲れますが、「あの時学んだことは、こういう意味だったのか」と再度、三度と感謝できるようになれば、その経験は未来にわたってその人を支えていきます。


FUNで就活を終えた4年生が、仲間や後輩の応援に自分の時以上の喜びを感じ、面接が楽しみでたまらなくなるのも、自分のやってきた学びに確信が深まっていくからではないでしょうか。



「就活で一番嬉しいことは?」と聞かれたら、FUNの4年生なら迷わず、


「それは、友達の内定です」と答えるでしょう。


理由は、自分のために頑張るよりも、人のために頑張るほうが人は成長でき、感謝されることが喜びと生きがいにつながるからです。



別に取材だけがそういう感動を得る手段ではありませんが、若いうちは本質的な感動に何度触れるかが将来の全てを決定しますから、スポーツ、芸術、アルバイトなどで、身近な達人を見つけ、なんとかして一緒にいる時間を確保し、成長につなげていきたいものです。


それまでは「人のマネはしたくない」とか言っていた人も、達人の側にいると、マネすらできない自分の能力の低さを反省して、「マネからでも始めたい」と思うようになります。


自然に振舞う仕事振りの中に一貫して流れる哲学を見抜けば、達人の心構えに興味を持つようになって、学びが止まらなくなります。



そうして一つのことに没頭していると、まさに「一芸は万芸に通ず」で、あらゆる物事の本質が深いところでつながっていることに気付くようになるものです。


就活でどの会社も学生に「学生時代に熱中したこと」を聞くのは、どういう素材を選んで自己成長、自己確認、自己反省を行ってきたか、またその程度はどれくらいであるかを聞いているわけです。


大事なのは、それが「どれだけ志望業界と関係があるか」ではなく、「どれだけ本気でやったか」なので、そこを取り違えないようにしないといけません。



内定した4年生の皆さん、これから身近な後輩のために「達人」となって、自分が得た経験や知識を還元していきましょう。


また、社会に出れば親ほども年が離れた人と一緒に働く中で、きっと一生ついていきたい達人に出会うことでしょう。


学校は卒業するかもしれませんが、自分の創意工夫次第で、人生最高の学校は、いつでもどこでも通うことができますよ。




今日もお読みいただき、ありがとうございます。

ただ今、教育・学校部門58位、就職・アルバイト部門35位です。

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