■「内定への一言」バックナンバー編
「集中とは、持続的な決断である」
帰宅してPCを立ち上げたら、続々と「就活アンケート」が。特に、FUNを引っ張る西南4年のI君の回答は、エントリーシートより長く、丁寧なものでした。ご協力して下さった皆さん、本当にありがとうございます。まだ受け付けているので、後輩に感動や経験を伝えたい方は、ぜひ送って下さいね。
さて、僕は平素、「フリーターの再就職」を応援する仕事をやっています。最近ではめっきり仕事の量も減って、悠々自適の生活を送っていますが、この不思議な仕事についての質問も受けます。
ということで、今日はフリーターについて考えてみましょう。
「フリーター」という言葉は、リクルートが作った言葉で、1994年に新語として定着したそうです。それまでは「プー太郎」とか「プー子」、「無職」、「就職浪人」などと呼ばれていました。
要するに、集団化するまでは、その属性の特徴から寄生虫扱いされていたのですが、数が80万人を超えるとさすがに無視できなくなり、この特異な生き方を総称する呼び方が生まれたわけです。
これまでも、我々日本人はドイツ語の「働く」をアルバイト(非正規雇用)の意味で、フランス語の「働く」を転職(トラバーユ)の意味で使いこなしてきました。
ドイツ人が「アルバイト」と言っても、バイトではなく、正規の雇用という意味です。フランス人が「トラバーユ」と言っても、別に転職したという意味ではありません。ドイツ人には、いい迷惑ですね。
同様に日本で使い分けがなされている「カード、カルテ、カルタ」では、ドイツ語の「カルテ」は医療分野の言葉なのに、仕事では「副業」扱いされるなんて。
しかし、今までこのように諸外国語を絶妙なセンスで使い分けてきた日本人も、「フリーター」には悩みました。外国にはない勤務形態だったからです。
だから、「フリーアルバイター」を縮めて、「フリーター」になりました。和製英語っぽい名称です。今では、バラエティ番組や若者向け雑誌でも、平気で肩書きに「フリーター」と書かれています。
このフリーターに職業教育と経済教育を提供し、正社員にするのが僕の仕事です。ちなみに、企業から見れば、採用支援です。
人材派遣、旅行代理店、ベンチャーキャピタル、証券会社の仕組みが複雑にからみあい、シンプルなシステムになった仕事を、24歳の時に発明しました。
もっとも、主要顧客がフリーターになるとは、全く予想外だったのですが。皆さんは、フリーターと聞いたら、何を連想しますか?
「なりたくない」、「軽そう」、「貧乏そう」、「気楽そう」といったお決まりのイメージから、「夢を追っているから仕方ない」、「ちゃんと稼いでいる」、「ニートよりマシだ」といった肯定的な印象まで、様々だと思います。
ただ、どのイメージも、「まじめな働き方ではない」という印象は共通しているようです。さて、実際はどうなのでしょうか?
若年社会人やフリーターの「再就職」を応援するようになったのは、全くの偶然からでした。前職が経済誌の記者だったため、経営者と会うことが多く、既に23歳で二つ目の会社で働いていた僕は、新卒で入社し、バタバタと退職していく同級生を幾人も見ました。
あるいは、大学卒業まで就職が決まらず、未就職のまま卒業し、ダラダラと過ごしている同級生もいました。
「仕事が楽しくない!」
「会社なんて大嫌いだ!」
「会社辞めたい!」
「上司がムカつく!」
「金がない!」
「正社員になりたい!」
「就職しとけばよかった!」
仕事帰りに会えば、彼らの大半は1時間に5回くらい、こういうことを言っていました。 しかも、毎回同じ内容でした。昔から仲の良かった友人たちが、日に日にふがいない状態に陥っていくのを見て、「何か力になれないか」と、仕事の後に相談に乗っていたら…
「小島君に聞くと、どんな仕事も面白そうに思えるよ」「君の友達は有望な人材が多いようだね」と、フリーター、企業双方から言ってもらい、「こりゃ、仕事になるかもしれんぞ?」とひらめいたわけです。
そのフリーターですが、大半は「時間的自由」と「束縛の緩さ」を優先して、仕事を辞めています。
あるいは、普通の正社員の道を選びませんでした。「やりたいことがあるから、今は時間が欲しい」「色々考える時間を取りたいから、正社員にはなりたくない」だいたい、フリーターの道は、このような気分から始まっています。「収入の低さ」は織り込み済みですから、やはり時間が欲しかったんでしょう。
しかし、驚いたことに、わずか1~2年で、彼らの目論見は崩れています。どう崩れたかと言えば、「掛け持ち」で正社員以上に長く働き、安い給料でヒイヒイ言っているのです。
なぜ、このような「誤算」が、全員に起きたのでしょうか。
まだ彼らが学生だった頃、彼らは「フリーター」という人々を見て、「ヒマそう」と思っていました。会えばいつも忙しそうで、残業や付き合いに忙殺されている先輩と比べて、「フリーターは自由そうだなぁ…」と見えたわけです。
だから、彼らもきつそうな正社員より、フリーターの道を選びました。しかし、それは事実を無視した「勝手な願望」に過ぎませんでした。
フリーターがヒマに見えるのは、ただ単に「お金がない」からです。だから、家でゲームでもするか、安いカラオケで数時間歌いまくるか、ファミレスでしゃべりまくるか、そのような時間消費しかできないのです。
しかし、忙しい人の後にフリーターを見れば、時間だけは「豊か」だと錯覚してしまうでしょう。確かに、時間は有り余っているように見えますが、ただ余っているだけで、生産的に埋めているわけではありません。
それでも、フリーターのこの「仮のゆとり」に憧れた若者たちが、続々と「貧困の玄関」をくぐっていきます。今や、その数200万人。
福岡市、春日市、大野城市、筑紫野市、太宰府市全てを合わせた人口が、全部「フリーター」だったと考えてみて下さい。いかに巨大な層であるか、イメージしやすいはずです。
「入るは易く、出るは難し」の、まるでギャンブルのような世界に足を踏み入れた彼らは、徹底的に酷使されます。
当初、「責任の軽さ」は「束縛の少なさ」を意味し、魅力の一つにさえ映りました。指示・命令されるのが嫌いな彼らは、時給労働で気楽に生活できるフリーターに、自由すら感じていたのです。
でも、そんな安易な状態は、長くは続きません。アルバイトなら、自分より若い大学生や高校生が続々と入ってきます。
学生は、入試や就職活動、留学などで、長期休暇を取ったり、あるいは退学したりします。でも、フリーターだけはずっといます。バイト学生が辞めても、います。高校生が入ってきても、います。
自分より若い人たちが、人生の予定に合わせて勤務時間や所属を変更するのにも拘らず、自分だけは、いつも「バイト一本」の生活。そしていつしか年を重ね、気付いたら25歳になっていました。この年齢をもって、フリーターは「定年」を迎えます。
どういうことかと言えば、店長からは「おまえの代わりはいくらでもいる」と言われ、親からは「いい加減にして」、周囲からは「まだバイト?」と言われ始めるのです。
数年前は、「周囲なんて気にしない」と豪語していたフリーターは、明らかに周囲の視線が冷たくなってきたのを感じ、自分が貯金も未来の予定もなく、期待も尊敬もされていない事実を、受け入れ始めるわけです。
「責任の軽さ」とは、「軽視されている度合い」でもあったということに、今さら気付いたわけです。そのうち、いかにもおつむの弱そうな女子大生にまで、「理想のカレシィ~?ってかさぁ、とりあえず、フリーターだけはカンベンしてほしいよね~」などと言われるのを聞いて、片身の狭さを感じるようになります。
傷付いたプライドを埋めるため、とりあえずは外見だけでも立派にしようと思った彼らは、借金を重ね、服や車になけなしの金を注ぎ込みます。
買い物をしている時だけは、「お客様」という名の王様になれるわけですから、彼らの浪費癖はエスカレートするばかり。フリーターにとって、滅多に行けない買い物ほど、ストレスを解消してくれる手段はありません。
しかし、楽に楽しめるものほど、しっぺ返しは辛いもの。いよいよ支払いが苦しくなった彼らは、一番優先していた「時間的余裕」をやむなく放棄し、「掛け持ち生活」に浸り、「自分の人生って、何なんだ」と、夜中に一人、悩むようになるわけです。
憧れていた「時間の多さ」も、義務や責任が伴わない状態では、単なる退屈の原因となっただけで、いくら時間を使っても、夢などは一向に見つかりませんでした。信じていた仲間は、一人去り、また一人去り、自分だけが残されて、若き日の「気軽な選択」の恐ろしさを実感した彼らは、履歴書を送るも、「フリーターお断り」と、書類すら受け付けてもらえません。
当然です。バイトを何年続けても、何の経歴にもなりません。野球のプロテストに、「ファミスタ(往年の野球ゲーム)なら負けません!」と書くようなものです。
義務の伴わない生活を送っている人間を、半人前と言います。半人前の人間には責任などありませんから、当然評価も低く、転職や再就職では苦労の連続です。
フリーターの90%は、なって3年以内に、皆こういうパターンでもがき苦しむようになります。
そして、わが社に相談に来るわけです。随分多くのフリーターを見てきて感じるのは、とにかく説明が下手なこと。
対立や妨害のない人間関係だけを選んで生活してきたのですから、日本語が話せないのも当然ですが、言語能力の低さで蒙っている損失を知ると、かわいそうに思えてきます。
でも、性格はたいていが「お人好し」です。別に、性根の悪い若者などいません。ただ、ちょっと抜けていて、要領が悪くて、悪習慣を断ち切る意志力が、少し弱いだけです。
ほとんどは、「いつの間に、自分はこうなってしまったんだ?」と反省し、後悔しています。ここ2~3年は、なぜかFUNの学生さんからもフリーターを紹介され、数人会いましたが、フリーターが特別劣っているという印象は、特にありません。
彼らの多くは、「会社」は嫌いでも、「仕事」は好きです。熱中できる仕事があるのなら、最低レベルからでもいいから、正社員として挑戦したい。そういう願いを持っています。
僕の仕事は、こういう若者の言語を「社長語」に翻訳し、持続的な通訳を行うことですが、本当に根気が要る仕事です。で、吸い取られるエネルギーが多すぎるために、最近は休業しているわけです。
それにしても、フリーターと正社員の、何が一番違うのか。答えは多数あるでしょうが、僕は「集中力」だと感じています。この集中力がないために、いつも刹那的な楽しさばかりを求め、上の段階の刺激や感動に到達できないのです。
カラオケやボーリング、ゲームが楽しいのは、それが「未経験」か「久しぶり」である時だけです。だからこそ、「アミューズメント」と呼んで、スポーツや他の趣味と区別しているわけです。
大学生の皆さんも、試験が終わった後などはカラオケにでも行きたくなるでしょうが、3日も行くことは不可能でしょう。インターネットがいくら楽しいと言っても、1日もネットサーフィンをしていたら、大概のサイトには飽きてしまって、体でも動かしたくなるでしょう。
フリーターの多くは、これらのアミューズメントを取り替えながら、適度に「久しぶり」の状態でローテーション化し、日々を過ごしています。いずれ生きがいがなくなり、退屈になって当然です。
こういうフリーターに、僕は様々な能力の定義を説明し、「すでに、君の中にある」ということを実践をもって知らせているわけですが、「集中」とは、「持続的な決断」だと説明しています。
始めて1分で襲い掛かる誘惑を払いのけ、「自分がやるべきこと」を思い出して、作業に戻る。またしばらくして襲い掛かる誘惑を押しのけ、「いいや、今は○○の時間だ!」と続ける。こういうプロセスを続けると、「ありきたり」と決め付けていたことから、今まで得られなかったような面白さを味わえるようになります。
フリーターはただ、「背中を少し押してあげる人」がいればよく、僕はその役割を引き受けているけです。
コツコツと会計や業界の勉強を続け、1ヶ月くらいして、「小島さん、会社の仕組みって、面白いですね」と言う時の彼らの顔は、まるで少年のようです。
ふてくされて、強がっていた横着な若者とは、全く別人のような表情です。このように、集中は若者を変えます。
こうして再度、「社会人」としての心構えが生まれた若者が、再起の始まりから無視されるような社会は、やはり寂しいと思ったので、僕は代理人となって、売り込み代行をやっています。
ただ、僕一人では足りないくらい、フリーターはビッグマーケットになりました。皆さんの周りにフリーターがいたら、ぜひ「信じて背中を押してあげる人」になってあげて下さいね。集中を応援しさえすれば、友達はまた、にっこり笑ってくれることでしょう。
■「新卒無業」(大久保幸夫/リクルートワークス研究所)
フリーターの実態を解明した、5年前の力作です。「フリーターは善か悪か」のような、単純な二元論で語られがちの若年者の雇用問題について、正確な事実の裏づけや、具体的な解決策を知るには、適切な本といえるでしょう。
「営業」よりも「企画」がカッコいいと思っていた京都大学の学生たちに、営業の魅力を説明したら、途端に「営業がやりたいです」と言い始め、「この程度の職業教育でいいのだろうか」と苦笑する場面などもあります。「フリーター製造装置」となっている大学の「就職課」への具体的な提言もあり、人材関連業界や、「人と仕事」の問題を考えたい方には、お奨めの一冊です。
■「独立しようと思った時、壁はなかったのか?」(西南3年Nさん)
壁…って、どんな壁でしょう。僕が独立する時には、追い風しかありませんでした。そのような準備を十二分に整えて独立を語り、実行したので、始まりはスムーズでした。
もちろん、創業数ヶ月は、人間関係や資金繰りで大変苦労し、何度も屈辱や見込み違いの苦労を味わいましたが、何をどの程度やれば安定するかは分かっていたので、取り乱すこともなく、軌道に乗せることができました。
環境的に言っても、母は「公務員だけには絶対ならないで」という教育だったし、弟も社長で、独立するのは当たり前の選択肢でした。仮に反対を受けるなら、それは「君にはムリだ」と思われているからです。僕にもそういう声はありました。
だから、独立前に「できる」という根拠や実績を示すことには、それなりの努力をしました。そして、「君ならできる」、「君なら何でもやれそうだ」と言ってもらえるようになってから、満を持して独立しました。決意の甘さも味わいましたが、差し引き、プラスの方が圧倒的に多かったです。Nさんも、いつかは独立の道を目指してみては?無料でコンサルティングしますよ。