■「内定への一言」バックナンバー編


「争いは醜い。しかし、プライドを捨てた人間はもっと醜い



今日は面接塾の補習ということで、西南、女子大、福大、久留米大、筑女の学生さんが集まり、レジュメは一度も開かずに、グループディスカッション対策や、業界研究をしました。「面接塾の補習」という呼びかけは、一体何だったんでしょうねぇ。


OGの牛尾さんは頑張って話してくれたのに、僕は法人営業のことなんかを話してばかりで、むしろ「内定後」の話題中心でした。ベローチェの第一ラウンドが終わると、次は天神のトラベルカフェで、なんと財務諸表の勉強に突入。恋人を口説くようなムードの部屋で、なんと違和感のある会話だったことでしょう。


さて、毎年この時期を迎えると、FUNの発足前夜を思い出します。FUNは当初、「未就職のまま、卒業を迎えようとしている4年生」数人が、大濠公園前のミスド(FUNの地)に集まって勉強会をしていたことがきっかけで、生まれたサークルです。


彼らは焦っていました。


「フリーターになったら、彼女が別れるって言うんです」

「無職で卒業したら、親から出て行けって怒られる」

「父親を悲しませたくないから、とにかく希望を捨てたくない」


そんな切実な思いで、ミスドに集まっていました。僕はそんな学生さんを見捨てておけず、仕事の後にミスドに駆けつけ、「よし!どうせやるなら、先に内定した友達が羨むような内定を決めよう!」と決意し、事実、そうなりました。


学生さんは、リクナビしか情報源がないと思っていますが、法人営業で鍛えてきた僕は、いくつものリストを持っていたため、いくつかをピックアップして、面接対策を練りました。ついでに、簿記や経営の勉強もしました。


みんなが、「こんな勉強を、1年か2年の頃にできていればと言っていたのを見て、安田君が明くる4月から単身、挑戦し、創設したのがFUNです。 僕も当時は、創業の最大の苦難をようやく脱したところで、やや疲れ気味だったのですが、それでも7年ぶりに会う学生さんを見て、「なんと自信がないのか」と驚きました。これは、ひと肌脱がなければ


僕にとって、彼らに内定先がないとか、就活でうまくいかなかったとか、志望業界が決まっていないとか、そういうことはどうでもいいことでした。大事なのは「やる気があるかどうか」だけ。そう思い、学生さんたちに「悔しいか?」と聞きました。


初めは、うつむいていました。しかし何度か話すうちに、ようやく本心を語ってくれるようになりました。「絶対に周囲を見返してやりたい」、「彼女の信頼を取り戻したい」、「このまま卒業するなんて、屈辱的だ」、「働きたいという気持ちは、誰にも負けるとは思わない」。それでこそ、若者です。後は簡単なことでした。


さて、あれから3年が過ぎた今、面接塾にも数人の4年生が訪れています。正確には、もう卒業した人もいるようです。しかし、学年など気にしなくていいですよ。内定して腐るような人間に比べれば、プライドを捨てず、希望をつなぎ、一日一日に未来への足跡を残そうと挑戦している皆さんの方が、よっぽど立派です。


限られた採用枠をめぐって競ったり、希少性のある資源をめぐって争うのを「醜い」と言う人がいます。争いそのものを嫌悪し、「平和」が一番だと、現実を捨象して叫ぶ人間もいます。しかし、きれい事を言って、目の前の人を助けない、プライドを捨てた人間が、世の中で一番醜いもの。


ゲーテの言葉に、


「財産を失ったことは、少し失っただけだ。また築けばよい。

家を失ったことは、多く失ったことだ。また建てればよい。

勇気を失ったことは、全てを失ったことだ。生きる意味はない」


という一言があります(「ゲーテ格言集」高橋義孝・新潮文庫)。


社運を左右する一大事業を決意した日清食品の英雄・安藤百福さんは、戦争で全てを失いました。役員、社員、家族、取引先全ての人が悲しみに暮れていた時、百福さんだけは


「未来以外、失っちゃったね」と笑い、「ここから我々の挑戦が始まるのだ!」と社員を叱咤激励しました。


終戦の日には、同じような光景があちこちで繰り広げられました。電通中興の祖・吉田秀雄さんは、「さぁ、仕事だ仕事!今日から新生日本のための仕事が始まるのだ!」と叫び、出光興産の創業者・出光佐三さんは、「ここより、わが社の事業が始まるのだ。祖国再建のため、全員で力を合わせて難局を乗り越えよう!」と宣言しています(「永遠の日本」出光佐三・平凡社」)。


あなたが「今、どのような人間であるか」を見て付き合い方を決める人は、いずれ友達ではなくなるでしょう。所詮、今のヒマを潰し合うだけの「損友」です。


反面、あなたが「どのような人間になりたいか」を見て付き合い方を決める人こそ、「益友」です。トム・ソーヤー物語を書いたマーク・トウェインも、「友とは、全てを知った後でも、なお長所を愛してくれる人間のことだ」と言っています。


苦境でもプライドを失わない姿、遅れを挽回して一気に攻勢に転じようとする姿勢、自らの不遇を気にせず友達を励ます心意気友の信頼をつなぎ止める財産は、その気になれば、いくらでも見つかります。


春を迎えてなお、メルマガの継続配信を求めるメールを、数件、立て続けに頂きました。僕も、そのような方々に必要としてもらえる情報をお届けできているのが、幸せです。


選考に挑戦し続ける4年生の皆さん、「艱難汝を玉にする」の言葉通り、逆境で精神を磨き、強く明るく挑戦していきましょうね。