■「内定への一言」バックナンバー編
『友を選ばば書を読みて六分の侠気四分の熱』(与謝野鉄幹)
昨夜配信のメルマガがお気に召さなかったのか、無記名で6人の方から「登録解除」メールが。過去最多です。
「小島さんの考えは間違っています。日本は永久に謝罪を続けないといけません。それだけの過ちを犯しています。」…無記名だけに勇ましいですね。
「昨日のメールだけは賛同できませんでした。今までお世話になりました」…他にも賛同できないのがあったんでしょうか。なら早く言ってほしいものです。
「気持ちは分かりますが、賛成しかねる内容でした。長い間、配信ありがとうございました」…別に賛成しなくていいんですけどね。僕は考えるきっかけを提供しているに過ぎません。
うぅ…毎日頑張って書いてるのに、かわいそうな僕。しくしく。実名を公表して書いている僕の意見を言わせてもらうと…。「文句言うなら、名前書け」。ハンドルネームとか子供じみたコミュニケーションに慣れると、ロクなことはありませんね。やれやれ…。
僕は別に、学生の機嫌を取ろうなんて考えは全くありません。それより、葛藤が起こるくらいの問題を提起するのが本当の情報だと思うし、学生はそのような複雑さに耐えて思考を鍛えるべきだと思います。
パッケージ化された便利な「幕の内情報」を求めているなら、最初からこんなメルマガは読まないことですね。頭脳レベルに合わせて「みんなの就活日記」でも読んで、オドオドしておけばよいでしょう。
ザコにはザコにふさわしい、「便所の落書き」のような情報だって大量にある時代です。学生が自己責任で考え、導き出した結論が本当の判断であり、情報なんですから。
過ち?過ちとは何を言うんでしょうか。戦争に突入したことでしょうか。あるいは、無様な敗戦を喫したことでしょうか。
もちろん、その中には数え切れない要因があり、「自伝的日本海軍始末記」(高木惣吉/光人社)などを読むと、祖国と海軍を愛してやまない著者が、心を込めて軍隊を批判している「涙の提言」に反省を禁じえなくなります。
山本七平さんのデビュー作「一下級将校の見た帝国陸軍」(朝日新聞社)を読めば、末端の兵士の苦悩と司令部のすれ違いに腹が立ち、同時に祖父たちの苦闘に頭が下がる思いになります。
しかし、そのような反省、失敗、苦悩はなぜ生じたのかを考えると、それはひとえに「未来の日本のため」であることに気付かざるをえないのです。
だから、僕はマスコミが垂れ流す紋切り型のフレーズに影響を受け、「日本はアジアに迷惑をかけた国だから嫌いだ」というのは、浅すぎる無責任な認識だと思います。
戦争をした、不景気だ、家族が崩壊している、年金がもらえない、治安が悪化した、格差が開いてきた…。
確かに問題は山積しています。だからこそ、本当の日本人なら国を愛し、欠点の克服や伝統の回復のために奮闘すべきじゃないでしょうか。
少なくとも、僕は「欠点があるから付き合わない」、「あの人は苦手だから付き合わない」といった幼稚な価値観で生きたくはありません。
会社でも、倒産の危機に瀕し、資金的余裕もなく、商品開発のアイデアも尽きながら、それでも社長と社員が希望を持っているような無名会社が、僕は好きです。学生なんて、僕たちから見れば短所と無知の塊で、人脈もお金もなく、意志も弱く、付き合っていて実利的なメリットはゼロに等しい存在ですが、僕は学生の「今」と付き合っているのではありません。
FUNでいつも言っているように、僕は学生の「未来」と付き合っているのです。今感動し、行動に移し、成長と達成を通じて変化を遂げれば掴める若者の将来…それを信じているからこそ、自らの時間を捧げて全く悔いがないのです。
怠惰に流れ、蓄積すれば不安と恐怖にしかならない若者の「今」を惜しむからこそ、持っている経験や知識のうちで、役立つものがあれば全て提供したい、と思っているわけです。「一緒にいれば、おのずと短所と向き合う勇気が出てくる」。
そういうのが、大人の関係ではないかと思いますが、いかがでしょうか?賛同できない皆さん。そっか…もう配信リストから除名したんだった。
僕だって、学生時代にそのような厳しい方々の時間を頂いて、必死に耕してきたからこそ、今があるのです。だったら、自分より若い人たちにも、そう接してあげるのが礼儀だと思います。
若いうちはバカ騒ぎもやるでしょう。アホさを競い合うこともあるでしょう。それはそれで、大いに結構なことです。一度、全力で虚しさを味わうのも必要な経験です。
そして、虚しさに徹しきった時、ふと「先輩」の声が心に響いてきます。あるいは余生が少ない人、自力では生きられない人から「生かされている」という真実を教えてもらった時、初めて他者を思って生きる意味が分かります。
そうして、それまでは一番価値があると思っていた「自分のための人生」が、実は一番価値がない生き方だった、と悟ります。
僕は太宰府から西新まで、毎日自転車で通っていましたが、大学1年の時に祖母が突然亡くなって、自分が通学と勉強で「忙しい」と言っていたのが、全くの嘘っぱちだったと涙を流して悔やみました。
やろうと思えば、些細なことを含め、どれだけの孝行ができたことか。でも、そうなるまでは気付きませんでした。だって、考えようともしなかったのですから。
病室で意識なく機械に囲まれている祖母を見て、いくらごめん、孝行するよと誓ってみても始まりませんでした。そして、その時から、先祖の志が自分に引き継がれて心の支えになったのです。
先輩や年長者に叱られ、励まされると、自分がどれだけ大切な人間か、痛いほど分かるでしょう。そして、どれだけの時間を空費してきたか、痛切な反省をもって自分を振り返るでしょう。
僕は、そのような素直な感動が、歴史の学びにあると確信しています。「私は大切な人なんだ」と思えない若者が、どうして勉強する気になれるのか。
だから、一緒にいて心がチクチクするような人と付き合うのは、気心の知れた友人といるのと同じくらい大切なことなんですよ。
僕は、自分がサークルにいる意味は、「君たちは大事な人間なんだ!」と実感してもらうお手伝いをすることにあると思っています。昨日のメルマガも、そういうつもりで配信したんですが…。
さて、昨日の話題にしてもそうですが、僕がなぜ古いものが好きかというと、品格があるからです。
もちろん、ただ古いだけで全てが良いとは思いませんが、古典的な価値を持つものは、どんな分野においても好きです。
本にしても、古い名作は安心して付き合えます。僕のような凡人では及びも付かないような卓見が素朴に述べられ、多くの人に、広い範囲で、長い間「肯定」されてきただけの何かが、必ずあります。
「あらゆる偉大なものは、触れるやいなや我々を形成する」とはゲーテの名言(「いきいきと生きよ」手塚富雄/講談社現代新書)ですが、若いうちは偉大なものにどれだけ多く、深く触れるかが何より大切です。
だって、触れて感動したところに「自分」がいるのですから。我々が感動を形成し、感動が我々を形成する。これこそ、最高のタイミングで行われるコミュニケーションですね。
また同時に「古人恐るべし。我の思ひしを全て言ふ」(頼山陽)という言葉もあります。僕たちがどれだけ新しい発想だ、新しい言葉だと調子に乗ったところで、そんなものは全て、既に何百年も前に古人が悟りきっているものです。
僕は最近、多くの偉大な創業者が慕った道元や親鸞の本ばかり買い、禅の初歩の初歩、というより、入口のさらに遠くの暗がりをウロウロしています。
「正法眼蔵随聞記」や「歎異抄」(ともに岩波文庫)を読むと、恐ろしいほどの洞察に冷や汗が流れます。はっきり言って、自分ごときの人間が吸収できる本ではありませんでした。
祖母や父が「観音さま」が大好きで、僕を叱る時に「観音さまのバチが当たるぞ」と言ってくれた意味を理解しようと、手始めにこの分野で記録的なロングセラーを書いた松原泰道さん(99歳の今も現役!)の本を数冊、読んでみたのですが…。
全編、「申し訳ありませんでした、ご先祖様…」と反省しきりです。全く、自分の未熟ぶりに心が寒くなり、頭が痛くなるお盆休みでした。これは、日々修行と心得てかからねば…。
このように、自分を自分たらしめてくれる反省付きの感動の底にあるのが、「品格」と考えてもよいでしょう。
僕は人を見る時も、買い物をする時も、本を選ぶ時も、あるいは女性を選ぶ時も、この「品格」を大事にしています。
それは、ただ「高い」とか「有名」という意味ではありません。そこに「誇り」や「思い」が込められていること、そしてその精神が、その人や本を貫いていることが大切です。そういう人や物を前にすると、自分の欠点や未熟さが顕在化され、自然と意欲が湧いてきます。
考えが違う人、生き方が違う人、信条が異なる人…社会に出れば、そういう人に毎日会います。
そんな時でも、自ら信ずるところに誇りを持ち、堂々と生きている人を見ると、それはとても立派だと感じます。
このように、僕も付き合ってきた友人や先輩、後輩を振り返りながら、自分の性格を反省したり、達成を回想したりしているのですが、FUNの学生さんにもよく言うように、「相談相手や友達の選び方」ほど重要なものも、なかなかないものだと感じます。
なぜなら人は、自分の意見や得た情報を「親しい人」が肯定するか、あるいは否定するかで行動と結果が全て決まってしまうからです。
友達には、客観的に見て明らかに「プラス」のことを肯定し、応援する人もいれば、否定し、批判する人もいます。
では一体、「良き友達」はどう選べばいいんでしょうか。これについては、去年のBusiness Cafeで橋本左内の「啓発録」(講談社学術文庫)を読んだ際、「損友」と「益友」の見分け方を勉強しましたよね。
あれはなんと、左内が14歳の時に書いた文章だと知った時は、参加していた学生さんも大いに驚き、発奮したようでした。今日は、もしかしたらご存知かもしれない歌から「友の選び方」を考えてみましょう。
与謝野晶子と言えば、日教組の教育では「ただの反戦歌人」に祭り上げられていますが、その作品を見れば、心から日本の歴史と風土、平和を愛する女性だったことが分かります。
その夫といえば与謝野鉄幹で、彼が残した歌に「人を恋うる歌」があります。結婚式などで、僕も昔、少しだけ聞いたことがあります。
今はドリカムとかサザンを歌う人もいますが、昔の結婚式は「パーティー」ではなく「儀式」だったので、もうちょっと文学的でまともな歌が好まれたようです。
これは非常に長い歌で、一番が特に有名です。その歌詞は…。「妻をめとらば才たけて 眉目(みめ)麗しく情ある 友を選ばば書を読みて 六分(りくぶ)の侠気四分(しぶ)の熱」で始まります。
「妻をめとるなら、才知に長けていて美しく、情け深い女性を選ぼう。友達を選ぶなら、読書好きで六分の侠気があり、四分の情熱がある人を選ぼう」といったほどの意味でしょうか。
リズムが良く、言葉も格調高いので、結婚と関係ない文学作品やエッセイにもよく引用されていて、ご存知の方もおられるでしょう。
中でも有名なのは、「友を選ばば書を読みて」の部分ですよね。おじいちゃんかお父さんに聞いてみて下さい。きっとご存知だと思いますよ。
昔の人は、友達を選ぶ第一条件に「本好きであること」を置いていたんですね。もちろん、場合によって他の条件もたくさんあるでしょうが、昔は若者がこの歌を好んで歌い継いだことからも分かるように、「読書好き」は良い友達そのものだったんでしょう。
昔の本を読んでみると、小説やエッセイで人物が紹介される時は、「漱石が好きな男であった」とか、「芥川には一家言ある奴だった」、「谷崎を語らせれば時間を忘れる友だった」という表現が頻繁に出てきます。
あるいは「脇にはいつも分厚い法律書を抱えていた」とか、「ロシア語の辞典を枕に寝る奴」、「部屋はさながら、ゲーテの本に囲まれた城であった」とか出てきます。「本=人格」だったんですね。
僕も人に会うと、よく「好きな本は何ですか?」とか「誰の本をよく読みますか?」と聞きます。学生さんにもよく聞きます。まぁ、それで共通の本や人が出てきたことは、同世代であればまずなく、僕の好きな本は60歳以上の方々や社長さんなら知っているような本ばかりで、いつも自分の時代錯誤ぶりを実感しているわけでもあります。
Business Cafeでは、基本的で読みやすい本ばかり紹介しており、FUNに読書好きの学生さんが多いのは、何より幸せなことです。「お金が余ったら…本を買う」、「時間が空いたら…本を読む」という若者は、まず安定した成長を期待して間違いないからです。
読書の効用は、本メルマガでも何度もお話してきた通りですが、まとめると以下のようになります。
①他の娯楽や趣味と比べて、圧倒的にコストが安い。
②自分一人だけでも楽しめ、最高に有効な時間活用方法である。
③時空を超えて、相談相手や憧れの人を持つことができる。
④世界一周旅行よりも広い旅行が、自宅にいて可能になる。
といったところでしょうか。
まず、読書は自分の努力がないと実現しない趣味ですから、読書ができる人に精神薄弱な人は少なく、頭が悪い人も少なく、会うたびに何かしら成長が期待できます。
さらに言えば、同じ本や同じ作家の本を読んで、その内容や感想を語り合える友達を持てれば、なお良いです。
友達の中でも悪友に位置するのは、①カネをかけないと時間が消費できない人間、②困った時だけ相談してくる人間、③「ヒマやね」が合言葉の人間、でしょう。同じものが嫌いで、会えば悪口で共感するとか、過去か他人、あるいはドラマしか話題がないとなれば、左内の言葉で言う「損友」です。
このような人が周りにいるなら、切り捨てろとは言わないまでも、優先順位を最低に引き下げ、しばらく「冷凍庫」に入れておくのが身のためです。そして、悪影響に動じない意志力が身に付いたら、助けてあげましょう。
選ぶなら、やっぱり読書好きです。同じ本を愛し、語り合える友達は最高です。また、夢を話題にできる友達も素晴らしいものです。学生の皆さんには、ぜひそういう良き友人をたくさん作ってほしいものです。
また、FUNでも友達に惜しみなくチャンスを提供し、見学に連れてくる西南のM君、久留米大のMさん、筑女のKさんなどを見ていると、その優しさや侠気に感心します。
中には、「こんないいサークル、人に教えるのはもったいない」と、こっそりと一人で来ている学生さんもいるようですが、それはどうでしょうね。与える人ほど、多く与えられるものです。友達と一緒に本を読むように、友達をFUNに連れてくると、きっと感謝してもらえ、今まで以上に良い関係になるというのが、発足以来変わらぬ姿だと実感しています。
なぜなら…学生時代もまた、一冊の本だからです。今、皆さんは、毎日に何かを書き残しているわけです。登場人物が多い方がにぎやかだし、出来事がいっぱいある方が楽しいですよね。
今日は誰と、何を書き残した一日でしたか?ドラマチックな物語を書き始めたい方は、そろそろFUNを先物予約する時ですよ。だって、今年の広がりは、4年間で一番すごいからです。
今日もお読みいただき、ありがとうございます。
ただ今、教育・学校部門41位、就職・アルバイト部門22位です。
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