■「内定への一言」バックナンバー編
「百言は一動に如かず」
「百聞は一見に如かず」は、有名すぎるくらい有名なことわざで、それだけ誰もが「その通り」と思う真実を含んでいるのでしょう。
その有名すぎる先人の知恵を活用して、経営の世界で「百言は一動に如かず」という言葉を聞いたことがあります。経営だけでなく、普段の人間関係でも、学校でも家でも通じるナイスな「本歌取り」ですね。
人に何かを確認して、「分かってる」と無愛想に答えられた時は、腹が立ちます。反面、人に何かを確認され、「分かってる」と答えている自分を発見すると、情けなくなるものです。
それは、この短い一言が人間関係を傷つけ、信頼失墜の元となることを、誰もが知っているから。
会社なら、十回言えば窓際族でしょう。学校なら、二十回言えば「あいつは何を言ってもダメだ」と烙印を押されるでしょう。家庭でも、お父さんに何を言っても「分かってる」しか答えが返ってこないと、奥さんが「あなたって、いつもそうなんだから」と愛想を尽かすのは、ドラマでもよく使われるほどありふれた風景です。
だからこそ、有言不言は別として、「実践者」が不動の尊敬と信頼を勝ち取ることになります。色々理由はあるかもしれませんが、それは誰でも同じこと。
信頼を得たいなら、ゴチャゴチャ言わずに行動で示せばいいだけです。動きたい人は、動いている人を見ています。動くことで、人は最良の仲間を集めることができます。停滞していれば、停滞している人ばかりが集まってきます。
あなたの周りには、どんな人が集まっていますか?集まった人があなた自身の人格を反映しています。
行動は相手から質問を奪います。スケールの小さい人間と付き合うと、自分までスケールが小さくなってしまい、余計なことまで不安になってきます。
「一緒にいて安心するから」と、一緒にいて危機感も焦りも感じないような人間関係の中で過ごしていると、見聞きすること、感じること、全てが「不安材料」になります。それは、自分のスケールが環境によって小さくなってしまった、ということです。
僕から見ると、大抵の学生は優秀です。ちょっと頑張ってみれば、社会人を追い抜けるような立派な学生は、今の時代にもたくさんいます。僕の世代はちょうど十年前くらいに学生だった層ですが、僕が一年半で大学を中退し、当時の学生事情をよく知らないことを差し引いても、今の学生の方が随分将来を真剣に考え、よく考えて専攻を選び、まじめにコツコツ勉強しているなぁ、と感じます。
僕の時代は、今よりもっと景気が厳しかった時期ですが、勉強といえば「単位が取れたらいい」、授業といえば「最低限出席すればOK」、日常生活といえば、飲める酒の量と交際した異性の数を自慢するといった、「サルの惑星」状態でした。
そのようなサルたちが今どうなっているかは、ハローワークに行けば分かります。どんなに頭を下げても、「最低賃金でも雇いたくない人間」になっています。
そんな時代の学生に比べれば、今の皆さんの世代は、ちょっと打たれ弱くて漢字が書けず、メールで要件を済ませる横着さを取り除けば、ずっとずっと優秀で有望です。
しかし、口をついて出てくる不安はどうでしょう。「就職できるか不安だ」、「仕事が見つかるのか」、「働けるのか」と、見事に「できない奴」の言葉を復唱し、余計な不安に染まっているのです…。
僕は最初、随分驚いて、「君たちは、そんなどうでもいいことを心配するほど、無能じゃない!」と心から感じました。
しかし大学とは、見た目とは裏腹に、閉鎖的で狭い世界です。長くその「ぬるま湯」にひたっているうちに、ネガティブ人間の不安が本人にも伝染してしまったのかと思うと、本当に惜しく思います。
自信を得たければ、心から同意する行動を、どんなことでもいいから、やってみましょう。ゴミ捨てでも、部屋の掃除でも、朝のウォーキングでも、決めてやることです。
やってみたら、やり続けましょう。やり続けたら、基準を上げましょう。そういう経験を持てば、学生の方が逆に、企業を試すことができます。
散発的、一時的、表面的な行動をあれこれやってみて履歴書を飾るより、何があってもやめなかった一つの行動で、自分を語るべきです。それに文句をつけてくる人間は、嫉妬しているか、「認めたくない」とヒステリーに陥っているだけ。そんな会社に、有望な学生である皆さんの時間を捧げる必要は、全くありません。
若者は最初は誰でも未熟なのですから、その可能性に期待できない会社、長所を活用できない会社は、放っておいても勝手に倒産してくれます。それより世の中には、もっと若者を待望し、学生の素質を認め、皆さんに「活躍してほしい」と舞台を用意している会社が、たくさんあります。
「百言は一動に如かず」の意味を実感するのに必要な時間は、まだまだ十分に残されていますよ。僕はそれがよく分かったから、今でも微力ながら、学生を応援しています。