■「内定への一言」バックナンバー編
「わが国最大の財産は、航空産業やハイテク技術などではなく、
若者の想像力である」
(ロナルド・レーガン)
喜劇俳優から大統領に転じ、ハイエクの経済理論を取り入れた「レーガノミックス」でアメリカ経済を再生させ、共産主義との戦いに勝利した大統領…といえば、故・レーガン元大統領です。
大規模な減税と産業再生政策を大胆に実行し、今に尾を引く財政赤字・貿易赤字の「双子の赤字」を築いた点では、対立する民主党から「映画と政治を混同するな」と批判されたものです。
しかし、マイクロソフトやアップル、インテル、サン、オラクルなど、その分野では世界を制覇する企業の母体が生まれたのは、皆、レーガン政権の時代でした。
失業に苦しみ、犯罪が増加し、オカルトが蔓延し、老人が疲れ、若者が希望を失っていたアメリカは、人を勇気付けることには天才的な才能を持っていた大統領の出現によって、やる気を取り戻しました。
そのレーガンさんの言葉で、FUNでは3年前からよく、就活前に紹介しているのが、今日の「わが国最大の財産は、航空産業やハイテク技術などではなく、若者の想像力である」という一言です。
アメリカと言えば、経済、政治、軍事、流行の最先端。歴史が短いために挑戦的で、ややおせっかいですが、正しいと信じたことは子供のような純粋さで実行する、「ベンチャー企業」のようなお国柄ですよね。
今、地球上の人々が使っている家電製品や自動車、コンピュータなどは、そのほとんどがアメリカ人の挑戦から生まれたもので、「20世紀はアメリカが世界を食わせた」という評価も、確かにそうだと言えるものです。
そのアメリカの産業や映画、学校、流行を見て、「アメリカの映画が好きだ」とか、「アメリカの会社がすごい」、「アメリカの大学に留学したい」と言う人は無数にいます。
自動車産業やIT産業、航空産業、金融業を見て、「これこそアメリカ繁栄の象徴」と呼ぶ学者もいます。表面的な事象は分かりやすく、アメリカの象徴を求めようと思えば、誰もがどこかにその根拠を特定できるでしょう。
アメリカが不況に苦しんでいた80年代、製造業を中心とする重厚長大産業こそは、「絶対に潰してはならない、アメリカ経済の核」とまで言われていました。それを大胆に再編し、新たな産業を創出して、3000万人の雇用を生み出したのが、レーガン政権です。
大統領は、「産業も、大企業も、映画も、兵器も、ファッションも音楽も大切だ。しかし、それを生み出した若者の想像力は、もっと大切だ」と言い切り、青年が夢を描けなくなることこそ、国家最大の危機だと見抜いたわけです。
若者が将来に期待しなくなれば、「今さえ良ければ」、「自分さえ良ければ」と狭い世界に引きこもる「心の老人」になってしまいます。若者が自由に将来を描き、アメリカの将来のために果敢に挑戦すれば、アメリカはまた、かつての繁栄を取り戻すことができます。
だから、「国民よ、表面的な損失を恐れるよりも、本質的な衰退を恐れよ」という考えで、若者を力強く鼓舞したのでした。
このエピソードを就活に当てはめると、どうなるでしょうか?
読者の皆さんは、「志望動機」や「自己PR」の話題を考える時、商品や人事制度、広告、研修システム、本社所在地、福利厚生などの「表面的な要素」に目を奪われていませんか?
あるいは、「資本金」や「売上高」、「知名度」、「業界順位」などの可変的要素ばかり見て、もっと言えば他人の目ばかり気にして、虚栄心を満たすための「就活ごっこ」をやってはいませんか?
そのような、「ネットや説明会で誰もが入手できる情報」が、果たして本質的な志望動機や自己PRを導くのでしょうか。
「自動車会社は、車を作っている会社」
「商社は、貿易をしている会社」
「IT業界は、パソコンとネットで勝負する世界」
…などと、可視的な「モノ」ばかり見る思考様式は「唯物論思考」と言って、既に数十年前に破綻した社会主義の根本思想です。
マルクス主義は、今では地位が安定した国公立大の経済学の先生が、表面的には「厚生経済学」とか「計量経済学」といったイマドキの名称を付けて教えていますが、実質は「経済考古学」で、この労働思想が若者の職業観に与えた影響は、絶大と言わねばなりません。
もちろん、「悪い影響」です。
マルクス主義に洗脳された人は、出た学校や世代に関係なく、「仕事はきつい」、「農業は重労働」、「給料は会社が上げてくれるもの」、「努力の質より量が大事」とか言います。
しかし、飛行機も自動車も、コンピュータも映画もファッションも、元々は「人間の想像力」が生み出したもの。偉大な先駆者が頭の中に「完成形」を思い描いたからこそ、生まれた「モノ」です。
そして、いつも「モノ」に先立って生まれ、モノよりずっと大切で、それがなければモノも衰退するという要素は「コト」です。
「空を飛べたら、どれだけ多くの人の時間が節約されるだろうか」
「自動車があれば、家で寝ているおばあちゃんも旅行が楽しめる」
「コンピュータがあれば、世界中の人が多くの選択肢を持てる」
…といった、「結果を先に設定する逆算思考」が「コト」重視の考え方です。モノは「コト実現の手段」に過ぎません。モノに共感されても、あんまり嬉しくありません。そんな考え方で、志望動機が見つかるはずがないのです。表面を見たって、志望動機に似たものができるだけ。
「アクセルとブレーキを同時に踏んだ車」がどうなるかを考えてみれば、「やる気はあるのに、進まない…」と志望動機に悩む学生の姿が分かります。学生の能力が劣っているのではなく、やろうとしていることと、やっている方法がずれているだけだったんですね。
だから皆さんも「コト」に着目・共感し、説明会や面接では、「御社の最大の魅力(財産)は、商品や研修制度、売上高、ブランドではなく、社長と社員の皆様の想像力です」といったアプローチを試みてはどうでしょうか?
例えば、「ミッキーマウス(モノ)が大好きです!でも、そんなにかわいいキャラクターを生み出して、世界中の子供たちに夢を届けようと一生を捧げたウォルトの哲学と御社の情熱(コト)が、もっと好きです!」というふうに。
※間違っても、○本引越センターのように、「ミッキーマウスが好きです。でも、ドナルドダックの方がも~っと好きです」と言わないよう、注意しましょうね。あれは子供が言うからかわいいんです。
社長は泣いて喜びます。
僕もミニ社長ですが、そういう志望動機を持って訪れた若者なら、自分の報酬を削ってでも採用します。そういうアプローチで心が動かないような会社なら、皆さんの方から「不採用」にしてやればいいでしょう。
若者の夢やチャレンジ精神を評価しない会社は、放っておいても時代が潰してくれます。だから、経験不足で未熟な若者だからと、企業の言うがままにする必要はありません。学生が本気になったらいかにすごいか、僕は3年間でまざまざと見せ付けられ、心から感動しました。
若者の吸収力は本当に偉大です。そして、吸収力が強いために、ネガティブな環境や進路を選択したら、「腐るスピード」も恐ろしく速いと感じます。だから、「自分は何かを成し遂げる人間だ!」というプライドを持ちましょう。
「え~、そんな言われたって、プライドになるようなモノなんてないし~」と言わないように。プライドを持てば、そういう資質が生まれます。待って出てこない財産は、自分から打って出て掴み取るのみ。
皆さんの長所もまた、資格や能力、経験や知識ではなく、「想像力」ですよね。「できる」と思ったから挑戦し、それが身に付いたんでしょ?
「君の資格がすごい」
「君の知識は多い」
「君の学歴に惚れた」
と言われて嬉しいですか?あまり嬉しくないでしょう。こういうのを「採用動機」にされても、なかなか歓迎できませんよね。なぜ、そうと分かって、それと同じことを企業に対してやるのでしょうか。
きっと、「資格も知識も立派だ。しかし、未来を見据えて頑張ってきた君の情熱やビジョンこそ素晴らしい!」と評価された方が、もっと嬉しいはずです。だったら同じように、相手が喜ぶことを認め、共感し、共有してみませんか?