◆今日の一言
No.423(07/4/11)

『働かざる者、食うべからず』(レーニン)





夜、東京の「オンブック」さん(お世話になっている出版社)から添削済み原稿が届き、「さて、残りの校正を頑張るぞ!」と思ってPCを立ち上げると…。

兵庫県の大学に通うXさん(中国からの留学生)から、本メルマガに対してご感想をいただきました。

経路を伺うと、読者というよりは、お友達の紹介で本メルマガを転送してもらって何通か読み、内容に興味を持ったので、直接執筆者の僕にメールを送った、とのこと。


どうも、わざわざご丁寧にありがとうございます。

メールによると、「世界最高の技術、教育水準を誇る日本の企業で働きたいと留学したものの、日本の大学生があまりにやる気がなく、どうしても、世界最先端を行く日本企業と学生の姿が結びつかない」というお悩みをお持ちのようです。

そんな中、友達の紹介で『内定への一言』を読んでみると、今まで日本人に対して抱いてきた疑問がスラスラ解けてきた…。



そこで、この機会に執筆者の僕にお礼を兼ねて質問を送り、少しでもいいから答えてほしい…ということです。

いいですよ!読者の方からの質問はとても嬉しいので、今日はこれについて書きましょう。

まずは、ご質問にお答えします。



■「小島先生は、日本人ですか?」

⇒「小島さん」でいいですよ(老師も可?)。僕は純粋な日本人です。


■「どこでメールマガジンの内容を勉強してきましたか?」

⇒若くして赴任した東南アジア、30回旅したアジア、および経営者相手の法人営業&企業取材です。


■「日本の学生はどうして一番勉強できる大学で勉強しないですか?」

⇒日本人にとっての大学とは、「建物付き就職保険」だからです。つまり、勉強するより、満額払い終えて卒業証書をもらうことが大事、ということです。

■「小島先生は一般的な日本人と考え方が違うようですが、なぜそうなったですか?」

⇒「一般的な日本人」というのがどういう人々かは分かりませんが、僕は周りの日本人こそ「変な人たちだなぁ」と思ってます…。実は、これは長年の悩みの種でした。今では群集心理観察・分析は楽しみの一つですけどね。



Xさん、僕は大学2年の時に中退し、日本でいう大学3年生の夏には、馬来西亜の吉隆坡にある小さな貿易会社で働いていました。

そこは生活費が日本の「4分の1」だったので、僕は20歳のくせに「プール・駐車場付き」で首都を見渡せる高台の高層マンションの17階に住み、リッチな生活を楽しみながら、毎月どんどん貯金しました。

そして、帰国の途上ではシンガポール、タイ、フィリピン、韓国を8ヶ月旅行し、僕が関心を持っていた「経済制度と教育の関係」について、マレー語、英語、韓国語を駆使して「取材旅行」を行ってきました。

そして、22歳の時に帰国し、23歳からは経済雑誌の記者として、地場企業の経営者相手に取材・営業活動を続け、それから26歳の時に起業し、今に至ります。



ということで、僕はまともな高等教育は受けていません。最終学歴は「天草自動車学校」です。海外勤務、アジア旅行、経済誌が僕の大学でした。

初の社会人生活が「海外」だったため、僕も帰国当初は、自分が外国人みたいな気分に何度も襲われたものです。


次に勤めた会社は創業5ヶ月のベンチャー出版社だったため、「研修」なんて親切なものはありませんでした。

面接の翌日から「じゃ、今日から営業ね」と法人営業に行き、以来今まで2,000社以上を営業で回り、600社以上を取材してきました。

会った人がほとんど経営者だっただけに、かなり感化され、ますます「サラリーマン」とは意見が合わなくなりました。

それから独立し、人様の「就職」をお世話する仕事を始めて、縁あって大学生のサークルをお手伝いすることになり、そこで大学生の職業観に触れる中で、ふたたび「異文化交流」のような驚きを感じました。


なぜかというと、日本の若者が口にする「仕事」、「就職」、「お金」に関する意見は、その大半が、立派な「社会主義」に立脚する意見だったからです。

本人たちは意識していないし、学習した覚えもないでしょうが、日本の学校教育では多分に社会主義的価値観を注入されるので、無意識のうちにそうなるのでしょう。

僕は授業中は寝てばかりで、教科書さえ忘れていたため、はからずも、その影響を免れることができたのかもしれません。

僕は20歳で発展著しいマレーシアに赴任し、そこで世界各国のビジネスマンと出会う機会を得たので、こういう価値観のギャップにも気付きやすい素地が形成されたのでは、と今になって思います。


Xさんのお国は、タテマエ(外面的ポーズ)としては「共産主義」を表明していますから、中国の義務教育がどういうものかは知りませんが、その理論の基礎くらいは学ばれたかもしれません。

しかし、以下の内容を知ると、Xさんの国よりも、日本の方がよっぽど共産主義的な国だと感じることでしょう。


試しに、日本人の友達に会ったら、「働かざる者、食うべからず」という言葉を知っているかどうか、聞いてみて下さい。ほぼ全員が知っていると思います。

次に、「では、それをどう思いますか?」と聞いてみて下さい。ほぼ全員が「そうだと思う」と答えるでしょう。

さて次には、「では、働くとはどういうことですか?」と聞いてみて下さい。「額に汗して」とか「体を使って」という意味の答えが多いと思います。


ほとんどの日本の若者にとって、「働く」とは、「体を動かすこと」を意味します。涼しいオフィスでじっと考え事に耽り、雇用を生み出すようなビジネスを作る働き方は「働く」ではなく、「体を動かし、汗を流す」ことが大事です。

「働かざる者、食うべからず」
「血と汗と涙」
「体が資本」

…聞き覚えはありませんか?これらは全て、レーニンの言葉であるということを。



次に「お金」についても質問してみると面白いですよ。試しに、「税金が足りなくなったら、お金持ちからたくさん取るべきだと思いますか?」と聞いてみて下さい。

ほぼ全員が、どれくらい考えたのかは別として、「そう思う」と答えるでしょう。「金持ちは、悪いことをしないとなれないと思いますか?」と聞いてみると、半分くらいが「そう思う」と答えるでしょう。

ここにも、「資本家が労働者を搾取する」とか、「資本家の富を奪還して人民に平等に分配せよ」というレーニンの言葉が見え隠れしています。


また、「収入」や「福祉」についても聞いてみて下さい。「人は能力に応じて働き、必要に応じて受け取るべきだと思いますか?」と聞いてみると、「それはそうだ」と答える学生が多いでしょう。

資本主義なら「必要に応じて働き、能力に応じて受け取る」となるはずですが、共産主義の教祖・マルクスは、『ゴータ綱領批判』の中で、「人は能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」と理想社会を描いています。

「努力はあまりしなくてよい。受け取るものは遠慮しない」という有名な思想ですよね。まるで現実を無視した原始人のような思想ですが、これをそのまま福祉政策に反映させ、財政事情がおかしくなったのがわが日本です。


最後に、「給料を払ってくれるのは、誰ですか?」と聞いてみるのもいいでしょう。おそらく大半の学生は、「会社」と答えます。

冗談じゃない。給料を払ってくれるのは「お客様」で、会社は一時的に収益を預かり、それを分配する組織に過ぎません。

なのに、日本の労働者の多くは、会社に「給料上げろ!」と集団で要求すると、本当に給料が上がると思っています。それは、正しくは「インフレ」と言うのですが、大半の労働者はその仕組みも知りません。


さて、わが国では、春になると日本名物の「春闘」というイベントをやっています。

今どき「給料を払ってくれるのは会社だ」なんていう骨董品のような考えを持った人たちは、中国でもお目にかかれないと思うので、ぜひ記念写真を撮ることをオススメします。

働けばそれ以上稼げる時間を放棄して、昼間から「給料上げろ~!」とやっていて、年間数千円上がったくらいで「勝利」とか言っているんですから、夜のバラエティ番組よりよっぽど面白いですよ。

Xさんの国で「給料を払ってくれるのは?」と聞くと、「実力」、「人脈」、「知識」という答えが返ってくるかもしれませんね。あるいは「共産党の友達」、「賄賂」、「コネ」、「学歴」となるかもしれませんが…。


しかも、極めつけは、これはぜひ「日中比較文化論」のテーマにもしてほしいんですが、わが国の大半の人々は、学校で教わった通りに「人間は平等である」と思っている、ということです。

理想としては素晴らしい考えですが、現実の世の中、差がない分野を探す方が難しいくらいです。

レーニンは『国家と革命』の中で、「人間は平等ではない」と書いています。


だからこそ、幼い頃から繰り返し繰り返し「人間は平等だ」という観念を植え付けていくわけです。

そうすれば、大人になるに従って「おかしい!世の中は平等なはずなのに!」と怒りが生じ、その矛先を「政府」に向けて、待望の「革命」が起きる…という思想ですよね。

そうすれば、多くの国民に「私は弱者」という自己認識が生まれ、同一の政策に賛同しやすくなる、ということです。


「私は弱者」という人が多くなったら、どうなるでしょうか?

Xさんの国では「選挙」の経験が歴史上存在せず、今もって「一党独裁」の政治をやっていますが、民主主義のわが国では、「多数派=権力者」、つまり「強者」となります。

「オレ、弱者!」、「私も!」、「オラも!」、「わしも!」…と、続々と弱者が集まって「選挙権」を行使すれば、それはもう、立派な「強者」です。

強者とは、社会変革に影響を与えうる立場にある人たちを言うのですから、一人一人が「弱者」でも、集団化すれば「強者」となるという発想もまた、レーニン直伝と言えるでしょう。


わが日本の「本当の弱者」は、「金持ち」です。頑張って起業し、多くの人々の雇用を創造して、多くの税金を納め、資源も武器もない日本を世界の一等国にしたのは、多分に経済人の貢献によります。

なのに、経済人や起業家、お金持ちは、いくら頑張っても「悪いことしてるはず」、「ケチ」、「欲の権化」といった偏見でいじめられます。

のみならず、不況で倒産すると個人財産ごと差し押さえられ、財産を相続すると「財産没収税」に近い「相続税」が課税され、儲かると真っ先に税金を引き上げられ、まったく、おかしな社会です。


「自称・弱者」の強者ほど手に負えない人はいませんよ、ほんと。

この人たちは基本的な経済観念が確立しておらず、会計の初歩も分からないため、候補者が「年金を充実させます!」、「福祉を充実させます!」、「故郷を発展させます!」と言えば、本当にそうなると信じています。

ということで、「皆さんに与えます!」という候補者が全国で当選し、全国に税金をばらまいた結果…。

日本政府は記録的な借金を抱えてしまいました。


面白いでしょ?こんなに国民一丸となって国家的パロディを演じている国が、他にあるでしょうか?「社会主義市場経済」と言っているアジアのどこかの大国と同じくらい、奇妙ですよね。

僕は学生時代に相当する約2年を海外で過ごし、働きながら勉強したため、「オレの国はどこか変だぞ」と思い続けてきました。

その「変なところ」を解決すべく、コミュニケーションやマネーセンス、時間管理、リーダーシップなどの分野であれこれ考え、人間性と経済合理性に基づいて体系化し、それを会社の商品として提供してきました。


それはまぁ…ヒットしたと言えるでしょう。

現在お手伝いしているサークル・FUNでも、日本の伝統精神と人間性、経済合理性のバランスは等しく考えているところです。

相手が学生なので教えられる範囲も限られていますが、「日本に生まれてよかった」、「この社会に幸せを届けたい」という気持ちで社会に出てくれれば、顧問としての役割も一応果たしたことになるのでは、と考えています。



ということで、僕のメルマガが奇妙な構成で、多くの学生さん、今では社会人の方からも「むかつきながらも、一理ある」ということでお読みいただいているのは、そういう僕の独自の経歴や研究のためだと思っています。

しかしまぁ、今のような教育や職業観では、若者があまりにかわいそうなので、僕も仕事の合間になんとか「働く楽しさ」、「儲かる働き方」、「楽しい働き方」を教えていたら、こんなに大きなサークルになってしまったんです…。

「日本は社会主義で、中国は資本主義」。お互い、仮面をかぶっていて面白いですね。


Xさん、ご質問とご意見、どうもありがとうございました。



今日もお読みいただき、ありがとうございます。

ただ今、教育・学校部門29位、就職・アルバイト部門18位です。

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