◆今日の一言
No.412(07/3/24)

『役に立たない社員がいるなんて言う社長は、バカ社長だ』(本田宗一郎)





昨日はお昼から西南法3・Kさんの「信託銀行」の企業研究を一緒に行い、夕方から西南を卒業したM君のお友達の相談に乗り、夜からは大濠ミスドで西南経済3年・MさんとTさんとお話しました。

相談を終えて改めて気付いたのですが、僕にはやっぱり、かわいい学生さんたちの就活をさしおいて「執筆」に専念するなんてできません…。

ということで、「下巻」の執筆はちょっと延ばし、しばらくは学生さんたちの相談に本腰を入れることに決めました。



この間、内定報告や就活の近況報告、勤務先への引越し報告などのメールを下さった皆さん、週末には返事を書きますので、しばらくお待ち下さいね。


さて、今日は久しぶりに「ああ、あの手の話か」という話を聞きました。

それは、「大量内定」です。

内定の中には、真剣に会社を選び、過敏な精神状態で連絡を待ち、ちょっとした電話やメールにも細心の注意を払う時期の学生さんに、「肩透かし」のようなタイミングで訪れるものもあります。

もらってしばらくは「精神安定剤」のような役割を果たすのかもしれませんが、大事なのは学生が「本気を出し切った」と自覚しているのを見定めて結果を知らせることでしょう。


いくら「内定は通過点だ」と言っても、就活中の学生にとっては、やはり内定がもらえるかもらえないかは重大な関心事であり、話を発展させるためにも、まずは学生の視点に合わせて考える必要があります。

いくら業界や企業選びに迷っている学生とはいえ、「え?これで内定?」と思うような内定をもらっては、かえって迷いや当惑が深まるだけではないでしょうか。

不採用通知も内定通知も、相手の努力と熱意への正当な評価として、礼儀を添えて提出する必要があります。いくら自分が「採用する側」で、相手が年下だといっても、そういうところを粗雑にしていいものでしょうか。


企業の中には、毎年退職者が多く、内定辞退も多いため、そういう状態を見越して他社より先に選考を開始し、早めに「内定キャンペーン」を行うところもあります。

「早く内定を出せば安心し、他の業界の魅力を知る前に就活をやめてくれるだろう」という期待から行う、自信のない選考姿勢です。

本当に自社の業務やビジョン、勤務条件や待遇に自信がある会社なら、「たくさんの会社を見て、うちがいいと思ったらぜひ一緒に働こう」と言うものです。


もちろん、中には「内定さえもらえればいい」と考え、企業のこのような狙いに自ら喜んではまる学生もいますが、そういう人はいずれ自己の浅い思考を悔やむもの。

大半の学生は、結果以前に、自分を大切に見てほしいはずです。いくら未熟であれ、粗末な選考で返事を出されては、誰だっていい気はしないでしょう。

たとえその返事が不採用だったとしても、「私はこれが足りないんだ」と深いところで反省させてくれる返事なら、それはそれで有り難く、後々振り返ってみれば貴重な経験として感謝できるものです。


今日驚いたのは、「辞退させていただきます」と伝えた途端に相手の態度が変わり、無愛想な口調で責められてびっくりした、というものでした。

自社の選考を受けてもらい、最後まで自社が定めた基準をクリアしているかを見極め、「内定」という返事を伝えて、辞退された…。

このプロセスのどこに、「学生を責める理由」があるのでしょうか。辞退されたのは、純粋に自社の魅力不足が原因です。ならば、責められるべきは自社の業務内容か選考方法でなければなりません。



「告白して、ふられた途端に相手の悪口を言い始める」ような人に会うと、誰だって腹が立つでしょう。

「内定」をもらったのは、「仲間になれる資格がある」と認められたことではありますが、それで「入社」ではなく、入るかどうかは学生に決定権があります。

不採用だから、今後の就活のためにアドバイスを行うのは、チャンス喪失の悔しさはさておき、まだ理屈が分かるとしても、内定を出して断られた瞬間に態度が豹変するというのは、大人気ない行為と言わねばなりません。


本当に好きな相手に振り向いてもらえるよう、さらなる努力を自己に課すか、あるいは諦めて相手の幸せを祈るか。

それが常識的な対応ではないでしょうか。



僕は、最近でこそ求職者寄りのスタンスを取っていますが、以前は法人営業一点張りで、実務重視型の価値観を持っていました。

しかし、会社の中における「退職トラブル」の原因は、ほとんどが「上司」にあります。


これは何も、学生を弁護しているわけではありません。無能で無気力な社員がいるのは、これとは別に深刻な問題です。しかし、採用側もあまりに若者心理の研究が不足しているというのが僕の実感です。



「部下は一週間で上司を知るが、上司は一年かかっても部下を知らない」とは言い古された言葉で、真実を突いています。

だからこそ、上に立つ者ほど腰を低くし、進んで部下の中に飛び込み、視点や前提を合わせて、よく話を聞き、要望や悩みを記憶せねばなりません。

たとえ年や経験の差から全部は共感できなくても、部下や新人は、上司のそのような姿勢そのものが嬉しく、自分を伝えようと張り切るものです。

お互いに「何かを分かったつもり」の組織より、共有しているものが少なくても、「分かり合おう」とお互いに協力、調和しあう努力ができる組織の方が伸びるのは当然のことです。


採用や育成、配置における企業側の問題点は、来月に全国で発刊される僕の初の自著の「序章」で触れていますから、よかったらお読み下さい。

■タイトル 若者が燃えた 仕事の「とらえ方」(仮)
■出版社 (株)オンブック(デジタルメディア研究所)
■価格 \1,890
■発売 2007年4月中旬
■全国の書店およびamazon.com、bk1で販売

です。



※先行予約は
mixture-unison@docomo.ne.jp
(福岡女子大4年・築地まで)



採用を決めたなら、その人が通用するまでの責任は、9割が企業側にあります。

「やる気がある若者が欲しい」なんて言う人事担当者もいますが、採用した後に「うちの社員はやる気がない」などと言う人事担当者を見たら、僕は遠慮せず、「自分の人望のなさを恥じろ」と忠告することにしています。


「イマドキの若者だからやる気がないんじゃなくて、あんたの部下だからやる気がないんだ。若者がぶすくれていたら、自分がナメられているかバカにされているか、くらいに覚悟した方がいい」ということです。


「採用した」ということは、意欲なり資質が自社の業務を遂行する上で不足なし、と判定したということでしょう。一旦採用すれば、やる気の有無を社員のせいにするのは、おかしいのではないでしょうか。


もちろん、社員の側にも、自分の実力や知識不足を補うための、自発的な努力が応分に求められるのは当然です。

しかし、やる気が発揮され、持続されるような環境なり威厳を整えるのは、純粋に会社の責任でしょう。とりわけ、まだ何の経験も知識もなく、世間の右左も分からない新卒社員に責任を転嫁するのは、奇妙な論理といわねばなりません。


僕も採用する側の人間で、仕事のかたわら、学生サークルをお手伝いするという立場も持っています。

僕は運営や入退部には何の口出しもせず、運営会議にすら参加していませんが、もちろん、この時期になれば、「元気な学生さんがたくさん入部するといいな」くらいのことは思います。

しかし、自分は何の努力もせず、学生の側にだけ「やる気」を求めるなら、顧問失格です。


僕がFUNの応援でいつも考えているのは、当人の意欲の状態がどうであれ、FUNを訪れる学生は必ず成長や逆転、悪習慣の脱却、将来的な資産確保を求めて来るわけですから、それが不安や恐怖、心配に立脚したものであれ、全ての動機を「立派な意欲」として認めるということです。

一通のメールを送るのは、大変な勇気が必要だったことでしょう。また、一冊の小冊子から問合せを行うまでの間に、一体どれだけの体験を回想し、どれだけの可能性を比較検討し、迷ったことか。

初めて見学に来て、すんなり溶け込む学生さんもいますが、緊張している学生さんもいます。しかし、それらは全て、偉大なる前進の証です。



「やる気」とは、何も陽的で口数が多く、笑顔に満ち溢れている、という分かりやすいものばかりではありません。

こわばった表情で、声も小さく、右往左往していても、それもそれでその学生さんには貴重なやる気なのです。

そういう「声なき声」ならぬ「やる気に見えないやる気」を優しく見抜いて反応するのも、サークルとしては大切な姿勢ではないでしょうか。


ですから、僕は顧問として応援する時は、「誰がどのような状態で訪れても、心の底からやる気が溢れる環境作りをお手伝いする」という姿勢を何より優先しています。

「やる気がある学生」は、それはそれで嬉しいですが、やる気を失っていた学生さんが再び目を輝かせ、「入ってよかった」、「メールを送ってよかった」と言ってくれるのは、もっともっと嬉しいことです。


「小島さんと話すと、元気になった」と言われるのは有り難いですが、それは「当たり前」です。

なぜなら、「元気になるまで帰さない」からです。なんと簡単なトリックなのでしょう…我ながら。

学歴と教育がない僕は、こういう素朴なアイデアしか持っていませんが、案外これでうまくいっています。

FUNが全国紙で紹介され、書籍や雑誌を通じて有名になっても、顧問としてのこの姿勢を変えるつもりは一切ありません。


本当にいい会社は、どんな人でも育ちます。

自分が使いやすい人、気に入った人、言わなくても頑張ってくれる人とだけ働くのは簡単で、そういう上司は怠け者です。

また、「あの人が動いてくれない」、「みんな、分かってくれない」などと会議でこぼす上司がいたら、即刻解雇の無能上司と言わねばなりません。


他人に「動いてくれない」とこぼす時間があるくらいヒマであるからには、きっと、自分が全然動いていないんでしょう。

本当に動いている人の周りでは、仲間がそれ以上に動き、リーダーは感謝でいっぱいになるはずです。

人が動かない、分かってくれない、助けてくれない…という問題は、全て「自分の日頃の行い」が鏡に映ったものだと解釈し、自らの怠慢と配慮不足を戒めて、あるべき場所からスタートすればよいのです。


本田宗一郎さんは、「役に立たない社員がいるなんて言う社長は、バカ社長だ」と言いましたが、まさにその通りだと感じます。

採用しておいて「役に立たない」とは、要するに、「役立てられるビジョンや計画を持っていない」ということの証明であり、それは純粋に経営陣の怠慢です。

「自己管理できる上司に、部下の管理は不要である」という石坂泰三さんの言葉をずいぶん前に紹介しましたが、それと一脈通じる思想を含んだ言葉ですよね。


人を動かしたければ、人を動かす必要はありません。

『リーダー塾』でも説明したように、ただ、自らが「言行一致の人間」になるだけでいいのです。そうすれば、周囲の人は黙っていてもついてくるし、期待以上の動きを見せてくれるもの。

周囲がそうならないうちは、「自分はまだ、口だけ人間なんだ」と反省し、強固な意志で自己管理を行うのが、リーダーとしてのあるべき姿です。


「口先で多くの人を動かそうとする」のと、「自分一人だけを動かそうとする」のでは、どちらが簡単なのか?

偏差値が「25」くらいあれば誰でも分かりそうなくらい簡単な問いなのに、この問いに対する答えを間違って、無用のストレスと報われない努力に熱中し、資源を垂れ流す組織のなんと多いことか。

僕は、そういう「勘違い人事」に会うたび、あまりの頭の悪さと目のつけどころのずれっぷりに、社員がかわいそうにさえ思えてきます。



そこまでして「余計な苦労」を背負いたくなる心理が、僕には理解できません。たぶん、「自分はリーダーらしい苦労をしている」と思いたがるマゾ体質なんでしょうね。

ほんと、こんなリーダーはただのお人好しか社会主義者です。

皆さんも、面接の最後に「何か質問は?」と聞かれたら、「○○さんが採用された社員の中で番成長した方は、どのような方ですか?」とか、「○○さんが採用された社員の中で、トップ営業マンはどれくらいいますか?」とでも聞いてみればいいでしょう。


それで答えに詰まったり、変な言い逃れをしたり、部下や同僚を責めたり、言い訳をしたりしたら、「マニュアル面接はやめましょう」とでも忠告して、こっちから辞退してやればいいだけのことです。

皆さんには、確かに経験や知識はそれほどないでしょうが、だからといって、自分を安売りする必要はありません。

皆さんは「会社」という時間運用商品を買い、自分の人生の最も貴重な時期の運用決定を行う「時間の投資家」でもあるわけですから、学生らしい素直な選別眼で、シビアに相手を選んで一向に構わないのです。


この時期は、自分の方が選ばれる立場であるため、年上の社会人から言われたことは、全て「正しい」、つまり「自分の方が間違っている」と考えて、余計な不安や劣等感にとらわれることもあるでしょうが、常識的に考えておかしいことなら、年が若いからと譲る必要はありません。

若者には、若者らしい堂々とした姿勢があります。

面接とは、自分を引っ込める場ではありません。虚飾や見栄で飾るのもダメですが、卑屈になる必要もありません。

言葉にすれば簡単ですが、選考結果を意識しないくらいの「自然体」で、素直に自己の信念を披露すれば大丈夫です。


昨日、僕やFUNの部員が大好きな作家・城山三郎さんが亡くなりました。本名である「杉浦英一」の名は、城山さんのお父さんが尊敬してやまなかった渋沢栄一にあやかって付けた名前だそうです。

その城山さんの代表作である『雄気堂々』(新潮文庫)は、渋沢栄一の半生を描いた壮大な物語であり、渋沢栄一が自己の未熟さを克服し、堂々と上の身分や地位の人とわたりあって豪快、柔軟に人生を切り開いていく姿が描かれています。

組織作りの天才・渋沢栄一の半生を「就活における成功シミュレーション」のモデルとして読むのも、また最高の対策の一つでしょう。

「世の中に、役に立たない人はいない」という事実が心の底から理解でき、嬉しくなってきますよ。


今日もお読みいただき、ありがとうございます。

ただ今、教育・学校部門41位、就職・アルバイト部門22位です。

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