■「内定への一言」バックナンバー編


「チャンスは、情報ではなく考え方が作る



「流れ星を見て、願い事を言ったら叶う」と、子供の頃に誰でも聞きます。本当にそうなったらいいなと、僕も小さい頃に空を眺めては、流れ星を探してみたことがあります。


しかし、そう簡単にお目にかかれるものでもなく、僕が流れ星だと思ったものは大抵、夜に飛ぶ飛行機か、あるいはパチンコ屋のサーチライトでした。天文学の知識もなく、星の場所も名前も知らない僕は、流れ星っぽいものを見たことは一度か二度ありますが、それが流れ星だったのかは分かりません。


しかし、夢はどんどん叶いました。流れ星は一~二秒くらいしか見えないと言います。しかし僕は、その短い時間でも、即座に夢が言えたからです。



僕の流れ星はどこに現れたかというと、友達との会話や記者時代の社長さんのお話、創業の苦難、街角の散歩、旅行、トイレの中、風呂などです。こんなところに「きらっ」、「ちらっ」と、いくつもの流れ星がありました。


いつも、どんな時間も、どんな場所でも、僕は自分の夢を念じ、迷い、願い、先を考えています。一緒に散歩したことがある方は知っていると思いますが、例えば大名の町を歩いていて、美容室の看板を見れば何か言い、証券会社の新商品の広告を見れば何か言い、喫茶店で座れば何か言い、ゾロゾロ歩くおじさんを見れば何か言いという感じです。あれは全て、僕の流れ星です。



「おじさん」が流れ星だなんて、ロマンチックな話を俗っぽくしないでくれ、といわれるかもしれませんが、僕は空の星だけが流れ星ではなく、夢を叶えてくれるもの、あるいはそのための発想や気付きをくれるのが流れ星だと思います。


だから、何かを考えながら歩けば、普通の町も流れ星でいっぱい、というわけです。いつも考え続けている人、何かのテーマを持って現実を見る人だけが、即座に情報やチャンスに反応できる、ということですね。



去年倒産してしまいましたが、「九州フキ」という会社がありました。「カギの救急車」で、カギのフランチャイズでは全国ナンバーワンになった福岡の会社です。


創業者の上野社長は、三十代までは普通のサラリーマンだったそうですが、お昼ご飯の時でも、友達に「将来は何か大きな事業をしたいものだなぁ」とつぶやくような方だったそうです。つぶやきはその人の考え方を知るのに良い手段ですが、夢を語る社会人だったようですね。


そんな、将来のビッグな成功を描く上野社長は、ある日、「新聞」という流れ星に出会いました。ある日手にした日経新聞の一面に、「住宅着工件数、自動車登録台数、ともに過去最高」という見出しが出ていたのです。


上野社長はそれを見た瞬間、「これだ!」と確信し、飛び上がらんばかりに喜びました。しかし横で見ていた友達は、その記事を見ても、なぜそんなに喜び、興奮しているか、その理由が分かりません。



住宅着工件数が過去最高ということは、当たり前ですが、家を建てる人が増えたということです。 自動車登録台数が過去最高ということは、当たり前ですが、車を持つ人が増えたということです。


つまり、上野社長は「家と車と言えばカギだぁ~っ!」と、天下を取ったようなひらめきを得たのです。別に、「これからはカギ業界がチャンスだろう」とか、「カギを落とす人も増えるものと思われる」と、日経が親切にコメントしていたわけでもありません。全国二○○~三○○万の読者が手にした、その日の日本経済新聞の一面の見出しは、誰にでも等しく、同じ見出しでした。


しかし、その情報を「流れ星」にしたのは、九州の一サラリーマンだけでした。




さて、内定やトップ営業成績、独立、貯金など、世の中で「夢」や「目標」が尊重されるのは、望み通りに達成する人が少ないからですが、いざ達成してみた方からすると、そのプロセスはなかなか言葉では説明できないものです。心的変化を説明しようにも、「粘ったから」とか「考え続けたから」としか言いようがない場合も多く、相手と共有できる客観情報にするために、時々「日経を読んだよ」、「毎日電話したよ」、「○○っていう本を読んだよ」などと、具体的な手段を教えたりします。


僕もよくアイデアが生まれる人間で、いつも新しい事業案を作っては、将来のある時期に位置付けています。そんな僕も、「小島さんは、どうやってアイデアが生まれるんですか」と聞かれたことがあります。僕は「そやねぇ風呂に入ってる時に、よくひらめくよ」と何気なく言ったら、なんと!



その友達は、「風呂に入る時間を長くしたけど、全然生まれない」と言うではありませんか。もし、「トイレに入ってる時に、よくアイデアが生まれるよ」と言っていたら、彼はトイレにひきこもって、それこそ言い難い修行の日々を送ったのかもしれません。しかし、トイレで出るのは、アイデアではなく、別のものでしょう。



学生も就職に焦ると、つい受かった先輩が使っていたのと同じ参考書や、書いたのと同じ言葉や、言ったのと同じフレーズを就活で使おうとしますが、これは「トイレにこもる」と同じです。


なぜ、「その時期に筆記対策を始めたか」とか、「その言葉を選んだのか」とか、「そう言って自分を印象付けたのか」と聞かないのでしょうか。


軽薄、表面的、一時的な問いや行動は、自分で自分の首に輪をかけて、足場を外そうとするも同然の愚かな行為です。自分で星を見つける眼力を養おうとしない人間は、人の星を借り、乗り損ねるだけです。



なんとかナビを見ても、いい情報があるかは分かりません。いい情報を見つける人もいるでしょう。情報の価値は、情報の出し手ではなく、受け手が決めるものです。 「いい情報があったら成功する」ではなく、「成功したいと思ったら、いい情報に出会う」ということですね。


今日も頑張って、みんなで楽しく流れ星を探しましょう。その気になれば、町も家も学校も、キレイな流れ星で溢れていますよ。自分の心が透き通り、将来を見据える強い集中力があれば、その星はきっと捉えられます。