■「内定への一言」バックナンバー編
『どんな素人でも、1年間集中してそのテーマを学べば、
何がしかの仕事ができるようになります』
(杉浦英一)
大橋文庫(南区大橋※駅の西口を出て安永病院そば)はすごい…。僕が昔から欲しかった本や、ブックオフでは「断裁処理(ゴミ扱い)」になる古書が続々出てきます。
・「美に生きる」(林武/講談社現代新書/1965)⇒80円
・「ケーベル博士随筆集」(ラファエル・ケーベル/岩波文庫/1918)⇒60円
・「平生の心がけ」(小泉信三/講談社/1950)⇒100円
・「海軍主計大尉小泉信吉」(小泉信三/新潮社/1946)⇒60円
・「宋名臣言行録」(朱熹註解/徳間書店)⇒300円
・「法然と親鸞の信仰」(倉田百三/講談社学術文庫/1938)⇒上下で300円
などなど…。あまりの嬉しさに、昨日はこれらの本を、全部枕元に置いて寝ました。
地震が起きても、あれより探しにくい並び方にはならないだろう、と思われるほどの陳列(重なり方?)で、レジの前の歴史関連図書、学術書の隣には、よりによって「成人向けコーナー」が。
女性の方には、少しばかり、入りにくい店かもしれません。でも、そんなことは気にせず、昨日は2回も行きました。ブックオフツアーでも、1回行きました。
「褐色の弾丸」こと、九大2年・M君の母校の近くにあるこの古本屋で、M君は「小島さん、こんなのがありました」と、わざわざビニール入りの漫画雑誌を見せてくれました。
見てみると、「新連載!ゲタバキ甲子園」。うっ!なんだ…。この時代錯誤っぷり全開のタイトルと絵は…(唖然)。
すかさず、M君が「これ、1975年だそうですよ。生まれてない…」と一言。1975年は僕が生まれた年ですが、自分の生まれた年の「新連載」が古く思えるなんて、これも時代の流れというものでしょう。
M君は、面白い本を見つけるのが得意です。そんなこんなで、ブックオフツアーの時は大の男5人で狭い洞窟のような店内を、まるで「倉庫番」のゲームのように巡回したのですが、その時に、実は店主が中年客とこんな話をしていたそうです。
おじさん「今日は多いね」
店主「若いお客さんがこんなに来たの、何年ぶりやろ」
おじさん「近頃はおらんとね」
店主「全然来んね」
取材や営業で、企業やお店の話には敏感になる習慣ができているFUNの学生さんが、この話を聞き逃すはずはありませんでした。(僕は本探しに熱中して聞こえてもいませんでしたが…)
さらに、お店というお店に入ると、営業の臨戦態勢ができてしまうK君は、細かに聞いていた上に「再訪問の際はどんな話をするか」を考えていたそうです。(僕は本探しに夢中で考えてもいませんでした…)
ということで、昨日もK君と行ってきましたよ。「大橋文庫」。お目当ての本を数冊買った後、K君が店主に話しかけました。
隈本「こちらは、若い方も来られるんですか」
店主「いいや、全然来んねえ」
隈本「何年くらい、こちらでお店をされているんですか」
店主「そうやねえ。かれこれ20年以上かなぁ」
隈本「文庫や新書では、古い名作もたくさん置いてますね。それでも学生さんは来ないんですか」
店主「近頃の若いのは、本とか読まんやろ。ああいうの置いとっても、知らんやろ。大学の先生とかは、よく来るね」
隈本「じゃあ、若い方は、成人向けなどを買うんですか」
店主「いいや。最近の若い人はエロ本も買わん。インターネットとかあるけんやろ」
隈本「若い人、来ないんですね。僕たちは昨日のお昼過ぎ、5人くらいで来たんですが」
店主「あ~、あんたたちやったとね。お客さんと、若い人が来るのは何年ぶりやろ、って話しよったとよ」
古本屋のおやじさんにありがちな、「ムダな話はやめて、買ったらとっとと帰れ」みたいな頑固な表情から始まったものの、最後はニコニコと嬉しそうな顔でした。やっぱり、若いお客さんが来ると嬉しいんですね。
ネット通販では売れているそうですが、傍から見ていて、「こんな状態じゃ悔しいだろうなぁ。本当は、若い人に良い本を勧めたいんだろうな」と感じずにはいられませんでした。
戦記、歴史、評伝、評論、芸術、文学に興味がある方は、ブックオフでは実現しえない在庫の質・量なので、ぜひ足を運んでみてはどうでしょうか。
お店の中には3列の通路がありますが、行き違いが不可能なほど狭く、スペースというスペースには本が積み重なっているので、行くときは3人以内がよいでしょう。
カバンがあると本の山に当たってコロコロ落ちるので、できるだけ小さなカバンで行くといいですよ。本好きにはたまらない「宝の山」です。ちなみに、入店前に「NHKラジオ体操第二」を軽くやっておくと、スムーズに探せるかもしれません。
さて、なぜいつもメルマガで、学生さんに本を紹介しているかというと、本の情報は他の媒体と違って、深く実用的だからです。読書嫌いで成功している人はほとんどいません。
それは、読書という作業が「選択、集中、表現」という情報理解の最も基本的な過程を自ずから備えているからです。テレビをいくら見ても、頭が良くなることはありません。テレビやラジオの情報は、最初から加工されていて、処理しやすい形で一方的に流されてくるからです。
つまり、本だけは唯一「摂取のための自発的な努力が必要な媒体」だと言えます。テレビを見ている人を見ても、その人の性格や習慣はあまり分かりませんが、本を読ませてみると、よく分かります。
すぐに投げ出す人、浅い理解で済ます人、買っただけで読んだ気になっている人…もいれば、熟読する人、線を引いてメモを残す人、ブログを作る人…もいます。
ブックオフツアーに参加する学生さんの半分以上は、HPかブログを持っている学生です。表現が好きな人は、読書も好きだといってよいでしょう。
時々、「でも、テレビの情報はビット数に直すと活字の数万倍だ」と反論する人がいます。確かに、デジタルデータに変換すればそうかもしれません。が、そんな当たり前の知識は、反論にもなりません。
テレビやラジオで、生の映像や声に触れることは、「鑑賞力」を鍛える点では大切です。それがテレビやラジオの特性です。しかし、だからといって、情報の量や質が読書に比べると圧倒的に劣るという事実は変わりません。
そもそも、「活字に直すと○万倍」とか言う人に限って、活字に直せないではありませんか。感じたことを文章にしろと言っても、「すごい」、「楽しい」、「感動した」などと、幼稚園児と変わらないコメントです。
そんな「活字に直せない人」が「デジタルデータなら○万倍」などと言っても、何の意味もありません。テレビは、その誕生当時「白痴メディア」とも言われたように、教育がない人間でも一定の情報が取れる伝達が可能なメディアです。
しかし、演出や加工は、人にやってもらうよりも、自分の想像力を使ってやる方が何倍も大事。それを「集中力」とか「連想力」、「理解力」と言うのではないでしょうか。そういう地道な反復、継続に耐えた人だけが、人に伝えられるだけの価値を持つ、何がしかの意味ある表現に到達しうるのです。
FUNでも創業小説で特に人気がある城山三郎さんは、海軍の航空部隊で終戦を迎えています。戦記や航空小説でも、優れた著作の多い方です。
「一歩の距離」(文春文庫)などは、特に感動しますよね。城山三郎さんのお父さんは、渋沢栄一を崇拝していた商人だったため、子供にも「渋沢栄一にあやかって立派な人間になってほしい」との願いを込め、しかし「同じじゃ畏れ多い」と、一字変えて「英一」という名前を付けました。
杉浦英一さんは、のちに愛知学芸大学で講師となり、自分の名前のルーツになった渋沢栄一に興味を持ち始め、手始めに中京地域の経済史の研究を始めました。
この連載の研究手法が緻密で、事実の再現方法が小説のようにリアルだったため、杉浦英一さんは連載をまとめ、「創意に生きる」(文春文庫)という作品を発表しました。この時に使ったペンネームが「城山三郎」だったとは、知る人ぞ知る話です。
トヨタの成功で、一人当たり所得が東京よりも高い「日本一のお金持ち県・愛知」の経済史がよく分かり、当時の人々が甦ったような気分になる名作です。
また、名前のルーツになった渋沢栄一の半生を感動的な筆致で綴った「雄気堂々」(新潮文庫)は、発表から40年近くたった今も版を重ね、多くの実業家や若者を勇気付けている傑作です。
僕は、作家の作風や仕込み、顔にとても興味があります。人の顔を見て人生観や性格を想像するのが、けっこう好きです。
やはり名作を書く人は、どう見ても「作家」としか思えない風貌や目つきをしていて、顔つきから文筆家の気風がただよっています。
司馬遼太郎さんは、一冊の小説を書くのに2,000~3,000冊の文献を読み、山崎豊子さんは世界中の僻地に取材旅行に行って登場人物と同じ生活を体験し、塩野七生さんは戦跡を回って、顔写真や銅像をじっくり眺める…。
というふうに、独特の作風を持つ作家は、準備段階から個性溢れるエピソードに包まれているものです。
では、城山三郎さんは、どうなのでしょうか。城山さんは、やはり大学の教員が出発点だけに、基本に忠実です。こちらも愛知出身の深田祐介さんと同じで、登場人物にゆかりのある人や関係者、場所、資料、事件を徹底的に調べ、ストーリーを再発見して構築していく、という手法だそうです。
読めば分かると思いますが、
①戦後の国鉄の事件を扱ったかと思うと、
②江戸時代の蝦夷開発の悲劇の歴史を書いた作品があり、
③東京裁判で処刑された文官を主人公にしたかと思うと、名もない中小企業の社史をテーマにした小説があったりします。
※上記はそれぞれ①「粗にして野だが卑ではない」(文春文庫)、②「冬の派閥」(新潮文庫)、③「落日燃ゆ」(新潮文庫)です。
とにかく、守備範囲が広いし、内容が深い。
こんなにテーマが飛んで、知識のバラつきや重複はないのだろうか…と心配してみても、どの作品も独立した作品として完結していて、安っぽい借り物の知識や、底が見える重複などはありません。
それどころか、「あまり知らない方が、素直に感動できる」といった姿勢すらお持ちです。毎年他人の同じテキストを使って大金をぼったくっている、どこぞの大学教授に聞かせてやりたい言葉です。
そんな城山さんは、「どんな素人でも、1年間集中してそのテーマを学べば、何がしかの仕事ができるようになります」と語っています。
もちろんこれは、1年間で専門家になれる、という意味ではありません。1年集中すれば、自分なりの意見や価値観が持てる、という程度の意味でしょう。
作家ごとに意見の違いはありますが、大体以下のような区分が成り立つようです。「書きたいテーマ」に関連して読む本の質と量の関係は…
・~5冊⇒素人の趣味どまり
・~20冊⇒仲間内のコメンテーター
・~50冊⇒関連分野の知識がお金になる
・~100冊⇒専門家の意見を自分なりに批評できる
・~200冊⇒大学教授レベル
・~500冊⇒大作家
・~1,000冊⇒歴史に残る作品が書ける
といった区分です。ちなみに、僕がFUNで行っている講義は、参考文献の数がだいたい40~150冊です。あとは「実務経験」で補強しています。
このうち、毎週土曜のFUN Business Cafeで紹介している作品の著者は、ほとんどがいずれも大作家の作品や歴史的作品ばかりで、学生さんは名前すら知らない人ばかりです。
でも…お気付きですか?来週でBCの本は、「40冊」に到達することを。最近はそろそろ、書店で新刊を手に取ってみても、「なんだか浅い」と思えるようになってきたのではないでしょうか。それは、皆さんの中に「良いもの」を識別する目が育ってきた、というサインです。
今は、読書歴の浅い大学生でも読める簡単な名作ばかりを選んでいますが、これからはどんどん、古い名作を紹介していきますから、楽しみにしておいて下さいね。
大作家や歴史に残る人物が読んだ作品を、心を同じくして読んでいくのが、僕の夢の一つです。
有望な学生の皆さんには、系統的に名著に触れ、しっかりとした知的基盤を確立してほしいと願っています。そのため、「1年間、テーマを決めてしっかり読む」という環境を、福岡の地に実現したいと考えています。
なぜ、我が家にそういう蔵書があるかというと、祖父が大蔵省の官僚で文献整理を担当し、清水幾太郎ゼミ出身の叔父が産能大に勤務して、篠田雄次郎さんや渡部昇一さんと友人で、その後30年間、経営書や歴史書の出版社で編集長をしていたからです。
ブックオフの経営書のコーナーに、時々「マネジメント社」が出している大前研一さんや長島茂雄さん、大橋武夫さん、篠田雄次郎さんの本があるでしょう。それらの本の「まえがき」や「あとがき」には、「小島編集長の協力で」とか書いてあります。あれが叔父です。
この叔父から、「来年70歳になるから、あとは畑でも耕しながら余生を過ごしたい」との連絡があり、蔵書2万2千冊を、僕が譲り受けることになりました。
大月さんの好きな坂本藤良さんの師である馬場敬治さんの著作や、福原麟太郎、河合栄治郎、小泉信三、林房雄、浜尾新、内藤湖南といった、名だたる学者の絶版の著作も、どっさりあるとか…。
他にも、さすが僕の叔父だけあってマメですから、国会図書館や東大図書館、衆議院図書館、電通図書館、野村證券資料室が「見切り本」として処分した本も、せっせと40年間、買い集めてきたそうです。
マネジメント社といえば、産能大出版部と並んで、経営書や実務書では一流の文献が多い出版社ですが、そこで「編集コンサル」をしていた責任者の蔵書が、全部僕の手元に流れてくることになるわけです。
つまり、東京でも再現不可能な「名著の洞窟」が、福岡で再現される…。そして、それはそっくりそのまま、「FUN図書館」に…。
ということで、FUNの学生、および卒業生の皆さん、「FUN図書館」の完成まで、あと少しだけお待ち下さいね。最近は、新しい家探しや部屋のレイアウト、あるいは活用方法を模索しているところです。
最近見つけた家は、リビングが24帖で総面積が102㎡、家賃が25万円でした。場所も赤坂駅から、徒歩1分。今は、毎月メルマガだけで、通販や公開講座の副収入が月額50万円近くコンスタントに入っているので、そこにしようかなぁと考えています。
投資は副収入で行うものなので、その意味でも理想的であり、現実的です。まだ部屋は空いていないそうですが、学生さんをお手伝いして得た副収入は、学生さんのために還元するのが、最も理想的な再投資の方法でしょう。
ということで、2日ぶりの配信になりましたが、この間は書斎の整理や「メルマガ総集編」の編集(ワードで800枚以上…)をやっていたので、少し配信が遅くなりました。最近は数人から、「ネットで小遣いを作りたいんですけど」という質問を受けたので、次の話題はこれにしましょうかねぇ。
でもその前に、ちゃんと大橋文庫に行って下さいね。古本屋との良い付き合いなしに、ネットで副収入なんてのは、ムリな話なんですから…。
ついでに、おやじさんにも、「隈本さんのブログを見て来ました」と一言お願いしますね。
http://kumamoto1979.blog58.fc2.com/
では、お盆前最後の「韓国語塾」に行ってきます。それにしても、僕って何者なんでしょう…。
今日もお読みいただき、ありがとうございます。
ただ今、教育・学校部門41位、就職・アルバイト部門22位です。
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