■「内定への一言」バックナンバー編


『二度読まなかった本は、一度読むにも値しなかった本だ』

(フリードリヒ・リュッケルト)



FUN Business Cafeと言えば、FUNの発足以来続いている、土曜朝の勉強会です。開始時は補習めいた位置付けでしたが、すぐに学生さんが増え、ロイヤル、ドトール、ベローチェ、ミスドを追い出されて、今は早朝読書会になりました。



その中で読んできた本は、絶版の名著を中心とする35冊で、毎週①ビジネス書、②歴史書、③名作評論、④古典、⑤評伝が1ヶ月でバランス良く回転するように本を選んでいます。



土曜の朝8:00に、北は北九州、南は大善寺から学生さんが集まるこの時間は、とても貴重な「自己省察」の時間であるため、特に大切にしています。



その中で、2回取り上げた本は「人生を変える80対20の法則」と、「読書と人生」しかありません。


特に、「80対20」はまだ書店で手に入るからいいものの、「読書と人生」(河合栄治郎編・教養文庫)は、どの古本屋を探してもまず見つからないといっていい名著です。



なぜかと言えば、この本は河合博士の門下生と友人たちが健筆を揮って、若者のために「読書の素晴らしさ」を懇切丁寧に説いていて、大正~昭和初期に第一級の評価を得ていた学者の精神が詰め込まれているからです。



つまり、「一度買ったら、死ぬまで売らない」という、名作中の名作。この本が今泉のブックオフに\100で売っていたのを見つけた時は、「オレも遂に目が悪くなったか」と思いました。



Business Cafeでは、本書から二人の読書論を紹介しましたが、まだ紹介していない方に、ドイツ文学者として功績を残した高橋健二博士の文章があります。僕の家には高橋博士の「ゲーテ詩集」と「ゲーテ格言集」があり、ともに父が好きだったため、昔からよく読んだ本でした。高校時代に読んだ「ファウスト」も、確か高橋博士の訳だったような…。



博士の教育への情熱を物語るエピソードとして有名なのが、学生紛争で大学が騒がしかった時期に、教鞭を執っていた母校の東京大学で教える傍ら、「先生の講義をわが校でもぜひ!」という九州大学の要望に応えて、なんと、毎週飛行機で九大に講義しに行った、という伝説があります。



「移動が大変じゃないですか」、「よく田舎の大学にまで出講するものだ」という周囲の評判を聞いた博士は、一言…「馬鹿者!伝えたい教師と感動したい若者がいる!これが教育でなくて何なのか!」と一喝し、10年近くも出前授業を続けました。



今じゃ、「10分遅刻(授業料に換算して\380)」なんていうのは当たり前のぼったくり教授も多いのに、さすが、明治生まれの教育者は人物の品格も考えのレベルも違いますね。



この高橋教授の先輩が、FUNでも何人を感動させたか分からない「いきいきと生きよ~ゲーテに学ぶ~」(講談社現代新書※絶版)などを書かれた手塚富雄教授で、そのような偉大な教育者たちの師が河合博士ですから、当時の若者はその「読書論」を競って買い求めたわけです。



高橋博士は、「読書と人生」の後半部分に『読書の回顧』という短い文章を寄稿しており、その冒頭に紹介されている言葉が、博士が愛読した詩人、フリードリヒ・リュッケルトの「二度読まなかった本は、一度読むにも値しなかった本だ」という一言です。



Business Cafeで紹介した文章ではなかったものの、この言葉は僕もとても好きなので、終了後に学生さんに紹介すると、九産大のヤマえもん君が「確かにそうやん!」と会心の笑みを浮かべていたのが印象的でした。



ヤマえもん君のブログの言わんとするところは、30歳を迎えた僕には時々分からないこともありますが、いつも友達を思いやる心と、感性が豊かな学生さんだなあと毎晩ブログを愛読しています。



最近の本は、書店に行っても分かりますが、とにかく「手に取らせよう!」と消費者をバカにしたような単純・過激なタイトルが多くて、よく考えもせずに「最強」、「無敵」、「超速」、「伝説」とかいう言葉を安売りしています。



読者も「忙しい」という理由で書店に来ているのでしょうし、手っ取り早く読めて、すぐに役立つような本を求めているから自業自得なんでしょうが、早く読める本ほど早く使えなくなるものです。手に取ってみると、内容の薄いこと…。明治時代の文章に比べると、カルピスを10回薄めたような浅はかで稚拙な文章で、これが大卒の文章かと呆れてしまいます。



そんな将来を見透かしたように、博士は60年前に「万巻の書を読んでも、二度読み返す本を持たなければ、それは一冊も読んでいないに等しい。ちょうど、万人と付き合っても一人の知己をも得ないのと同じである」と書いています。



「1万人と出会っても、1人の友達もできない」とは、言いえて妙です。そして、「だから私は、二度読むような本を持つことを、今でも人生の喜びとするのである」と続けています。



「また読みたい」と思うことは、「これからの人生に役立てたい」と思ったことにほかなりません。つまり、読書の中に理想の自分を発見し、導かれたのです。



しかし、「また読もう」と思わなかった本は、読んだ時点で思い返すことも、あるいは描くこともなかったという本です。つまり、「一回読んでも価値を見出せなかった」という本で、人に例えれば「宴会で一緒に飲んだが、その後は一度も会ってない」という人みたいなものでしょう。



博士のこのような見識は、人生の核心を突いた洞察だと思います。皆さんの大学生活に当てはめてみたら、これはどういうことになるでしょうか。



もし、専攻の学術書や指定図書を読んだとしても、それを自分の意思で二度読むことがなければ、「何も勉強しなかった」に等しいということです。だって、最初に読んだ時に「これは役立つ!」と将来を描くことがなかったため、何も得られなかったからです。教授の質も本の質もあるかもしれませんが、やはり大きいのは読者の責任です。



もし学生が、「とにかくレポートが出せればいいや」、「これでも選んでおくか」という程度の思いで本を選んでいるなら、それは日々、無知になるために必死で頑張っているようなものです。



だって、頭を怠けさせているから。こんなことを書くと、また読者が減るかもしれませんが、断じて書き進めます(ちなみに、最近生意気な文句を付けて解除する学生がいますが、ちゃんと名前が出てますよ。僕は記憶力がいいので注意して下さいね)。



人生において、最初の取り組みで試みがうまくいく、ということはまずないでしょう。初めからうまくいったら、よっぽどレベルの低いことをやっているだけだ、と考えた方が賢明です。



失敗しているのは、挑戦しているからです。そして、失敗してもそこに描いた理想を投げ捨てず、初心を忘れずに再度取り組むところに、初めて本当の「成長」が期待できるのではないでしょうか。



つまり、同じことを二度やろうと、自分が同じでなければその行動は常に新しく、取り組む人も同様に新しくなっているわけです。サッカーの試合と一緒です。



しかし、多くの人は一度経験したら「大体は分かった」みたいな顔をして、したり顔で語ります。「若い頃は色々やったよ」と経験の数を誇る大人がいますが、その実、モノになっていることは何一つないでしょう。



僕も学生時代、そういう大人に「何をしたらいいか」と聞いたりしたことはありますが、肝っ玉が小さいというか軽薄というか、何かを継続していない大人からは、何ら価値ある答えは得られませんでした。



そもそも、本質や面白さが分かれば、「続けて当然」ではないかと思いますが、なぜ中断したものを「面白い」と言う人がいるのでしょう。



「やってはみたけど、やめた」というような行動に、何か価値があるのでしょうか。そういう行動や経験を「面白い」と若者に語る大人を見ると、頭脳の構造を疑ってしまいます。



僕はそういう無責任なことはしたくないので、学生さんと接する時は、①今も勉強を続けている、②実際にその知識で収入を作れる、③それと関係ある仕事をしている、という基準に満たない内容は、教えないことにしています。



つまり、自分の中で「二度、三度と勉強を重ねるに値すること」だけを、FUNでは取り扱っているわけです。



また、僕がよく知らないことを学生さんが時間をかけて勉強しているなら、そういう時は相手が10歳年下であれ、「それは何?どういう仕組みなんですか?」と教えを受けるようにしています。



僕は学者でも教師でもありませんが、昔かじっただけの内容で人の時間を占有するのは良心が耐え切れないので、せめてそういう、人間として最低限必要な礼儀は、相手が誰であれ守っていきたいです。



僕は挑発的、ナルシスト、自信過剰という短所もたくさんあるため、昔の学者や経営者がよりどころとした本で精神を鍛え、それを実地で試したいと、仕事やサークルのお手伝いを修行として取り組んでいます。



要するに、「やってみて、うまくいかなかったこと」こそ長く腰を落ち着けてやってみよう、という非効率な人生態度なのですが、相対的に見て、この性格で助かっていると感じています。



「色々やったこと」が皆さんの学生時代の価値ではありません。「再挑戦したこと」や「継続したこと」が価値です。



皆さんの部屋には、再読、三読に耐える本が、何冊くらいあるでしょうか。あるいは今までの大学生活で、そういう本を何冊くらい読んだでしょうか。



または、毎日会っても話題が成長し、お互いに新しい自分で遭遇できる友人が、何人いるでしょうか。良い本と良い友達とは、いつも自分を自分たらしめてくれるものです。そんな財産に囲まれた学生生活は、再挑戦と継続から生まれますよ。


今日もお読みいただき、ありがとうございます。

ただ今、教育・学校部門41位、就職・アルバイト部門22位です。

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