◆「内定への一言」バックナンバー編
「創業の思いこそ、最高の志望動機だ」
昨日、今日とたくさんのチョコレートを下さった皆様、本当にありがとうございました。かわいい袋や箱に入ったもの、手作りのもの、とっておきのもの…本当に感激しました。
中には、「たけの○の里」がびっしり敷き詰められたユニークなものもあり、エントリーシート並みに気持ちが伝わってきましたよ。
3年前、「内定の御礼はたけのこの里で!」と気軽に宣言してからというもの、毎年、冬になるとうちの冷蔵庫の中はすごいことになっています。毎日がバレンタインデーの僕も、昨日は特に幸せを感じた一日でした。
そういう素敵な学生さんが目下悩んでいることといえば、「志望動機」のようです。
ということで、今日もまた、志望動機の役立つ着眼点を一つご紹介することにします。
チョコレートのお礼、というわけでもありませんが…。
今まで色々と志望動機の着眼点を紹介し、そのいくつかは非常に気に入ってもらったものもあるようですが、今日は視点そのものを変え、ちょっと「社長」になってみましょう。
社長といっても、実は4種類あります。
①創業社長…自分で資金とアイデアを出して事業を作ったオーナー。
②サラリーマン社長…新卒か転職で入社し、昇進してなった社長。
③後継ぎ社長…先代か先々代の事業を継いだ社長。
④雇われ社長…子会社設立に際して経営を任された社長。
どれもそれなりの難しさややりがい、役割があって、一概にどの社長が一番良いかは言えませんが、最もお金持ちで影響力が強く、個性が良くも悪くも強いのは、なんといっても①の「創業社長」です。
いつかも紹介しましたが、あるコンサルタントの占いで、創業社長は、
①独裁者
②教育者
③哲学者
④宗教家
⑤学者
⑥技術者
⑦商売人
⑧手品師
の素養を併せ持ち、唯一「資格」が不要な専門職で、「未来」を創造していくのが仕事です。
「これから社会をこうしたい!」という思いを法律や税制で規制することはできないので、社長の仕事だけは資格が作れません。
そのアイデアが運用の際に妥当かどうかを判断するため、世の中には弁護士や会計士、税理士がいて、社長さんの「衛星」のように活躍しています。
ちなみに、僕もかなり前にこの「社長占い」をしてもらったことがありますが、50項目近くのアンケートに答えた結果、僕に特に強い素質は…
②教育者、④宗教家、⑤学者の3つでした。
「面倒見が良く、人を見捨てきれず、カリスマ的な教祖っぽさがあって、何でも地道に自分で調べて実証していく粘り強い探究心がある」という占い結果でした。
社長に必要な社交センス、独裁的指導力、社員をほれ込ませる専門技術などはあまりなく、どちらかというと地道さや継続力で人を育てながらゆっくりと事業を成長させていくのが合っている、とのことでした。
当たっているのやら、当たっていないのやら…。
さて、世の中には大小あわせ、社長さんが400万人ほどいます。わが国の労働人口は約6,500万人ですから、社会人のうち、およそ6%は社長さんということになります。
そのうち、20代の社長は4%。20代で創業して5年続くのは5%。
ということで、僕のような人間の存在する確率は、「1万人に12人」、つまり「約1,000人中1人」となります。なかなかの希少生物です。こりゃ、あまり友達ができないわけです…。
この「社長」になるには、どうしたらいいんでしょう?
簡単です。以下の手続を踏めば、誰でも社長になることができます。なることは通過点でしかありませんが、ならなければできないこともたくさんあります。
なるかならないかは別として、社長になるには「なろう」という思いこそ原点であるわけですから、そのプロセスを知ることは、最も深い志望動機を探ることにもなります。
①事業内容と役員構成をある程度決定し、法務局の「法人設立登記」のコーナーに行って、「目的判定票」をもらう。
②目的判定票にある程度の「公共性、事業目的、公序良俗、事業内容」を記載して、法務局に提出する。
③法務局の判定で「可」をもらったら、次は「定款(会社の憲法と呼ばれる書類)」を作成し、決算期や出資比率、監査形式、業務内容などを詳細に決め、公証役場に提出する。
④定款の認証が下りたら、印鑑を作成して印紙代(94,500円)を支払い、役員の印鑑証明を添えて、銀行に資本金を預け、口座を開設する。
⑤資本金を一週間程度預金した後、銀行発行の「払込資本金保管証明書」を受け取り、定款、印鑑証明を添えた上、「法人設立登記申請書」に必要事項を記入して、再度法務局に提出する(印紙代63,000円)。
⑥登記申請が終了すれば、あなたは晴れて「社長(代表取締役)」に。会社の「身分証明書」である「登記簿謄本」を税務署、職業安定書、役所に提出し、納税事業所・雇用事業所の申請を行う。
これで手続一切終了!経費はだいたい20万円前後です。資本金は想定する事業規模によって様々ですが、僕の場合は300万円で登記を行いました。
司法書士に任せれば、一ヶ月くらいで、手数料20万円くらいでやってくれますが、僕は節約したかったので、全部自分でやりました。
もし読者の皆さんの中に「会社を作りたい!」という方がおられたら、無料で方法を教えるので、いつでも言って下さいね。
このように、「会社」なる組織は、手続きからも分かるように、何らかの「社会貢献」の目的を持って営利活動を行う集団のことです。
そういう経緯を経て設立し、特に創業者の意向やビジョンに賛同して創業時の資金負担を分担した仲間を「役員(パートナー)」と呼び、まずは役員が必死に働くことで資本金を運用し、事業規模が大きくなれば、晴れて「採用」が行えるようになります。
このように、会社に集まる「役員」や「従業員」は、全て「社長の夢」に参加したいという人のことです。何年たっても、本質的にこの仕組みが変わることはありません。
ということで、会社という組織の最も根本的な存在理由は、「社長の志望動機」、つまり「創業の思い」ということが分かるでしょう。
ここで、再度「志望動機」を考えてみましょう。
会社とは、「社会貢献のための問題解決を通じて自己表現を行う組織」です。
この定義からも分かるように、会社が行う内外の活動全てには、明確に「相手」が存在します。
取引先、提携先、お客様、顧問、競合他社…多くの相手との関係を調整し、経営資源を効率的・効果的に配分して、目指す経営目標をチームで達成する壮大なスポーツが、仕事です。
会社は時代や社会に対して、「より良い問題解決策」を提案し、その採用をもって収益としている組織ですから、創業の思いこそ志望動機であるというのは、ここからも分かるでしょう。
その志望動機はまた、簡単に拒否されることもあります。つまり、「買わない」という意思表示が、会社が食らう「不採用」のサインです。
このように、会社もまた、新卒学生のように、日々「世間様」に商品やサービスを採用してもらうべく、知恵と情熱の限りを尽くしているのです。
つまり、会社の志望動機には、明確に「相手」が設定されています。
では、学生の皆さんの志望動機はどうでしょうか?
もしかして、「社風」や「勤務地」、「福利厚生」、「待遇」といった表面的な要素を「志望動機」にしたりはしていないでしょうか。
そういったものも、確かにある程度気にしてよい要素ですが、しかし、それらはあくまで「主」ではなく「従」に過ぎません。
なぜなら、これらの「条件」には相手がいないからです。
すなわち、「自分が満足すればいい」という範囲内で想定される条件であり、厳密に言えば、仕事の本質とは何ら関係ないからです。つまり、「働きに」ではなく、「就職しに」行っているだけ。
志望動機は、「自分が幸せになりたいか」と「人を幸せにしたいか」で大きく分かれるもので、受からない人ほど自分のことばかり考え、相手の存在を無視した姿勢で書類選考や面接に臨むものです。
「内定したい人」の志望動機は、このように「客」や「社会」を無視した表面的、一時的、散発的なものが多く、とても「一緒に働く」とは思えないような甘いものばかりで、悪いですが、とても「内定」を出すわけにはいきません。
そもそも、就活とは「働くため」にやることであって、内定は働くための条件に過ぎないもの。条件と目標を混同しては、受からなくて当然でしょう。
顔を見ても、とても「これから働く」という表情ではなく、「せめて内定は欲しい」、「受からないと友達に会わせる顔がない」、「とりあえず滑り止め」のような本心が見え見えで、なんだか、バカにされた気分です。
志望動機における「主」とは、あくまで社会貢献のスタイルや事業目標への賛同であるべきでしょう。それを追求する上で、社風や社員の人柄が良ければ、なおやりやすくなる、というだけのことです。
業績、地位、知名度、社風、社員の人柄、仕事の面白さ…
多くの決定要因となるこれらの事実を生み出した根本原因とは、一体何でしょうか。それは当然、「創業の思い」、つまり「会社の原点」です。
どの会社も、原点たる「初心」を描いて働いていれば、必ず業績も上がり、仕事も楽しくなっていきます。強い組織とは、初心の共有が進んでいる組織だからです。
初心には「社会改善への思い」や「お客様への愛情」、「未来への希望」が詰め込まれているわけですから、それを共有できた組織が弱くなるわけがないのです。
ということで、毎年受かりまくる先輩たちがやっているように、皆さんにもぜひ、「創業史」を読むことをオススメします。
志望業界とは関係なくても、一つの会社が熱い思いで生まれ、多くの挫折や失敗、逆境を経て強くなり、幾多の人々の支えと思いを集めて発展していくドラマを心の中にインストールしておけば、会社を見る本質的な視点が育つでしょう。
そしてきっと、「仕事を楽しむとはどういうことか」、「仕事における成功とは何か」、「利益と幸せの両立を図るにはどうすべきか」が分かるはずです。
FUNのホームページの『夢事典』のコーナーでは、特にオススメしたい本を300冊ほど紹介しているので、面白そうなのがあれば、ぜひお近くのブックオフで探してみて下さい。
あるいは、これも毎年教えているように、会社を検索する際に、「社名+創業者」という文字列で検索してみるのもいいですよ。例えば…
「グーグル ラリー・ペイジ」
「松下電器産業 創業」
「本田技研工業 創業者」
などといった検索方法です。
きっと、そこらへんの学生がせっせと入手している、浅くて日持ちの悪い「お知らせ」とは違う、深く本質的で、かつ永続的なビジョンを秘めた「本当の志望動機」の手掛かりが掴めるはずです。
勧めたい本も多数ありますが、毎年学生さんに紹介して喜んでもらえる本を3冊だけご紹介しておきましょう。
■『風雲に乗る』(城山三郎/角川文庫)
■『デルの革命』(マイケル・デル/日経ビジネス人文庫)
■『雄気堂々』(城山三郎/新潮文庫)
です。
「社長の夢が、私の志望動機」。
こんな思いで就活と、それに続く仕事ができれば、それはどれだけ幸せな人生になるでしょう。
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